13.回り込みましたけど何か?
俺たちがやりたかったことはやった。
後はひたすらたいして重要そうではないものの邪魔にはなりそうな船を、お互いが撃ち合う距離に入るまでフィネークに狙撃させておくだけ。
「こちら側は弱らせたし押し込めるだろう。無理矢理接近して隊長たちに後方を崩してもらいつつ、あとは後ろに回り込んでひたすら攻撃をしていけばこの周辺では我が軍が優勢となる」
「そうですねぇ。数が多い分隊長たちが活躍してくれるでしょう」
「残る問題はこちら側が優勢でも、反対側の状況が優勢でいられるかということになってはくるわけですが」
真正面で前線を維持するような役割は味方に任せ、俺たちの艦隊は後ろへ回り込む。そこから適当に攻撃していくつもりだが、タイミングがあれば(なければ無理矢理作って)セシルたちにも行ってもらう。
できるだけ俺たちの方を早く終わらせて、他の個所の支援に回りたいな。
「少将。そろそろです」
「よし。では艦隊全体にもう1度動きを確認させておけ。重要なのはスピードだ」
「イェッ、サー!」
敵も近づいて来て、撃ち合う距離になるかならないかといたところ。
近づいてくることで射程圏内に入る船が増えたということでフィネークが敵の旗艦らしき船を破壊した瞬間、それが合図だというように撃ち合いが始まった。
「どうだ?」
「フィネちゃんが射程の短い船だけを残してくれてたお陰で、予定通り前方の敵は全滅です!」
「よし。では予定通りに行け」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
フィネークは攻撃射程の長い船などを優先的につぶしていた。おかげで、俺たちに近づいてくる敵はたいてい俺たちに届くような射程の武装がない。
それに対して俺たちは射撃をお見舞いしてやり、俺たちの行く手を阻む敵はいなくなった。
そうしたら、あとは艦隊で動いて敵の裏へ回り込むようにする。
すれ違いざまにセシルやダリヤも動いたようで、きれいに敵艦に張り付いて仕事を始めたな。
「良し。では隊長たちに当てないよう気を付けつつ、隊長たちの進行方向にいる敵を中心に攻撃していく!」
「「「「イェッ、サー!」」」」
この戦いの前、包囲された時にやられたことを俺たちは覚えている。
もしここでもセシルたちを巻き込むために機雷を出されたら困るので、セシルたちの進行方向に機雷がないかレーザーを撃って確認しつつ敵の背後から攻撃を仕掛けていった。
「敵艦、一部が戦線から離脱しこちらを包囲するように動いています」
「指定の船と二等兵に対処させろ。許容量を超えるようなら艦隊全体で対処する」
俺たちにはただレーザーを打ち返すくらいの対処しかしてこない船が多い。だが、一部だが俺たちの対処のために動いてくる船もいた。
とはいえそこまでの数ではないので、事前にそういった船が来た場合の振り分け通りに艦隊が動いて敵を沈めていく。
通常であればもう少し対処の船が多くてもおかしくはないのだが、フィネークが指揮を執っていそうな場所を次々に破壊しているので指示を出せる存在が少ないというのも大きいかもしれない。
「全体的な戦況はどうだ?」
「作戦本部からの情報ですと、やはりこちら側はかなり優勢に押せているようです。ただ、反対側や中央はやや劣勢であると」
「やはりそうなるか。仕方のない話だな」
俺たちの側はフィネークが移動しながら攻撃する際の命中精度も上がっていたし、敵に与えられるダメージも大きくなっていた。そして極めつけに俺たちの周り込みまでできているのだ。多少敵が多いくらいなら劣勢になるはずがない。
ただ、最初に狙撃を開始した辺りではフィネークの狙撃の精度もまだあまりよくはなかったのでそこまで大きな影響は出せていない。何もしないよりはましだったのだろうが、焼け石に水とも言えたかもな。
「こちら側への要請などはあるか?」
「特に具体的に要請はありませんが、できるだけ早く中央部まで来てほしいとのことです。反対側も劣勢ではありますが、中央部とこちら側で優勢に立てるなら負けるほどにはならないとのことでして」
「なるほど」
3か所中2か所で優勢に立てるなら、残りが深刻なまでの劣勢でもない限り負けることはないという話だろう。
となればやはり指示にあったように中央部。そこを目指していく必要がある。
「そこは隊長たちの動き次第でもあるのだが」
「今のペースですと、40分程度はかかるかもしれませんね」
決して遅くはない。
敵のシールドを削って特に何もせずにすぐに離脱しているので、時間はあまりかけていなのだ。しかしそれでも乱戦、しかも戦闘機体ということもあって時間はかかる。
「………………二等兵だけを連れて中央部にまで一度行くか?」
「あぁ~。それもありかもしれないですねぇ」
フィネークを数隻の船で護衛しながら中央部まで連れて行って、適当に旗艦などをつぶしてもらう。
それだけでもかなり変わるような気がした。
「真剣に検討すべきだな」




