22.不幸は続きますけど何か?
「では、このように動くことといたします。皆様ご異議はありませんか?」
一先ず会議で基本的な動きなどは決まった。
どうにか適当な言葉を並べて王子の考えを誘導し、俺たちがそこまで王子に振り回されないような配置にはできた。
これでフィネークに活躍を見せたいとか言って王子が近づいてくることも、セシルとダリヤが邪魔だということで王子から攻撃されることもないだろう。
「少将。いろいろなフォローしていただき感謝しますわ」
「私も助かりました。セシルもとろみ出していましたし、私でどうにもできないところを率先して動いていただけたのはありがたかったです」
「いえ。お気にならさらず。仕事ですから」
セシルとダリヤから王子の対応をしたことで感謝された。
ついでに帰った後に2人からいろいろと聞かされたらしく、
「少将ぉぉぉ!!!!!殿下から少将が守ってくださってたなんて、私感激です!!」
フィネークが満面の笑みでそんな言葉と共に礼を言って来た。フィネークをいろいろと守るように動いたのは間違いないのだが、ここまで感謝されるとやりづらい。
変なことを言うと王子を批判したみたいになって不敬罪になりかねないし。
俺は無難な受け答えをすることしかできない。
「訓練生に精神的ストレスがあったのは理解していた。できるだけ負担が減るようなポジションを選んできたから、しっかりと結果を出すように」
「はい!もちろんです!少将にそこまでしてもらって何もできないなんてありえません!!」
フィネークは言い切りやがった。
一応厳しい上司っぽく言ってみたのだが、あまり効果はなかったみたいだな。正直最近好感度が上がりすぎているからここで好感度調整をしていったんフィネークを落ち着かせたかったんだが(恋愛ゲーム脳)
「頑張りたいのでちょっと特訓してきます!」
「う、うむ。本番に支障が出ない程度に頑張るといい」
「はい!」
俺の言葉でスイッチが入ったのか、フィネークはシミュレーターでの訓練に行った。途中でセシルやダリヤも誘ってたし、かなり本気だな。
「少将」
フィネークもこのまま空回りさえしなければ十分成果を出してくれそうだな、なんて思いなだら今後の戦いのことを考えていると。
俺に部下が話しかけてくる。
「どうした?」
「少しお伝えしたいことが」
報告があるというのでこの時期に一体何だと思いながらそれを聞く。
その内容は予想外の物で、
「っ!」
珍しく自分が表面上でもうろたえてしまっているのが分かる。
だが、それほどまでに今回の報告は俺の予想外のものだったのだ。なにせまさか、
「来るのか?」
「はい。来るそうです」
「………………」
来るというのだ。
王子の愉快な仲間たち。つまりそう、フィネークへこいつらの相手をするくらいなら戦場に出たほうがましだと思わせるくらい心労を与えた。攻略対象達が。
「訓練生には伝えたか?」
「いえ。まだ伝えておりません」
「隊長やダリヤ様には?」
「私たちはまだお伝えしていませんが、おそらく護衛や使用人の方々が情報はすでに確認していると思われます」
「そうか。となると伝わるのも時間の問題か………」
王子から解放されたと思ったら、今度はまた有力な貴族たち。フィネークとしては逃げ出したいような状況だろう。
俺はまた泣きついてくるのであろう彼女のことを考えながら、せめて今の時間だけは幸せに訓練させてやろうと考えるのであった。
「一先ず影響が出ないように、集められるメンバーを集めて会議をするぞ。もう一度艦隊の編成を見直す」
「イェッサー」
覇気のない返事をした後、俺の指示を実行するために部下が動き出す。
フィネークはどうしてこうも不幸なことが連続で起こるんだろうな?やはり主人公だからだろうか?これが主人公補正だとは思えないのだが。
「少将ぉぉぉぉ!!!!!もうわだじ軍辞めだいでずぅぅぅ!!!!!」
「気持ちはわかるが、ここで軍から離れたら本当に貴族の方々か殿下の愛人ルートが確定すると思うぞ」
「ひぃぃぃん!なんで人生は私をいじめるんですかあぁぁぁ!!!」
「それは知らん」
案の定報告を聞いたフィネークに泣きつかれた。
俺に縋り付いて人生の不幸を嘆くフィネークに、セシルやダリヤは何とも言えない視線を向けている。慰めたいけどもうどう慰めればいいのかも分からないといった感じだろう。
ここまで不幸が重なると状況が好転するなんて到底考えられないし、ポジティブな言葉なんてかけられないからな。
「少将ぉ~私どうすればいいんですか………」
「今の対応に自分でできることはないから我慢しろとしか言えんな。一先ずこれから時間をかけて軍の中で地位を上げていくしかないだろう。このまま専用機の持ち主であり隊長やダリヤ様の友人であることに加えて一定以上の階級があるということになれば、今以上に軍としても守りやすくなるはずだ」
「つ、つまり」
「よく言えば頑張ればどうにかなるが、悪く言えばほぼ現状維持といったところだ」
「そんなぁ………」
モテ期=不幸




