4.新艦隊初戦闘ですけど何か?
色々と動画の撮影やらネタ会議やらに付き合わされた俺。
だが、そのフィニアのおかげで国民から大きな支持を今ダリヤは集められている。しかも、婚約がなくなったらすぐ別の男とくっつくということをしたセシルも批判されていない。
一部はおかしいと気づくだろうが、気づいたところでどうにかできるほどフィニアの能力は甘くない。
後は俺たちがこの支持率を落とさないように、
「さぁ!ぶっ倒してやりますわ!」
「セシル。言葉が汚いですよ。立場的にもう少しきれいな言葉を使っていただかないと」
「では、おぶっ倒してやりますわ?」
「セシル。何でもおをつければ良いってものじゃないですよ?公爵令嬢なんですから分かってますよね?」
「ふっ。完全に理解しておりますわ」
「何ですか?今日はやけにテンションが高いですね」
戦って成果を出せばいい。
セシルは父親である侯爵からいろいろと言われているのか異様なほどにやる気があり、テンションもおかしくなってしまっている。
ダリヤはそれにあきれた目を向けながらも、
「まあいいです。ゴトー君。私たちはいきますね」
「はい。お気をつけて」
戦いへと向かう。
すでに俺たちは前線へときており、接敵ももう間もなくといったところ。そろそろセシルやダリヤは戦闘機体を出さなければならない時間だ。
「少将。私もいってきます!」
「ああ。気を付けていってくるように」
「はい!!」
ここで今まで影の薄かったフィネークも戦闘機体へ乗るために離れていく。
初めてこの大規模な艦隊で戦闘を行うということで、どこかその様子には緊張の色が見られた。
「フィネっち、だいぶ緊張してんねぇ」
「愛しの少将がハグでもしてあげればよかったのに」
「下らんことを言ってないでさっさと作業を進めろ。この大規模な艦隊の中で俺たちが良い動きをしないとなめられるぞ?」
「イェッ、サー。分かってはいますよ」
「まあ、なめられたところでどうしたって感じなんですけどねぇ」
部下たちはあまりやる気が感じられない様子だ。作業自体は滞りなく行われているが、心情的にはあまりこの主流派のようなところに来たくはなかったのだろう。俺たちの中には権力争いなんかが嫌で抜け出してきたものも多かったりするからな。
「気持ちはわかるが、逃げるわけにもいかんだろう。下手に艦隊を抜ければ、王女の近くにいた人物ということでいろいろなところから狙われることになるぞ」
「「「「ですよねぇ~」」」」
ダリヤは次期国王。ということで、弱みを探っているような輩も少なくはない、
俺たちのようなこの艦隊のメンバーは長い事というほどではないがダリヤと同じ艦隊で過ごしてきたわけだし、多少のことは知っていると思われるわけだ。そんなのが艦隊から抜けフリーになろうものならすぐに誘拐されてダリヤの情報を話せというような脅しを受けることとなるだろう。
「考えるだけで億劫ですね」
「前問の権力争い、そして後門にも権力争いですか」
「面倒な状況に巻き込まれてしまったものですね」
「………………悪いな」
いろんな部下たちの事情を知っているからこそ、俺はそこに少なからず罪悪感は感じている。
しかし、この流れはどうにもできなかったので仕方ない。あの時のセシルを艦隊に迎え入れ、フィネークを受け入れるという選択以外は、ほとんど変えられなかったことなのだから。
「「「「………まあ、少将についていきますし良いんですけどね」」」」
「そうか………感謝しておこう」
部下たちはそれでも俺についてきてくれるといってくれる。
嬉しい話だ。
………………………………いかんな。なんだか気持ちがしんみりとして来てしまった。切り替えなければ。
「よし。では、フィネークと連絡を。まず最初にどこを狙うか決めるぞ。艦隊全体に射線へ入らないよう伝えろ」
「「「「イェッ、サー!」」」」
この艦隊の中で1番の攻撃射程を持っているのは、やはりフィネークの専用機だ。
射程もその威力も範囲もやはり段違い。敵の攻撃が届かない距離から一方的に攻撃を行うことも可能だ。
「………………では、隊長の突入するルートから考えましてこの部分へ穴をあけるのが最適かと」
「うむ。それでいくとしよう。二等兵もいいな?」
『はいっ!』
通信先から二等兵へとなったフィネークの良い返事がくる。
それから1分もたたないうちに、俺たちの数に圧倒されたようになりながらも固まって戦線を維持しようとする敵軍へ一筋の光が伸びていく。
「……さぁ。開戦だ」




