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18.早く出撃したいですけど何か?

シナリオの強制力を思わせるような、突然のフィネークへの打診。イケメンで貴族界でも有名らしい攻略対象たちから、彼女は婚約者にならないかと誘われたのだ。

もちろん本人は困惑気味である。


というか、


「急にそんなことを言われましても困ります。というか、怖いです」


恐怖まで憶えたようだ。

無意識なのか知らないが、セシルの服の裾をつまんでいるな。なんか、人見知りの子供が親の背中に隠れているみたいな様子だ。


「あ、ああ。すまない」

「怖がらせてしまったか。ごめんな子猫ちゃん」


「「「子猫ちゃん!?」」」」


さらっと放たれた攻略対象からの言葉にフィネークを含め3人娘が驚愕している。なんか原作だとこの子猫ちゃん呼びにファンはキャーキャー言ってたんだけどな。

きざったらしい感じのイケメンによく似合う感じではあるが、3人にとっては純粋に気持ち悪い感じなのかもしれない。


………なんかこのまま話を進ませても良い方向に行く気はしないし、ちょっと俺も挟ませてもらうか。


「すみません。少しよろしいでしょうか?」


「「「「ん?」」」」


視線が一斉に向けられる。

全員不思議そうな顔なのだが、フィネークだけは助けてくれるのではないかと期待した様子で目をキラキラさせてるな。

そんなことをされても俺にやれることなんて、


「殿下にも事前にご説明しているのですが、そこのフィネークを引き抜かれますと少し軍と軋轢が生じる可能性がございまして………」


王子にも説明して、フィネークの重要性と軍との関係を伝えておく。

さすがに攻略対象たちも軍と事を構えるのは嫌なようで、


「あ、ああ。なるほど」

「軍に拘束されるなんてかわいそうな子猫ちゃんだね。でも、絶対に救ってみせるよ」

「待っていてくれ。必ず助けに来る」


何かそれっぽいことを言って足早に去っていった。

………愛の力とはいったい何なのだろうか。


「少将。ありがとうございます」


なんとなくむなしい気持ちになっていると、フィネークから頭を下げられた。

特にそこまで助けになるとは思っていなかったため素直に受け入れられるものではないが、それを口にしてもそれはそれで面倒なことになりそうなので黙っておく。

攻略対象たちが帰ったことで少しフィネークもほっとしたようで、嬉しそうな表情をしている。が、そんな彼女の横で、


「これで終わりだと思いまして?」


「いえ。そうは思えないですね。彼らは諦めが悪いと聞きますし」


セシルやダリヤはこれで終わりだとは思わないようで、心底面倒くさそうな顔をしていた。

あの様子を見る限り愛に生きているようには見えないが、ゲームの性格を考えると愛にかなり熱心なものたちのはず。となれば、自分たちの愛をかなえるためにいろいろとしてくるはずだ。

例えば、



艦隊に物資を詰め込む間時間があるので周辺を歩いていると、


「………おや。偶然だね。子猫ちゃん」


「え?あ、ああ。はい。そうですね?」



食堂で昼食をとろうと向かってみれば、


「おっ。偶然だな。ちょっと一緒に飯でもどうだ?」


「あっ。お久しぶりです。昼食はセシル様とダリヤ様から誘われているのでお断りさせていただきます」



しまいには艦隊の内部にまで、


「………ん。偶然。これからデートでも、どう?」


「あまり偶然には感じませんが………これから用事がありますのでデートの方はお断りさせていただきます」


かなりのストーカー具合で攻略対象たちがそれぞれフィネークに接触してきている。

それこそ、フィネークがもう外にしばらく出たくないとかいうレベルでだ。

外出の際セシルやダリヤがいたからこそ予定があるとかいろいろ言って彼らの誘いも断ることができた。が、たかが平民でしかないフィネークがもし1人であったならば断わることも難しかっただろう。

本当にあいつらは面倒極まりないな。


「少将~。助けてくださ~い」


フィネークは疲れ切った表情で俺に泣きついてくる。

さすがに貴族の相手をして疲れたとかになると適当にあしらうこともできず、俺も適度に優しくなだめてやらなければならない。


「早く出撃して、人間関係に悩まされないようにするのが1番かもしれんな」


「そうですよねぇ。私、早く出撃したいですぅ~」


慰めながらつぶやいた俺の言葉に、フィネークは激しく同意してくる。戦場に出たいとまで言うなんて、相当辛いんだな。

相手は公爵家の人間だから無碍に扱うわけにもいかないというのもあるし、気持ちは分からんでもないが。

ただ、正直俺の予想以上に、


「少将。私最近気づいたんです。このコンテナを運ぶ機械の単純作業が、私たちの出撃を進めてくれてるから好きだってことに!」


「そ、そうか」


かなり重症だった。物資が運ばれる単純作業を1時間くらいずっとフィネークは眺めているのだ………俺の隣で。

1時間も見ていると俺は飽きるのだが、そう言える雰囲気でもない。

本当にどうにかしたいと思い始めた時、


「で、殿下が戦場に出ると発表されましたわ!!」


やっと解放されそうである。

まだまだフィネークのモテ期は続きます

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― 新着の感想 ―
[一言] おや? フィネークの眼からハイライトが…。
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