20.気を抜いたところにですけど何か?
「戦況はどうなっている?」
「敵が抜けたことで中央からここまでの間は完全にこちら側が優勢になりました。たださすがにここから先に関しては相変わらず敵が優勢なようですが」
「ふむ。まあそれは仕方のないことだ。あまり気にしても仕方がない。できるだけ早く味方がこちらまで来てくれるのを待つしかないだろう」
「ですよねぇ」
俺たちを敵が狙おうとしたおかげでこちらがまた有利になっているらしい。それは喜ぶべきことだろう。
そして、それと共にそんな変化が起こるほどの数がこちらに向かっているということも覚悟しなければならない。
「機雷が来ると理解したからこそ、それで負けないほどの数を揃えてきたというわけか」
「な、なるほど?私たちみたいに攻撃しながらじゃダメなんですか?」
「ダメというわけではないが、攻撃しながらではどうしても速度が低下する。この艦隊に関しては隊長たちへの支援もあるためそのペースでも問題はなったが、向こうにとって速度は命だ」
「ということは今は、敵がこれ以上この艦隊を狙うかどうかを悩むという段階は過ぎたわけですね?」
「そうなるな。もう少し時間がかかるかと思ったが、意外と判断が速い」
漢解除しようとするのはここまで戦況が変化してきたことから推測はできる。
ただ、その選択は俺にとってかなり予想外だ。
そんなことなら、
「先にばらまいておくべきだったか?………………………………いや、逆に今だからこそ悪くないか」
機雷が無駄にならないため、部下が言うように事前にもっと機雷を設置させていても良かったように思えてきた。
しかしさらによく考えてみれば、逆にそれを利用できるような気もしてくる。
「………………では、指定のポイントで機雷を設置させろ」
「イェッ、サー?」
返事は返ってくるが、不思議そうな声色である。
なぜ急に機雷を設置するのかと考えているのだろう。とりあえず指示に従って艦隊全体に伝えてくれてはいるし、説明しておくか。
「敵がそのまま突撃してくるなら、途中で機雷があまり設置されていないことに気づくだろう」
「あっ。そうですね」
「そうなれば無駄に戦闘艦を解除用には使わず、まとまって移動してくるようになると思われる。その判断がなされるだろうタイミングが、少しこれよりも前の地点なのではないかと思う」
「じゃあその判断がなされて、まとまって動き始めると思われる地点の少し先に機雷を設置しておくことで、被害を大きくするということですか?」
「その通りだ」
機雷は当たった敵を1撃で沈めるという力は持っているし本来の目的はそうなのだが、俺としてはそれ以上の成果を求めたい。できるだけ敵が集っているところで当てて、まとめて被害を出したいのだ。
そうしたほうが当然機雷で巻き込んだ分機雷で被害を受ける敵艦の数も増えるし、さらにそれによって移動に支障が出る。
数が多ければ多いほど、密度が高ければ高いほど1か所で詰まったときの被害は大きく、衝突なんかの事故も起きやすい。
「仕掛けられてもブラフのための1,2個だと考えるだろうし、止まるまでの時間もかかるはずだ」
「それは確かにそうですね。あの数いて1個くらいの爆発なら大きすぎる痛手でもないですし、放置するのも当たり前。しかし進んでみれば被害は想像以上というのは困るでしょうね」
まだ警戒している段階でそれならばよかっただろう。しかしある程度進んでから機雷の数が多かったことに気づいても、それはもう大きな被害が出た後のこととなってしまうのだ。
そしてさらにそれだけの被害を受ければ、
「その先にも今度こそ機雷があるのではないかと警戒することになる」
「なるほど。確かにあり得ますね。というか機雷の被害を受けた後だと警戒せざるを得ないですか………」
このまま進めばさらに機雷の被害を受けると考える。そうなれば確実に相手の動きは止まるだろう。
数は揃えてきたが、もしかすると俺たちの仕掛けた機雷は相手のその揃えてきた数では足りないほどの被害を生み出すなる可能性があるからな。
それに加えてさらに言えば、
「それだけの数が仕掛けられていたのなら、いくつかは内部にも入っているのではないかと考え始めるだろう」
「内部?……なるほど。後退するのも難しいというわけですか」
地上戦で考えてみてほしいのだが、走って向かっている間に周囲で地雷が爆発した。これ以上進むのは危ういというのは確実に考える。
では、後退して逃げるだろうか?いや、違うな。後退して逃げたとしても、安全に逃げられると思うだろうか?
………思わないよな?周囲で地雷が爆発したのだから、実は自分たちの後ろにも爆発していない地雷が潜んでいると考えるのではないだろうか。
その状況に今敵が宇宙で陥っていると考えれば、
「敵はあそこからしばらく身動きが取れなくなる」
「こちらにも来ないし、前線にも戻らない。あれだけの敵がそんな状態でいるのであれば、こちらにとっては非常に有利な状況になる、というわけですか」
「非常に有利とまでは言えないが、確実に状況はこちら側にとって良い物となるだろう」




