28.上手でしたけど何か?
「敵の数半分を切りましt……………あっ!一部反転しました!こちらに来るみたいです!!」
「了解した。しかし、一部だけか?」
「はい。後は散開して味方を包囲するように動いています」
「なるほど。一定数がまとまって迫ってくるなら広がる船にこちらが対応しないと踏んだわけだな。なかなか面倒なことをしてくれる」
敵が怖いのは俺たちの、というかフィネークの狙撃だ。そんな俺たちに固まって迫ってくるやつらがいるならきっと大丈夫だと信じて包囲に動くやつもいるはず。
実際俺たちも迫ってくる集団の対応に当たらなければならないのは間違いなく、
「ふむ。敵の方が上手だったか。油断したな」
「ですね。完全に敵が1つにまとまってくるものだと思いこんでましたから、こうして分かれて行動されると対応に困ります、敵はこっちの動きを読んでたんでしょうか……………」
俺たちは敵の移動速度を制限させて、こちらに逃げてくるように移動する敵を後ろから味方に追撃してもらうつもりだった。
しかし、その味方が包囲されてしまったためあっさりと計画は崩れる。想定よりもこちらへ来る敵が少ないという良い面が存在してはいるのだが、結局囲まれたら終わりな数だからほとんど意味はないな。
「二等兵の狙撃はやってくる敵ができるだけ密集した地点にさせろ」
「先頭の方でなくていいんですか?」
「構わん。どうせ先頭の方は覚悟してる奴だろう」
敵の士気が落ちているとはいえ、全員が及び腰であるというわけではない。精鋭が乗っているのだろうと思われる船もあるのだ。
おそらく先頭を走っているその船は、そういう覚悟の決まりまくったおびえない連中。
そいつらを攻撃したところで、あまり意味はない。
「まずはこちらへ恐怖を憶えているのであろう先頭より少し後ろで固まっている者達を狙う。恐らく先頭の方の船が引っ張っているのだろうから、そいつらの信用を無くすべきだろう」
「ああ。なるほど。先頭の方の精鋭が、自分たちが攻撃は受けるからついて来いとか言ってるっていう想定ですね?」
こうして士気が下がっている中俺たちの側にこれだけの船がまとまって移動して来ているということは、その士気の低さを補える安心材料があるのだと思われる。
ではその安心材料が何かといえば、盾の存在だ。
「自分たちが守ると言えば、ついてくる船も多いだろうな。そして、完全に自分たちは守られる側のつもりでいるのだろう。だからそこをついて攻撃を仕掛ければ、精神が保てなくなる」
「もう追ってきたいと思う船はほとんどいなくなるでしょうね。逆にそうした中で追ってくるのを続けるのが精鋭というわけですか」
「そうだな」
精鋭と言うのは、ただ覚悟が半端ないか技術も伴っているかの2つに分類できる。
その中でここで動く精鋭と言うのは、どちらもあり得るものだった。
しかし、こちらとしては当然後者の方を優先して沈めたい。実力がない連中なら近づかれても最悪どうにかできるからな。
ただし実力があるなら話は別だ。
「すでにマーキングは済ませてあるな?」
「はい。完了しています」
「それならば、その中で1番密集度が高い区域にいる船を狙わせろ」
すでに沈めるべき船には目星をつけていた。
幸いなことに最初の陣形の敵の情報は取れていたから、その中で特に中心部に非常に近い部分の敵を精鋭だろうと予想したのだ。中央で何か大事なものを守るなら、実力と覚悟のあるものが必要だろう。
そして、さらにその予想を裏付けるようにして、
「先頭の船は中央部にいた船で間違いないか」
「そうですね」
俺を狙ってくれと言わんばかりに先頭を飛ぶ戦闘艦が、その中央部にいた船の中の1隻なのだ。
付近にいて同じような役割を果たしていただろう船が、実力に大きな差を抱えているとは思えない。
「狙撃命中しました。敵も半分以上が移動速度を大幅に低下させていて、誰が外側に行くかということでもめているように見えますね」
「ふむ。そこまで移動速度が落ちているなら構わないか。ではあとはマーキングしている船を中心に攻撃していく。既定の距離まで敵が来ない間は密集地点にいない場合でも狙って構わない」
「伝えておきます」
狙うのはフィネークだ。部下がフィネークに連絡を入れる。
正直かなりの長時間の戦闘であるためそろそろ体力や集中力が切れてきてもおかしくはないのだが、ここで離脱するわけにもいかないからな。
できるだけ安全に飛びつつやるしかない。
そう考えると、あの貴族と王族の2人も少し心配ではあるな。
ダリヤ本人はこの船にいるため何かあっても専用機が破壊されるだけで終わるが、セシルの場合は普通に命がなくなるからな。
シールドを奪えるから多少は被弾しても問題ないだろうが、心配であるのは間違いない。
「あっ。そろそろ機雷の地点に敵が来ます………機雷爆発しました。小型艦数隻を巻き込んだものと見られます。また、多くの敵の移動速度が大幅に低下しました」
機雷が怖いようで、敵の移動速度がかなり落ちる。
先ほどただでさえ落ちていたのに、これ以上落ちるというのだから笑えるな。
「ではあとは、そんな中元気に迫ってくる連中を近い順に潰していけばいいか」




