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9.やる前に確認ですけど何か?

「それではこれより決闘を行ないます!!」


司会者というか、審判がそう宣言してしまう。

決闘をするのは公爵家令嬢セシルと。ちょっと優しくされただけで惚れてしまうちょろバカ王子。

そして、この決闘で賭けられるものは、


「フィネークは渡して差し上げませんわ」


「なんだと!彼女は僕がもらう!!」


「は、はぅ~。恥ずかしいです//」


平民の少女フィネーク。

これからいざ尋常に勝負、となるところなのだが、


「では少し事前の取り決めを」


「あら。少将。いらっしゃっていたんですの?」

「む。お前か?これから決闘なんだが?」


邪魔しやがって、とでもいうように王子からにらまれる。セシルはセシルで、ここまで俺が来たことに全く気付いていなかった様子だ。

両方若干ひどい気はするが、


「殿下。フィネークは我が艦隊に所属している者です。さらに言えば、軍に所属している身」


「うむ。そうだな。であるからこそ開放してやらねば」


「そのお考えは素晴らしいものかもしれませんが、ここでただ引き抜くだけでは軍ともめる可能性があることもご承知ください」


「ん?」


王子の表情が変化する。

彼にとって、フィネークは好意を寄せる相手であっても身分は平民であることは分かっている。つまり、引き抜いたところで、


「何の問題があるというんだ?」


という程度の認識にしかなっていない。

ただ、


「実はそのフィネーク、我が艦隊における専用機を使う者の1人なのです」


「………………何だと?]


さすがにこの情報には王子も眉を顰める。

俺たちの使う艦隊の専用機が完全に個人用だということは分かっていないようだが、それでも専用機に乗ることができるというのは貴重な人材であることは分かるはず。

さらに言えば、


「実はその専用機はドワーフが個人的にフィネークへと送ったものでして」


「替えが効かない、というわけか」


「その通りでございます。もしフィネークを引き抜くとなりますと、最低でも軍に100艦隊程度の補填は出さなければまずいかと」


「100だと?そんなにか?」


王子が驚いている。さすがに100は盛っていると思われたみたいだな。艦隊が100あれば相当な金額で相当な戦力になるし。

ただ、決して盛っているわけではなく、


「はい。専用機とそれを使いこなせる者の価値というのはそれほどまでに高いのです。なにせ、例の件でドワーフに恩を売れなければまず我が国で手に入れようという動きすらなかったものなのですから」


「そうなのか……」


そういわれてしまうと、王子も納得するしかないだろう。実際、ドワーフに恩を売ってなかったら専用機1つでとてつもない金額を払うことになっていた。

それで買えるのは所詮戦闘機体なわけだし、そんなことをするくらいなら艦隊をそろえた方がよほどましだったりしたのだ。


「もしそれがなければ、その分の損失を受けた軍が荒れるのはご覚悟いただきたく」


「わ、分かった…………で、では、愛人にするだけならどうだ?」


よし。勝った。王子が決闘の内容をセシルからフィネークを引き離すことではなく、フィネークを愛人にするということに変えてきたぞ。

とりあえず、これでしばらくはフィネークが艦隊から引き抜かれてしまうということはない。

できればもう少しフィネークを働かせる期間が欲しいし、


「10年程度フィネークが特に何もなく仕事をできましたらそのころには殿下の地位も盤石なものになっているでしょうし、ある程度軍に譲歩させることはできるかと」


「10年………………10年か。よし。ではそれも付け加えよう。10年後にフィネークを愛人にする!決闘で求めるのはこれだ!」


ミッションコンプリート!王子が間抜けで助かった。

最低限フィネークを今後働かせられるようにはしたし、万が一があったとしてもフィネークが王子の愛人になるだけで済む。

もちろんフィネークは嫌がるだろうが、俺なら国外逃亡の手助けもできるからな。10年とか馬鹿な王子が待っている間にどうしてもいやというのなら家族と共に逃がしてやればいいのさ。


本当に、王子が間抜けで助かる。


「そ、それでは改めまして決闘を行ないます!」


「ふむ。10年後のフィネークの愛人ですのね………………フィネークの気持ちを考えればそれもなし。今後同じように惚れる人が出るたびに決闘を仕掛けられても面倒ですし、こちらは殿下が愛人や婚約者を作ること、および、私に決闘で求めることを禁止する、というのを求めますわ」


「うぐぅ!」


王子が分かりやすくうろたえている。

もしここで勝てば10年後にフィネークを愛人にできるかもしれないが、負ければどうしたってセシル以外の相手を作ることができなくなる。

セシルのことが嫌いな王子としてそれは避けたいところだろう。


だが、


「良いだろう!受けて立つ!!」


この王子がセシルから逃げるわけがない。

なにせ、間抜けなことにセシルを格下だと見下しているのだから。

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