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10.何もないわけがないですけど何か?

「うおおおぉぉぉぉ!!!!!!」


「そう簡単にはやらせはしませんわ!」


この世界における決闘は、当然ながら剣と盾でせめぎあうものではない。もちろん、魔法を打ち合うわけでもない。

純粋にビームを打ち合うのだ。

当然非殺傷であり、撃たれても体に取り付けた器具がダメージを受けたという判定を出すだけで危害はない。


「さすがにセシルは動きがプロですね」

「少将からいっぱい教えてもらいましたからね!!」


「ふむ。小官が教えた者が上手く活かせているかどうか見る良い機会ですね」


セシルを含めたこの3人娘には、俺を含めた数人の隊員がこういった生身に近い状態(この世界基準)での戦いも教えている。

正直ビームも魔法も使わない格闘技すら教えているのでそのまま相手の銃を取り上げてたこ殴りにするという戦いもできる。

さすがにやると周囲にドン引きされるだろうが、ルール上は禁止されてないんだよな。あくまで今回は相手に死亡判定を出すことが勝敗を決める。


「適当に腹部でも撃って、あとは首を絞めて落とすのが1番楽かもしれないですね」


「「原始的ですね!?」」


俺の意見は、この世界だと原始的という風に評価される。

まあ、だからこそ相手にとっては予想外だったりするわけだが。想定していない攻撃を受けて慌てる敵など、処理するのはたやすい。


「あまり殿下も力は強くないようですし、首を絞められれば逃げるのは不可能ですし、できれば勝利は間違いありません」


「そういわれると…………」

「なんだか正しい気がしてきますね。軍事学校のときですらそんなことは教わりませんでしたけど」


「それも仕方がないだろう。まず生身で特攻する人間が少ないのに、小官のようにレーザー機器をあまり使わない戦いをするものなど極まれでしかない」


「「逆になんで生身で戦おうと思ったんですか!」」


ダリヤとフィネークは決闘などそっちのけで俺のツッコミ役に回っている。

当たり前だが、この世界だとこういった意見が一般的となっている。たとえ街中でナイフのような刃物を持っていたとしても、原始的なオーパーツ的な何かを持っている変な人程度にしか思われないし、逮捕されることすらないのだ。

なにせまず、この世界だと刃物というもの自体が遺物以外でほとんど存在しないのだから。


「小官の場合は魔法が使えますので。生身の戦いができない相手であればほとんどリスクなく勝てます」


「それだけで生身を選ぶんですか?」

「絶対に戦闘艦で撃ちあってる方が安全だと思うんですけど」


「相手が対策を取らなければそう難しい事でもありませんし、絶対的な強みを持っているのは大切です」


この間の闇の魔力を持った暗殺者もそんなに数がいるものじゃないし、あのレベルなら勝てないこともない。

さすがにエルフやら何やらが出てくると勝てないが、それでも俺の魔法というのは強いのだ。生身での突入をやめるつもりはない。


「あっ。話してたらそろそろ終わりそうになってます!」

「おぉ。本当ですね。セシルは被弾1で、兄様は残り1ヶ所と言ったところでしょうか」


「隊長がかなり優勢ですね。訓練の差があるので当然ではありますが」


セシルは1度だけ攻撃を受けたようだが、代わりに王子の被弾がとんでもないことになっている。あと1度どこかしらに攻撃を受ければ、そのまま敗北確定だ。

が、


「何も起きないわけがない」


「え?ど、どういうことですか?そんな風に少将が言うと怖いんですけど!?」

「そうですね。不吉です。が、少将の言うように兄様が何もしないわけがないのも確かでしょう…」


フィネークは困惑した様子だが、ダリヤの方は予想できたのか苦い表情を浮かべている。あのバカ王子には良くないことをするのに関しては一定の信頼があるのだ。

もし万が一あいつが何も仕込んでなかったとしても、取り巻きが何か必ずするので間違いない。

そんな俺たちの予想通り、


「っ!?セシル様が何もされてないのにダメージを!」


フィネークが驚きの声をあげる。

セシルは何もされていないし逆に追い詰めている側だというのに、なぜかシステム上でダメージを受けているという判定になっているのだ。


「システムに介入したといったところでしょうか」


「おそらくその通りかと。多少ダメージ判定を出すくらいなら難しいことでもないですし」


セシルもそろそろ気付くだろうし観戦者にも気付いたものは現れ始めたが、審判は何もまだ言っていない。審判は確実に王子の息がかかっているな。


「卑怯ですね。どうにかできないでしょうか………」


その様子を見るフィネークはむっとした表情になっている。

セシルがそんな方法で負けると考えるのが嫌なのだろう。その気持ちは分からないわけでもないし、それ以前いあの王子にいい思いもさせたくないので、


「勝敗関係なく、卑怯な手を使う人は嫌いだとでもいえばいいのではないか?」


「ああ。良いですねそれ。惚れてるフィネークに言われれば兄様も対応せざるを得ないでしょう」

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