5.数の差が圧倒的ですけど何か?
「命中しました!隊長が出ます!!」
フィネークの初撃が奇麗に敵の大型艦を貫き、周辺にいた数隻にも被害を出した。まだ射程距離ではないと油断していた敵に大きな衝撃を与えられたのではないかと思う。
そして、そんな衝撃を受けて混乱している敵にセシルが突撃していく。1機では移動せず、その後にダリヤが続いているな。
というか、2人の機体を守るように周辺に味方の船もいる。
「隊長のシールドはどうなっている」
「問題なく吸収できたそうです。しばらく落ちる心配はないかと」
「そうか。では二等兵を移動させつつこちらも攻めに出るぞ」
「「「「イェッ、サー!」」」」
3人の戦闘機体だけに任せることはせず、俺たちも艦隊全体で敵に攻撃を仕掛けていく。
数が増えたから正面からぶつかり合うことに問題はないのだが、3人がいることにより余計に敵が弱体化しているな。
セシルがいればシールドはすぐに奪い取って行けるし、ダリヤの機体もシールドを削ることに特化した武器も装備している。シールドがなくなれば弱いレーザーでも受けたら船は爆散するし、陣形に穴が開きやすくなる。
そうして虫食いになれば正面から来る敵に対応するなど不可能であるし、
「二等兵から通信が来ました。探知できる中でミサイルポッドを装備した戦闘艦はすべて破壊したとのことです」
「そうか。では次は、後方にいる中でも足の速い機体を優先的に仕留めるように伝えろ」
「イェッ、サー!」
穴が開けば、大事な船も守れなくなる。
強力な武装や厄介な船なんかをフィネークが狙い撃ちにして、敵の戦線維持能力を余計に低下させていった。
そうなると当然、
「敵軍離脱者が現れ始めました」
「ふむ。思ったより早かったが、ここまで圧倒的な力の差を見せつければ当然か」
敵の中で逃げだすものが現れ始める。軍としてはあってはならない事態だが、こんな一方的な展開になっている状況で勝てる見込みもないまま戦い続ける精神力を全員は持っていないだろう。離脱者が現れてしまうのも仕方がないことだ。
そしてそんな仕方のないことが起これば余計に、
「一部で敵の包囲に成功しました。このまますべての敵艦を破壊するとのことです」
「分かった。投降する場合はすべての武装をパージさせるように艦隊全体へ伝えておけ」
「「「イェッ、サー!」」」
一方的な展開になれば、白旗をあげるような奴らも現れ始める。
そういった場合は油断せずすべての武装を解除、もしくは内部から破壊させ、戦闘艦として機能しなくさせることが大切になる。
ちなみにこういった降伏のサインは武装解除をしてすべての船のデータを公開することなので難しい事ではない。そういったのはレーダーの中でも識別できるようにしてあるし、間違えたりすることもない。
さて、こんな風にして、
「敵艦、降伏したもの以外すべて離脱か破壊が完了しました」
「よし。では捕虜たちを迎え入れろ。捕虜を入れる船も問題ないな?」
「はい。しっかりとスペースは確保してあります」
俺たちは勝利を収めた。それはもう圧勝と言ってもいいほどの勝利だ。
さすがにこの数の艦隊となると数隻沈むものが出てしまったが、倒した敵艦の数は10倍以上。成果としては十分すぎるものだろう。
市民たちにもいいアピールになる。
ただ、
『このまま敵基地を攻めましょう!』
『やはり基地を奪えるというのは大きいですわね。賛成ですわ』
うちの婚約者2人は満足していないらしい。さらなる成果を求めているようだ。
近くにはいくつか敵の基地があり、攻撃しに行こうと思えば可能ではある。基地1つくらいであれば制圧も可能だろう。
ただ、
『ではゴトー!制圧は任せますわ!』
『ひきつけるのは艦隊にやってもらって、隙を見てゴトー君に突入してもらいましょう』
その制圧、俺頼みなのである。
この艦隊の火力で押せば基地の破壊は可能だが、制圧までできるかと言われると難しい。やはり内部を制圧するには俺が必要になってくるのだ。
もちろん艦隊にかなりの人数がいるのだから生身の戦闘ができる者もいるが、俺と比べるとどうしてもな………
「かしこまりました。制圧の際は突入します」
『頼みましたわ!』
『お願いします』
そうして始まる制圧戦。まずは先ほどまでのように宇宙空間での撃ち合いとなる。
圧倒的な数を前に敵もどう狙いを定めればいいのかわからないまま攻撃を繰り出してきて、それを防御力の高い船が防いでいる。
そうして向こうが決め手に欠ける中俺たちは逆に向こうの戦闘艦を破壊していき、基地を孤立させていった。
「では、そろそろ行ってくる」
「はい。お気をつけて」
こうなってくると、もうそろそろ俺の仕事の時間になる。
俺は射出ポッドに入れられ、時がくるまで待機。そして、基地までのコース上に障害物や危険がないと判断された瞬間、
『行きます!射出!!』
アナウンスと同時くらいで体にかかる強いG。それに耐えながら、俺の体は基地の内部へと入っていくのであった。




