21.押し付けたいですけど何か?
俺の計画は、完璧と言っていいほどに決まった。
俺たちが罠だと思わせていたのがブラフだと気づいた敵は、油断しまくって機雷に巻き込まれ、しかもそれによって後がつっかえて衝突事故が多発。
さらにはその先の機雷や周囲に仕掛けられた機雷が残っていることを恐れて、動けずにいる。
そしてかなりの数の敵がそこにとどまった状態であり、味方は実質的の数が減ったということになる。状況はさらに優勢なものとなって、
「端の方は完全に敵がいなくなったか」
「そうですね。一部の船がわざわざこちら側まで敵の裏を回ってきながら支援に来るそうです」
「そうか。一応機雷に気を付けるように伝えておけ」
「イェッ、サー」
細々と俺たちの妨害に来た船が機雷を仕掛けたりして来ていた。それらをすべて破壊できているとは思えないし、味方にも移動するなら注意してもらった方が良い。
こういう機雷などの話になるとずっと警戒しているのは移動速度の面で問題が、と言い出す輩がたまにいる。だが、今回は敵がもろに機雷の罠にはまって動けないでいるのでおとなしくアドバイスに従うようである。
近くに反面教師がいるというのは非常に良いことだな。
「敵の裏から移動するということなのであれば当然敵への攻撃も行なうのであるだろうし、一段と勢いは増すだろうな」
「その可能性が高いですね。さすがに裏から流れて攻撃してくだけなので、この艦隊みたいな結果は出せないでしょうけど」
「それはそうだろう。この艦隊と同じレベルのことができるのであればこの艦隊はいなくていいだろう」
「ハハッ。ですねぇ~」
俺たちと同等レベルに戦況へ影響が出せるのであれば、それはドワーフの作った戦闘機体や大勢の精鋭たちと同等の結果を一般兵が出せるということだ。そんなことならドワーフの作った戦闘機体なんていらないし、優秀な人材も必要ないということになってしまう。
できるのであればそれほどの結果を出してほしいところだが、それを望むのは高望みが過ぎる。
「1番の本命はこちら側の戦況を有利にすることだ。道中に関してはないよりはマシ程度と考えた方が良いだろう」
「まあそうですね。この艦隊が進んできた時よりは断然速度が大きいですし、できるだけ早く来てくれると良いんですけど」
こちら側の支援にできるだけ早く到着してほしい。そう考えるのは決しておかしい事ではないだろう。
ただ俺としてはそれよりも、
「そろそろ無理をしてでも敵がこちらへ攻めてくるころ合いだと思うのだがな」
「ど、どういうことですか?」
「さすがに機雷があると思っているあの周辺が動くことはないだろうが、まだ有利な状況となっているここから先の敵がこの艦隊を狙ってくるのではないかと考えている」
「は、はぁ。確かにその可能性はあると思いますけど」
「その敵が、今向かってきている敵にどの程度流れるかが問題だ」
「「「「っ!?」」」」
驚愕した様子の部下たち。
それもそうだろう。ここから俺たちを攻撃に向かってくる敵を味方へ押し付けたいと言っているのだから。
もちろん押し付けることが問題なのではなく、
「少将は勝てないと思ってるんですか?」
「かなりの数はいると思うんですけど、さっきみたいに機雷を使って警戒させて時間を稼げばそこまで危険はないのでは?」
俺が敵と俺たちだけで戦っても勝てないと考えていることを不思議に思っているようだった。
敵も数は多いが、向かってくると想定して機雷を仕掛けておけばまた被害は出せて敵の警戒度を高めることはできるだろう。いや、できると部下たちは考えているようだ。
だが言わせてもらえば、
「敵は先ほどのような油断はしてくれないぞ?機雷などすぐに破壊される」
「ま、まあ、確かにそうかもしれませんけど」
「そんなに私たちが不利ですか?」
「不利だな。敵が無理をして攻めてくるのであれば、この艦隊は完全に包囲される。そしてこの戦いの前に行われた包囲とは違って、敵は積極的に攻めてくるだろう。そうなれば大きな被害からは免れない」
「そ、それは…………」
「そう言われるとそうかもしれないですね」
この戦いが始まる前。敵が数の差を活かして包囲してきた時は、ただ撃ち合うだけだった、途中でセシルやダリヤの機体を仕留めるために機雷をばら撒きこそしたものの、本隊とはただただレーザーを撃ち合うだけ。
しかし、今敵が焦った状態で包囲を仕掛けてきたとして、ただの撃ち合いで終わるだろうか?否、そんなわけがない。
きっと犠牲など気にせず、特攻を仕掛けてくるだろう。数の差を活かして体当たりを繰り返されれば、この艦隊と言えど間違いなく被害を受けることになる。
だからこそ俺としてはそうしてくる敵の数を少しでも減らしてしまいたいわけで、
「近づいてくる味方の中に重要人物がいるとどの程度思ってくれるか。それが問題だ」
「な、なるほど」
「そう思わせて味方に敵を押し付けるというわけですか……」




