17.基地を奪って守りますけど何か?
敵は見つからなかったが、代わりに大量のお宝が手に入った。お宝と言っても金銀財宝とかではなく、少し古い武器だったり防具だったり、逆に最新式の装備だったり。持って帰って提出したら功績として認められるだろうモノばかりだ。特に最新式なんかは軍が非常に欲している情報だからな。
俺も公爵が推薦して昇格できるって話だったし、この功績がその裏付けとして機能してくれるだろう。見つけたのは俺たちの艦隊だが、探すように指示を出したのは俺だし、その証拠の映像も録画してある。充分俺のものとして利用できるはずだ。
「大尉。この量の装備類とかをすべて持ち帰りますの?」
部下たちに回収したものを整理させていると、セシルがそんな質問をしてきた。大事なものをすべて持ち帰ろうものなら艦隊の倉庫はいっぱいで、これ以上何も入らなさそうだから、
「勿論おいていきます。といいますか、我が艦隊では1つも持ち帰るつもりはありません」
「へ?そうなんですの?」
「はい。この基地から本部の方へ通信を送り、回収用の船を出してもらうつもりであります」
「あら。そうなんですのね。では、しばらくはここの防衛ですの?」
「はい。その予定であります」
無人機生産基地はかなり大事なものだから、下手に物資を回収して本部に戻るより、本部から人員を出してもらってその間の防衛をしている方がよっぽど良い。目を離している間に敵軍が破壊したなんていう事になったら目も当てられないからな。
「敵軍としても無人機生産基地を使われると厄介でしょうから、大規模な奪還、もしくは破壊工作が行われる可能性が高いと思われます」
「ふむ。争いが起きるのですわね?」
セシルが一瞬だが目を光らせた。また勲章を得るチャンスが来たとでも思っているのかもしれない。ただ、セシルが予想している以上に敵が来ると思うんだよな。
だから、俺達一般の軍人がやる事は、
「宙域機雷セット完了しました」
「では、本部の方にも地点を送っておくように」
「イェッ、サー!!」
機雷を仕掛けたりするとかいうちょっとした小手先の技術に頼る。
俺たちの艦隊が保有している機雷はそこそこの威力があるやつで、上手く決まれば大型艦3隻くらいは同時に落とせる………のだが、まあそう簡単には決まらないだろう。小型艦2隻落とせればいいくらいに思う程度だな。ふつうにレーザーが当たって誰も巻き込むことなく爆発するなんてのもあり得てしまうんだから。
「私は戦闘機体で出てもかまいませんわよね?」
セシルが期待した目でそう問いかけてくる。もちろん、
「はい。構いません。お気をつけて」
俺が反対などできるわけがない。隊長がやると言えばやるものだ。……セシルには精々地獄のような時間を体験してもらうとしよう。
セシルに心の中でご愁傷さまと考えてから数十分。
「…レーダーに反応!敵艦です!」
遂に敵がやってきた。レーダーに映る反応から考えると10隻以上いるように思われる。デコイの可能性もあるから確実な事は言えないが、本物だと考えておいた方がいいだろう。
「では、行ってきますわ!」
「はい。お気をつけて」
敵の反応を見たセシルが、気合の入った表情で戦闘機体に乗りに向かう。今回は数が多いからという事で、護衛の面々も戦闘機体に乗って活動する予定らしい。
おかげで俺としては無駄に部下を危険地帯に突入させなくてすんで万々歳だ。
「敵艦、機雷設置地帯に近づいています。接触予定時間5秒前、3,2、1」
部下が敵艦と機雷の接触のカウントダウンを。
「0、敵艦反応2隻消滅。機雷攻撃により2隻が沈没したものと思われます」
「「「「オオオオォォォォォォォ!!!!!!!」」」」
部下たちは機雷命中に喜びの声を。
だが、俺は落ち着いてモニターを眺める。2隻減ったところで、敵艦はまだまだいるのだ。この程度で喜んではいられない。
「隊長達にもしっかりと機雷の設置地点を伝えておけ。最悪向こうが誘導して機雷の近くに行ってしまう可能性もある」
「イェッ、サー!!伝えておきます!」
今はそれよりも冷静に、少しでも有利に状況を動かすことに努める必要がある。そのためには機雷で敵の数を削ることも勿論必要だったが、そのほかにも、
「訓練生」
「ひゃ、ひゃい!?何でしょうか!?」
「レーダーに触れてくれ。広範囲を探知しておきたい」
「わ、分かりました!」
フィネークを使ってできるだけ遠くまで確認しておく。あまり一方に気を取られていると他の地点から回り込まれて基地が破壊されるなんて言うことも考えられるからな。
フィネークがレーダーの装置に触れると、少し前にもやったようにレーダーの範囲が拡大され、
「敵影確認。現在3方向から敵が来ているようです!」
3方向から来ているらしい。今レーダーに映っている敵だけに気を取られていたりしたら危なかったな。
……と考えたが、敵が3方向から来ているのが分かったからといって、敵をどうこうすることはできない
「……訓練生。移動してくれ」