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18.怪しいですけど何か?

敵の狙いは間違いなくセシルとダリヤである。それは間違いない。

しかし、なぜか敵は数の多いこちら側に真正面からぶつかってきたのだ。全体でセシルたちを追ったりせずに、だ。部下はそれに疑問を抱えていて、敵が何か企んでいるのではないかと訝しんでいるわけである。


「敵のたくらみを簡単に言ってしまえば、この艦隊が味方との合流をする前に仕留めることだったのではないかと思う」


「ま、まあ、そうかもしれませんけど。わざわざ包囲させて時間を稼いで機雷で足止めしてやっていて、この艦隊を孤立させたうえで数で攻めて沈めることが狙いだったのは分かります。しかし、だからと言ってその後敵が真正面からぶつかってきた理由が分かりません。作戦が上手くいかなかったとしても、私たちは逃げていないのですから攻撃するだけならそこまで難しい事でもないはずです」


敵の計画では俺たちが味方と合流する以前に俺たちを沈めていた。だがその計画はあえなく失敗してしまったのだ。そこまでは理解できたらしい。

しかし、だからと言ってわざわざ戦力をここまで減らしてまで俺たちではなく正面衝突を選んだ理由が分からないというのだ。


「そうなってしまった理由は、おそらくこの艦隊が味方と合流したことが原因だ」


「え?なんでですか?別にこの艦隊が逃げたわけでも味方からしっかりと守られているわけでもないんですから、合流したとしても敵側に正面衝突する必要性はないと思うんですけど」


俺たちは味方と合流した。だがだからと言って味方を盾にして逃げたり守ってもらいながら戦ったりしているわけでもない。

どちらかと言えば俺たちの艦隊は孤立したような形で敵の背後に回り込み攻撃を仕掛けていっているのだ。狙うことは容易なはず。


「ふむ。それも間違いではないな。ただ、敵にはそのようなことは分からないのではないか?隊長や殿下が、本当にこの艦隊の中にいるのかどうかなど」


「っ!?」


「戦闘機体自体の存在はすでに敵も確認しているだろうが、動かしている殿下が本当にこの船の中にいるのかなど分からないだろうし、隊長が本物なのかも分からない」


「だ、だから、わざわざすべての船を破壊するために正面からぶつかる必要があった、ということですか?」


「その通りだ」


俺たちにはセシルやダリヤがどこにいるかなんて言うことは分かっている。

だが、敵にはそんなこと分かるはずもないのだ。

戦闘機体自体がいることは分かっても、その中に乗っているのが本人なのか、また操っているのはどこに潜んでいるのか。敵にはわからない。


「それに、明らかに孤立して動いているこの艦隊は餌にしか見えないのだろう」


「餌、ですか」


「そうだ。重要な人物がいるのではないか。何か強い力を持っているのではないか。そう思わせてあちら側の戦力へ何かしらの影響を与えるための餌。そう思われたのではないかと小官は考えている」


「な、なるほど」


怪しいからな。重要な船がわざわざ独立して動いているなんて、軍人としては近づきたくないものだろう。明らかに罠が仕掛けられていて被害を与えてくる未来しか見えないし。


「実際には殿下もいるし二等兵という強力な戦力もいるのだが、怪しさから手を出せずにいたわけだ」


「私たちに気を引かれている間に数を減らされて逆転でもされたら困る、ということですか」


「ああ。こちらの逃げ方次第ではあちら側への被害がとてつもない状態でさらなる戦いを強いられる可能性があるからな。しかもそれで結局殺害対象の2人から逃げられていたなどという話になればあまりにも痛手だ」


「確かにそうですね………」


被害を出しながらも艦隊を仕留めました。でも結局逃げられてたので成果はなしです!ではとてもではないが許されないだろう

相当な金額を使っていることは分かるし、これで失敗したのなら国が滅びかねないからな。


「ということで敵が今までこの艦隊だけを執拗に狙ってこない理由は分かったか?」


「は、はい。分かりました」


部下も俺の説明で理解できたようである。

疑問を口にしたやつ以外も多くの部下がうなずいていたり納得したような顔をしている。もちろん、あらかじめ予想していたやつらは気にしてないような顔をしているが。

ただ、


「しかしそれは、正面からぶつかっても数で押せばこちら側をすべて潰せると判断したからこその結果だ」


「へ?」


「だが考えて見ろ?実際はどうだ?このまま何もせずにただ数を減らし続けることになるのだぞ?」


「ま、まさか、敵は………」


「そうだ。敵はここまで減らされると焦りが出て、結果なしじゃいられなくなる。それこそ」



「っ!?仕掛けていた機雷が爆発しました。付近の味方によると、多くの敵がこの艦隊のいる方向へ向かって移動しているとのことです」


「罠だと思っても手を出さないわけにはいかなくなる」

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