15.命中しましたけど何か?
「く、悔しいですわ………」
「うぅ~。私何もできなかった………」
俺とダリヤに負けた2人が悔しそうにしたり落ち込んだりしている。
セシルに至ってはシミュレーターに突っ伏して手足をじたばたさせているな。令嬢としてはどうかと思うが、かわいいのは間違いない。
「ふふふっ。これが私と少将の力です」
そんな負けた2人に対して、ダリヤの方は勝ち誇っているな。鼻歌まで歌っていて、非常に機嫌がよさそうである。
ただ、
「小官が行ったのは最後の一斉放射のみでしたし、あまり小官である必要性は感じませんでしたが………」
俺の感想はそんな感じだ。別に俺じゃなくても今のと同じ動きはできただろう。
ひたすら逃げ回って最後のフィニッシュをもらうとか、嫌われそうなポジションではあるがな。
「いやいや。今のは少将の作戦がよかったんですよ。私はそれの通りに動いたわけですし」
「そうですわ!別に私はダリヤに負けたわけではありませんの!」
「確かにダリヤ様もすごいですけど、ジェット・ス〇リーム・アタック?とかいうのもすごかったですよね」
作戦が褒められているが、ジェット・ス〇リーム・アタックだからな?フィネークもすごいとか言ってるが、ただのジェット・ス〇リーム・アタックだからな?
それで褒められる俺は微妙な気持ちだ。
あと、思った以上にセシルはダリヤにライバル心を持っているのかもしれないな。そんなにダリヤに負けたことを認められないのか………。
「そう。すべては少将が原因ですわ!だから次は私と組みますわよ!少将!」
なんか変な流れになった。
セシルの言葉に逆らう流れは生まれず、そのまま今度は俺とセシルが組んでダリヤ&セシルのコンビと戦うことに。
「で?少将。いったいどんな作戦がありますの!」
「そんなに期待されましても………」
案の定計画を求められる俺。そんなに大したことはできないというのに。
俺は頭を悩ませつつ、
「では、こうしましょう。まず………」
計画を伝え終わり、向こうの打ち合わせも終わり。
お互いに準備を終わらせて対戦が始まる。
「では行きますわよ、少将!」
「はっ。作戦通りに」
作戦通りにセシルが動き出す。
その専用機は俺の操る戦闘艦に触れ、一瞬にしてシールドを奪っていく。先ほどの戦いでは使われないように回避していた、セシルのシールドを奪って自分のものに変えるという専用機の特殊能力が発動したのだ。
「「はぁっ!?」」
当然困惑するのは対戦相手の2人。
理解できず困惑して初動が遅れている隙に、俺は普段は使わないお高いアイテムを使ってシールドのリチャージを行なう。これで完全にとまではいわないが、セシルがシールドを持った状態で俺のシールドも最初と同じような状態に持ってこれる。
「さぁ!沈んでくださいまし!」
「っ!やられません!来るのは分かってるんです!!」
セシルの方はダリヤの機体以上に高い機動力で一瞬にしてフィネークにたどり着く。
やはりダリヤと組むにしろセシルと組むにしろ相手にフィネークがいるというのは非常に面倒なので、最初に消してもらうのだ。
ただそれは向こうも分かっていたようで、ダリヤの対応の時とは違い、フィネークはレーザーを放たない。ダリヤの時とは違って機体が多いわけではないので、
「この距離なら、セシル様でもかわせないはずです!!」
「っ!来ましたわね!!」
ひきつけた状態で、戦闘艦すら破壊するほどの威力の砲撃を行なう。さすがにセシルほどの技術があっても凶悪なほどに太いレーザー砲をここまでの距離で避けることは困難。
上手く対応することもかなわず、
「よし!当たった!」
戦闘中であるにもかかわらずフィネークが喜んでしまうほどには、完璧に命中した。
そう。命中は、した。
「うぅ~ん。実に計画通りですわね」
「………………え?」
ただ、当たったこととセシルが倒せることは別だ。
フィネークが喜んでいる間にセシルは攻撃を繰り出し、フィネークの機体を破壊している。
「な、なんで?」
「さすがは少将ですわ。ここまで読んだうえで、私に自身の船のシールドを渡して1発だけ耐えれるようにするなんて言う作戦を考えたんですもの!」
そう。俺は向こうがひきつけて必ずセシルを倒しに来るだろうというのは予想できていた。
だからこそその1発で倒れないように俺のシールドを渡したんだ。
え?シールドを張っている戦闘艦ですら沈むのに、どうしてセシルの機体は沈まなかったのかって?
それは、彼女の機体というものの大きさと彼女の魔力が関係している。
当然ながら戦闘艦と戦闘機体では大きさが違うし、シールドを使う面積に差があるのだ。そのため、同じ時間シールドを張るのでも圧倒的にその持続力やシールドの強さが違う。
さらに彼女の魔力は闇属性であるから、シールドは通常より強化されるのだ。
そんな2つの要素が組み合わさったからこそ、セシルは1発だけ耐えることができたのである。
「しかし、逆に1発だけしか耐えられなったというのにフィネークの機体の強さを感じますわね」




