25.味方到着ですけど何か?
味方の士気が下がっている時に、どうにかして1度回復できて盛り上げられたとしよう。
それは戦闘を行なううえで非常に大きなことであり、それがあるからこそ勝てたなんて言う例も過去には大量にあるわけだ。が、同時にそれは気を付けなければならないことがある。
「士気が上がった直後は味方が盛り上がって、判断能力が低下する」
俺がつぶやいた直後、敵の群れの1か所が機雷の爆発に巻き込まれた。1隻が大破し、数隻が中破や小破したようだ。中破や小破の船はまだ動くことが可能なのだが、さすがに爆発に巻き込まれると今まで通りに飛ぶことはできない。
そして熱くなっていた敵はとっさの対応ができず、そんな味方に衝突していき巻き込まれ大事故を起こすことになる。
ただし、そこはあくまでも起きる不幸の中の1つだった。
士気を無理やり高めた際のデメリットはほかにもあり、
「あっ。ついに一部の船が離脱し始めました。戦線の方へ向かって行きます!」
「ふむ。狙い通りだな」
直後に大打撃を受けると、士気をあげる前以上に士気が低下することになる。
こうなると当然ながら離脱者が発生し、敵の数は少しずつ減っていく。
「もう一押しすれば本隊だけで対応できる程度になるかもしれんな」
「そうですね。もう一息、頑張りましょう!!」
「「「「おぉ!!」」」」
部下の1人が呼びかけ、周囲が盛り上がる。
かなりの数を相手に戦って思い通りにできてきているのだからテンションが上がっているのだろう。
…………こっちはこっちで弊害があったな。
「油断するな。こちらを狙う敵艦の数は着々と増えてきている。常に全方位を注意しておけ」
「「「「イェッ、サー!」」」」
部下たちに気を引き締めさせる。通信をつないで一緒に来ている小型艦やフィネークにも注意を呼びかけるべきかと思ったが、
「あっ。すごいみんな緊張してるみたいですね」
「緊張?」
俺が何か口にする前に部下がそんなことを言ってきた。
みんなという表現はよく分からないが、おそらく一緒に飛んでいる部下たちも含まれているのだと思う。
「結構な数の敵に追われ始めたので、捕まったら終わるって思ってるみたいですね」
「なるほど。その認識は間違いないな」
敵の数は減らせたが、こちらへやってくる敵の数が増えたから恐怖を感じているということか。
俺たちはどうにかできる自信があるが、普通はそう思うよな。
「待ち伏せなどをしてくるのもそろそろ出てくるだろうからな。警戒はしておくべきだろう」
「そうですねぇ。まあ敵の指揮官もそこまで手を回してる余裕はないみたいですから、待ち伏せされても逆に数で押せちゃうんですけどね」
待ち伏せする船はたいてい1隻だ。そこに向かって俺たち数隻が主砲と副砲を合わせて打ち込めば一瞬にして蒸発してしまう。
俺たちの被害は多少シールドが削られるくらいで、ほぼないと言ってもいいほどだ。
待ち伏せされたところで脅威ではないな。
「この少数で、しかも足の速い船だけを集めた小官らに敵が対応してくるのは至難の業だとは思うがな」
「敵の指揮官も優秀ではあるみたいですけど、対応しなきゃいけないことが多すぎますからねぇ。最終目標が本隊だと考えると、この数隻しかいない私たちに全力で何かしてくるわけにもいかないでしょうし」
「そうだな。数が半分以上削れたら向こうも本隊は無理だと判断してこちらに狙いを変えてくるかもしれないが、まだそこまででもないからな」
いくら足が速いから簡単に逃げられるとは言っても、敵が時間をかけて全力で俺たちを包囲しようとしてきたら逃げられない。数の差を使われるとさすがにきついものがあるのだ。
ただ、敵があれだけの船の数を使って、たった数隻しかいない俺たちを狙うだろうか?
いや、それはあまりにも戦果としてはショボ過ぎるし、やらないだろう。
一応向こうが確認できた限り戦闘機体がいるというのは間違いないと思っているのだろうが、さすがにあれだけの数と専用機1機では釣り合わないからな。
「いくら専用機が高いとはいってもそこまではな」
「ですねぇ…………あっ。本隊から連絡です」
「む?なんだ?」
「味方の支援部隊がそろそろ目標地点に到着しそうだとのことです。こちら側の戦況が改善されるかもしれません」
「分かった。本隊にはその味方と積極的に連携を取るよう伝えておけ」
「イェッ、サー!」
敵の裏を通ってちょっかいをかけながらやってきていた味方が、ついに到着したらしい。
敵も連絡は受けているだろうし、どれだけの数を釣れるかが大事なところなのだが。
「あっ。敵の部隊、完全に狙いをうちの艦隊から支援部隊の方に変えたみたいです!」
「ああ。勘違いしたか」
敵はどうやら賭けに出たようだ。
支援部隊の方に重要人物がいるかもしれないと考えて、それに全戦力をぶつけに行くようである。思い切りは良いが、読みを外しているな。
「となると後は、その賭けにベットさせるものを大きくさせることが必要になるか」




