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24.精神と事故ですけど何か?

敵とすれ違うように移動しながら狙撃をしていき、できるだけ敵の船を動きづらくさせていく。

お陰でそこそこの数が対応するためにこちらへ向かってきてくれる。釣りの結果は上々と言って良いだろう。


「しばらくは追ってくる敵を無視。二等兵には本隊へ向かって行く船を狙撃させ続けろ。もしこちらの射程内に入ってくるようであれば、逃げながら対応する」


「「「「イェッ、サー!」」」」


追ってくる敵と暫くまともに戦うつもりはない。ひたすら追いかけさせ続けて、どうにか俺たちに追いついてくる船がいるのであればそこには俺たちの集中砲火で対応するつもりだ。

フィネークはひたすら引き続き艦隊本隊の方に向かって行く敵を狙撃してもらう。


「フィネちゃんの狙撃もかなり効果はありそうですけど、やっぱりもう敵も対応に慣れちゃいましたね」

「すぐに撤去しちゃうもんね。全然迷うような素振りも見せずにやってくからびっくりだよ」


敵も慣れたという表現が正しいのかは分からないが、味方を撤去するという作業は洗練されてきていた。味方へ攻撃するのだから多少なりとも戸惑いがあってもいいとは思うのだが、そういったものは一切見られない。

躊躇なく、味方を撃ち抜き消滅させている。


「ただ、洗練されているというのはある意味利用しやすくもある。積極的に穴を作りに行くぞ」


「「「「イェッ、サー!!」」」」


洗練されているとはいっても、敵1つ1つがそこまで優秀なわけではないと俺は思っている。精神が強くても技術もセットでついているという決まりはないからな。

そしてそういった精神だけの連中は、予想外の事態に陥ったときに混乱しやすい。1つのことに機械的に取り組むのには適してるが、ほぼ脳死でしたがっているだけだろうから自分たちで考えて行動するというのは苦手なのだ。

だから例えば、


「3つ目の穴、敵がどう塞ぐのか決め切れてないみたいですね。接触事故が起こりそうになってました」


「よし。であれば、そこをさらに狙うぞ。二等兵の狙撃間隔に合わせつつルートを再調整だ」


一部で狙撃されて陣形にくぼみができたとして。そこの周囲で本来は少し他の艦が補うようにした陣形を組んでいくことが必要になる。

しかしそれが上手くできないのだ。

なぜなら指示に従うだけのような心理状態になっているし、陣形を他の艦と合わせて変更していくという技術を持っていないのだから。


陣形の組み直しが上手くいかなくなれば、そこに攻撃を受けていくたびにどんどん艦隊内部への穴のようなものができてしまう。

それが悪化すれば、陣形の中心部にまで攻撃を受けてしまう可能性があるほどだ。


「しかし陣形を組みなおそうとしたということは、やはり敵は中心部を守ろうとしているということで間違いないか」


「そうですね。指揮官がいるのかそれともそう思わせるためのブラフなのかは分かりかねますが、あそこまで大きな穴が開けば相手側への衝撃は大きいでしょうね」


「うむ。心理的な効果はあるだろう」


敵の心理状況は2パターン考えられる。

狂ったほどの愛国心に燃えているか、それとも指揮官に絶対的な信頼を寄せているか。

前者であればなかなか対応は難しいのだが、後者であれば大きな被害を受けるというのは大きなストレスとなる。自分たちが信じている戦い方が本当に正しいのかと疑いだすからな。

そうなってしまえば嫌な(こちらにとっては非常に良い)連鎖が始まる。


「あっ。敵艦、味方を撤去することを躊躇してちょっと事故りました」


「始まったか。できるだけ中央部にも攻撃を仕掛けつつ、その他の場所にも攻撃を仕掛けていくぞ」


まず最初に起こるのが、命令への不信感だ。

信じていれば目的が達成できるという心が揺らげば、非人道的な行いを躊躇してしまうようになる。そうなれば他の味方にも影響を与えてしまうような事故を起こす。

そしてそんな事故が起これば全体に不安感が広がり、さらなる躊躇と事故につながっていくわけだ。後はこの繰り返しである。


「この負の連鎖を断ち切るのはなかなかに難しいのだが、それでも敵が対応してくるならばそれはそれで構わない」


「え?そうなんですか?」


「うむ。そこでどうにか士気を執り返したとしても、そろそろアレが来るからな」


少数の俺たちでまともに攻撃しても勝てるわけがない。

だからこそ小細工と事故と心理的影響を与えることで戦っていく必要がある。

もちろん敵が心理的影響をはねのけようとしたとしても、それをどうにか突破できるようにはしておかなければならないのだ。


「あっ。敵艦広範囲で撤去が行われました。加えて、こちらの攻撃の後の撤去もまた元のように戻ってきてます」


「そうか。だが、それならそれでいい」


敵の指揮官はやはり優秀なようで、士気を盛り返すのは早かった。だが、その段階で盛り返しても盛り返さなくてもいいような状況にすでになっていたのである。

それが何かといえば、


「さぁそろそろ。機雷のポイントに来るぞ」


機雷。それもこの船だけが仕掛けて船外の味方には一切教えていないもの。

そんな物が、火を噴く。

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