16.見破りましたけど何か?
もし敵が数も多く厄介で、それにこちらが対応できるだけの数を揃えられない場合。
数分足止めできるために余剰戦力をすべて投入するだろうか?いや、そんなことをするわけがない。では、戦力を小出しにしていくだろうか?いや、そんなことをしてもそれぞれ数十秒で片づけられてしまって大した時間稼ぎもできない。
しかし、だ。それの目的が時間稼ぎではなく油断を誘うことだったらどうだろうか?
「戦力を小出ししてすぐに片づけられるようにすれば、相手も対応のためにリソースはそこまで割かない。つまりそれはある意味油断だ」
「そ、そうですね?しかしそこで油断させたとして何ができるんですか?隊長たちみたいに強い戦闘機体を出してくるとか、1つの戦闘艦が異常に強いとかでなければ油断させたところで意味がない気がするんですけど」
部下の言葉も間違いではない。
油断させていてもそれを利用できるだけの力がなければ何の意味もないのだ。
しかし、出す物が圧倒的な戦力である必要はない。
「真正面から攻撃を仕掛けるだけが戦いではない」
「真正面からだけではない?それってどういうことですか?」
「ふむ。説明するのもいいが、あまり余裕もないか?とりあえず艦隊全体に伝えろ。進行方向において先頭となる船は、進行方向にレーザーを使え!機雷を警戒させろ!!」」
「「「「ッ!?イェ、イェッサー!」」」」
機雷だ、俺が予想した中で1番可能性が高い物は機雷だったのだ。
向かってくる敵の数が少ないのであれば、俺たちも対応させるのは少ない戦力となる。そうなると当然攻撃の数も少なくなるわけで、道中に機雷をしかけてきたとしても偶然それに攻撃が当たる可能性も低い。
「っ!き、機雷の爆発が5件ほど確認されました!」
「やはりか。引き続き警戒させろ。どこに仕掛けられているのか分からんからな」
俺の予想通り、攻撃をさせてみれば機雷がいくつか爆発した。敵がこっちに向かってくる間に仕掛けてきたのだと思われる。
俺たちが敵を処理した後2人の支援のために横へ移動していれば、その機雷にぶつかってボンンッ!となっていたわけだ。恐ろしい。
「そして敵の考えが分かっても警戒は続けなければならないというのが面倒なところではあるな」
「ですね。仕掛けられているのは分かってもどこにあるのかまでは分かりませんし」
「レーザ-を撃たせるだけと言えばそれだけだがな。細かく動くことは難しいか」
進行方向先頭の船がレーザーを使うのだが、あまり細かく指示を出すと移動と攻撃とで頭が混乱してしまいかねない。
これが昔のように俺が数年かけて関係を築いてきた連中ならまだできたのだろうが、いくら優秀と言えど俺のやり方に慣れていない部下たちにそこまでのレベルを望むのは難しい。
「であるならば、撃つ船にも連絡がいく体制を整えておいた方が良いか」
「そうですね。指揮が難しそうではありますけど、できると思います!」
「ではそうしろ。移動する方向。移動方向に攻撃する船。その2つを今後は連絡する」
連絡することが増えて部下たちの負荷も増えてしまうが、どうにかしてくれるだろう。そこまで緊迫した状況でもないし、それくらいの余裕はまだあるはずだ。
「攻撃指示が来た際は、味方が射線に入っていないかどうかも事前に確認するように伝えろ。味方がいるようであれば無理に攻撃させる必要はない」
「「「「イェッ、サー!」」」」
こうして指示を出して移動させると、そこそこの頻度で機雷を破壊することになった。このまま気づかずいれば確実にどこかで引っかかってしまっていただろう。
そこそこ密集して移動しているので、機雷に巻き込まれるものがいればそこから連鎖的に事故が起きかねないし、判断は悪くなかったはずだ。
そして、そういう風にして進んでいくと、
「中央部に到着しました!」
「ふむ。中央も戦況的にはやはりこちらが優勢でいられているか」
ついに中央までやってきた。先ほどフィネークを連れてきた影響もかなり大きいと思われるが、かなりこちら側が優勢になっていた。
俺たちが先ほどまでいた側に比べればかなり穏やかではあるが、それでも優勢であるだけで素晴らしいと言って良いだろう。
「残るは反対側だが」
「かなりあちら側がやはり有利なようですね。私たちの妨害に送ってきた戦闘艦が抜けてもそこまでの影響はなかったみたいですし」
俺たちへ送ってきていた妨害の戦闘艦がいたが、それがあっても向こうが優勢でいられるらしい。
とはいえ俺たちがいた側の俺たちの勢いほどではないみたいだがな。
できるだけ早く反対側にまでセシルたちを連れて行って勢いを止めたいところではあるか。
先ほどとは違って反対側は敵にかなりの勢いがあるから、フィネークと数隻で行くのも危険だ。だからこそできるだけ艦隊全体で動きたいと思っている。
「隊長たちに中央での優勢な状況を盤石なものにしてもらえば、向こう側へ行くのも不安なくできるか。中央部を通り過ぎる間にどの程度敵を減らせるかが課題だな」




