29.消滅しましたけど何か?
機雷が仕掛けられている可能性がある中、数隻の敵の戦闘艦は元気にこちらへと向かってくる。
そこへフィネークの狙撃が飛んでいき次々に沈めていくのだが、
「1隻完璧に合わせているのがいるな」
「そうですね。すべて途中にある機雷が爆発して船までレーザーが届いていません」
「面倒だな。精鋭だとは思っていたが、そこまでか」
敵の運がいいのか、それとも狙ってやっているのか。
1隻だけ狙撃が全く届かない船がいる。全て射線上にある機雷に阻まれてしまうのだ。俺たちも機雷を放出して敵の攻撃を防ぐことはあるがさすがにここまで大量の機雷をばら撒いておいて1つ1つ攻撃のタイミングに合わせながら移動して防いでいくというのはしたことがない。
というか、俺たちであってもできるかは怪しいな。
「この戦いが終われば訓練内容に組み込んでおくべきか」
「少将?それどんな状況を想定されてるんですか?」
俺としてはありうるかと考えてつぶやいたのだが、部下からはあきれたような目線を向けられてしまった。理解されなくて残念だ。
部下たちはいらないと考えているようだし、一応俺だけで訓練しておくことにするか。
最悪そういう状況になったら俺が運転すればいいわけだし。
「しかし、ここまでの数の機雷を放出していたのか」
「そうですね。飛びながら陰に隠れられる程度には多いということですし、相当な量ですね」
攻撃を防ぐ程度には使えるのだから、その量はかなりのものだろう。さすがに数個だけしかない機雷を使ってあの軌道をしながら攻撃を防ぐということは難しいはずだ。
「ここまでの数があるなら、敵も自爆できると思うのだがな」
「あぁ~。ここまで劣勢ですとそれもできますか……」
機雷を自分たちの船から外へ全て放出。そうなれば相当な爆発が起きて、敵も全滅するだろうがこちら側も大打撃を受けるはずだ。
現在敵の敗北は確実と言ってもいいような状況ではあるし、ここですり減らされるよりも自爆をした方がマシなように思えるが。
「真意が分からんな」
「そうですねえ」
何とも読めない敵だ。
何を考えているのかよく分からない部分も多い。
ただ、
「あっ。少将。今艦隊がいる付近を除いてほとんどの戦線で完全にこちら側が勝利したとのことです。残っていた敵はすべて投降するか逃げたかしたみたいですね」
「ふむ。追撃は?」
「機雷がばらまかれているため不可能と判断したようです」
「なるほど。自爆ではなく逃げるために使ったか」
全速力で逃げる敵と、機雷を警戒しながら進む味方。どちらが早いのかなどあまりにも分かりやすい事だろう。
ただ、こちら側が勝利できたのは良いことだ。
「良いことなのだが…………その逃れた敵がこちらへやってこないという保証はないな?」
「ありませんね」
「逃れた敵の合計はどの程度だ?」
「明確な数は分かっていませんが、報告の件数から考えて100は超えているかと」
「………………」
俺は天を仰ぐ。
それくらい敗走兵、というか敗走艦が出るのは当たり前のことではある。だが、それらが俺たちの方に来ると考えると、良い結果にはならないだろう。どうにかして外から追ってくる敵にも対処しなければならない。
「………………あぁ~一部の敵がもうフィネちゃんのレーダー探知範囲内に入ってきたみたいです」
「早いな。さすがと言うべきか……位置と数を正確に報告しろ」
「はい。だいたいZ座標がー30くらいで………」
部下が敵の内容を報告してきてくれる。
それの内容は、当然ながら良い物ではない。そこそこの数が、色々な方向からやってくる、
敵の方はかなり速度を出しているようで、機雷を警戒しながら進んでいる俺たちに追いつくのは楽だろう。
「………あっ。1隻が近づいてきて、っ!?消滅しました!?」
部下が驚愕する。俺もその内容には驚かされるな。
ステルス機能なのか事故が起きて爆散したのか。理由は分からないが1番近くまで来ていた敵の戦闘艦の反応が消滅してしまったのである。
「わざわざここでステルス機能を使うか?」
「分かりません。前線であまり使う機会がなかったのかもしれませんが、今頃使ってくる理由は本当に謎ですし」
部下も首をかしげる。あまりにもステルス機能を使うには不自然過ぎるのだ。
そういう気持ちを俺たちに植え付けただけで敵としては十分な成果なのかもしれないが、
「あっ。他の船も反応が消滅していきます!?」
「なんだと?何が起きているのかさっぱり分からんな」
俺たちが困惑する中、さらに敵の反応がなくなっていく。正直怖いな。
ステルス機能にしては、あまりにも使う船の数が多い。
どちらかと言えば俺たちの船のレーダーが故障しているのではないかと思うほどだな。
「ん?ちょっと待ってください。もしかしてこの反応…………」
「なんだ?」
「敵艦、機雷の爆発に巻き込まれた恐れがあります」
「「「「………………………………はぁ?」」」」




