25.ぶっつけ本番ですけど何か?
《sideゴトー・アナベル》
敵艦とフィネークの専用機の間に滑り込み、攻撃をシールドで受け止める。激しくシールドは削られるが、
「どうにか間に合ったか」
「間に合いましたけど、本当にギリギリでしたねぇ~」
「もうちょっと余裕が合ったらよかったんですけどね」
間に合ったということでいったん安心。部下たちも額の汗をぬぐっているな。
ただ、その程度のことをしている時間はあるとはいえ、
「この敵艦の数、私たちでは対処できませんよ。どうするんですか?」
「少将~。恐らく次の攻撃を受けたらシールドは全部なくなって破壊されちゃいます~」
「分かった。とりあえずシールドのリチャージを。殿下から送って頂いたものがあったはずだ」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
シールドのリチャージ。普段はそれをするアイテムはお高くて絶対使わないしそもそも持っていかないのだが、今回はあるのでありがたく使わせてもらう。
実は王子を含めフィネークに惚れた攻略対象連中からこういった装備関連はいろいろと送られてきていて、現在お高いアイテムもいくつか使用できたりするのだ。
「リチャージは何度までできる?」
「残り5回です!」
「5回か………訓練生へ通信をつなげ!」
6回リチャージできるということだが、逆に考えれば残り5回しかできない。それまでには最低でも仲間の元に戻るなりして敵に対処できる状況を作らなければならないわけである。
そうなると時間の余裕もなく、俺はフィネークへ指示を出さなければならない。
通信先のフィネークは、どこかおびえたような表情をしていた。まるで怒られるのを怖がっている子供のようだ。
「フィネーク」
『っ!』
俺の呼びかけにフィネークが反応する。その顔には様々な感情が混ざっていることが見て取れた。
だが俺はそれを無視して、
「すぐに本艦のシールド内へ入れ。訓練では見せられなったフィネークが勝つための戦い方というのを教える」
『っ!………イェ、イェッサー!』
セシルとダリヤには、それぞれ俺が戦い方なんかを伝えた。
フィネークだけは攻略対象たちの所為で邪魔されてしまったが、俺だって考えてはいたのだ。いかにすればフィネークが最も活躍で来て、セシルとダリヤが組んでも勝てるようになるのか、というのを。
結果として思いついたのが、
「これより本艦と専用機の結合を行なう。移動は本艦に合わせて行われるようになるため、狙撃のみに集中しろ」
『イェッサー!』
フィネークの機体における弱点とは何か。
それが、防御力の低さ、機動力の低さ、そして操縦者の運転能力の低さだ、
それらの解決のために何ができるかと考えた結果、考え付いたのが戦闘艦と専用機の結合だ。
専用機に結合して防御と移動は戦闘艦に任せることで、彼女は狙撃のみに集中できるようになるわけだ。
「まあ、照準は合わせづらくなるのが難点だかな」
「ですねぇ………逆に、かすらせてる方がおかしいんですけどね」
移動は自分の意志で行われるわけではないので、照準は定まりにくい。攻撃など当てられるわけがないのだ。
だが、そうだというのにフィネークは直撃こそさせられないものの確実にかすらせている。
「当てやすいところに撃ってるんでしょうけど、それでもあそこまでの精度でできるのはすごいですね」
「武装や足をそいだりしてることも多いし、結果は確実に出ている。これは操縦者と息を合わせられる程度に訓練すれば、十分実戦の中でも使えるようになるな」
今は実戦じゃないのかよ、と思うかもしれないが、現在敵はかなり偏った編成なのだ。普段戦場で真正面からかち合う敵たちとは違うところが多い。
通常ならもっと攻撃力に特化した船も来るだろうし、俺たちも艦隊内部での立ち回りを考えなければいけない。
この戦い方を今の状態で前線に持って行っても使いものにはならないだろう。
「まだまだ訓練次第か」
これが精度を上げてさらに使えるようになれば、艦隊の利益になる。
こそこそ別の場所から撃たせるのと船に隠しておくのが使い分けられれば、対応能力が格段に上がるからな。
「今後に期待だが………そろそろこちらの出番も終わりか」
もう少し練習もかねてフィネークに動いてもらいたかったところだが、俺たちの動きには終わりが近づいていた。
なぜならこれから、
「合図が来ました!殿下の専用機が出撃されたようです!!」
「よし!引き上げるぞ!隊長とダリヤ様に連絡!訓練生には継続してもうしばらく攻撃を続けさせろ!」
「「「「イェッ、サー!」」」」
この戦場はあくまでも王子が活躍するための舞台となっている。
だからこそ俺たちは多少乱すだけで、大きな活躍などせず撤退してしまって構わないのだ。
「フィネークの方で問題はありましたけど、隊長とダリヤ様がいてくれたおかげで艦隊全体で倒せた敵艦の数はかなりのものになってますね」
結果は必要ないが、結果を出しても評価されないわけではない。
ほどほどの結果を出した状態で俺たちは勝ち逃げさせてもらうことにした。
「あとは、殿下がどう動くのか見物させてもらうとするか」
作者の書いている
VRゲームで攻略などせずに勉強だけしてたら伝説になった
という作品がジャンル別のランキングに入っているみたいです。ご興味あれば是非!




