3.ボツですけど何か?
「とりあえず考えたくない話はいったん置いておいて」
「おぅ。何か他に話があるのか?」
「いや、あるでしょ?会ってなかった間何があったとかそういう話するでしょ」
「あぁ~俺、王女とか公爵令嬢とかと婚約したからどこまでが機密でどこまでが機密じゃないのかちょっと判別がな………」
「まさかのこの話の流れで正論パンチ食らったんだけど!?」
驚愕するフィニア。
今の小学生が親に「今日学校どうだった?」って聞かれて「普通」って答えたのにちゃんとそれに理由があったみたいな会話は驚くものだろう。俺も今の流れで相手からそんな返答されたら驚く。
「じゃ、じゃあ、ふぃにあちゃんの方の話をするね」
「ああ。最近はまた別の国、行ってんだろ?」
「うん。いろんなところに行ってるよ。前回会った時から3か国くらい回ったかな?」
「ふぅ~ん。どうだった?」
「そうだねぇ。まずは隣国の………………………………」
フィニアから他国の情報を聞いていく。
あまり重要な話は出てこないが、他国の流れが分かるというのは大事なことだ。そこ沿うような形で動けばその国と友好的な関係を築けるからな。
フィニアが回ったのはこの国から見ると、休戦中の国、あまりかかわりのない国、そして戦争中の国の3つ。
出身国と戦争中ということで1つの国においては監視が大量についたようだが、特に何かされるということはなかったそうだ。ずっとその国にいる間は配信をしていたというから、手出ししにくかったんだろうな。
フィニアもいそこまで危険な区域にはいかなかったから撮影するなとも言いにくかっただろうし、向こうも扱いには困っただろう。
「………って感じだったよ」
「ふむ。なるほどな」
説明を受けた俺は頭の中で話をまとめながら相槌を打つ、
そして適当に雑談でもしようかと考えたのだが、
「でさ、最近思ったんだけどね!」
「ん?何だ?」
「いろんなところ回っていろんなもの食べたり見たりしてって、ほぼ変わり映えしない気がしてきたんだよね!マンネリ化してるってゆぅか?だからさ!なんか新しいネタない?」
「新しい、ネタ?」
そんなことを俺に言われても、というものだ。
これでも毎日忙しくてあまりはやりの動画なども見れていない(ただしフィニアの動画は何とかしてみている)んだ。
「ほら。いろんな国を撮影するって、ゴトちゃが考えたじゃん?他にも何かないかなって思って」
「お前は俺を何だと思ってるんだ?」
「え?私をバズらせてくれた人?」
「………………」
そう言われると確かにそうなのだ。
こいつに各国の状況を見てきてもらい、ついでにそれを動画にさせたのは俺だ。そして、その動画が結果として人気を博したのも事実だ。
だが、
「そういわれてもな……………お前の動画を見ている層が求めているのは結局そういうものだろ?あまり変なことをしても逆にファンが離れないか?」
「うっ。それを言われると…………結構挑戦して人気がなくなった人も多かったからね」
「だよな。当たればデカいんだが、失敗繰り返すとどうしてもな」
人気というのにはやはり波がある。そしてその人気の波が宇宙という広い物であるからこそ、振れ幅も大きくなってしまうのだ。
今人気がある間は良いが、将来人気が低迷した際に登録者の減り方が異常なほどになるのは目に見えている。実際、今まで人気のあった配信者や動画投稿者の人気が下がった際はかなりの人数登録者が減った記憶がある。
「じゃあ、サブチャンネルみたいにするのはどうかな?」
「色々と新しいこと試すためのものを新しく作るってことか?悪くはないと思うぞ」
「でしょ?だから、そっちので出す動画のネタをプリーズ!」
おっと褒めたらまた意見を求められてしまった。弱ったな。
ネタはないが、何もネタがないでは済まされないだろう。俺が思いつくまでずっとついてくるとか言い出す可能性もあるし、
「………………あぁそうだ。それなら、サブの方にはボツ動画をあげたらどうだ?」
「ボツ動画?」
俺の前世でもボツ動画とかは人気があったからな。
これならばいけるだろう。
「ああ。失敗したのとかカットしている部分があるだろ?そういう失敗した部分を集めた動画とか人気が出るんじゃないか?」
「あぁ~なるほどね。狭いコミュニティだと確かにそういうの人気あるよね。でも、私みたいに宇宙全体に発信していくならそういう動画をあげても何が失敗なのか分からない人とかいるんじゃない?」
「それは動画と失敗の選び方次第だろ。言い間違えは分からないかもしれないが、今のスライムだと逆にスライムに返り討ちに合う動画とかはたいてい失敗と分かるんじゃないか?」
「ん~。なるほど?」
フィニアの動画は全宇宙対象に作っているから、失敗も全宇宙に通用するものが多いのではないかと思う。
後はその失敗をどれだけ分かりやすく編集するかというのが腕の見せ所だが、
「まあ、探してみれば分かりやすいのがあるよね。その辺はどうにかできるかな!」
フィニアは編集だってできる。
どうにか俺もネタを提供できたわけだ。よかったよかった。これでまたしばらく放っておいてもいい………
「ねぇ。ゴトちゃ」
「ん?どうした?」
「これから動画撮りに行くよ!」
「………………………………はぁ?」
どうやら向こうは放っておいてくれないらしい。
それからしばらく俺はフィニアの撮影に付き合わされることになるのだった。




