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7.聖地ですけど何か?

恐らく専用機はドワーフにより改造されたものであろうことは分かった。

ただ、問題はそこではないのだ。

その高い技術力と、敵国が本気を出して使ったのであろう莫大な資金を基にしたと思われる高品質な素材の数々。それらの結晶が、


「殿下の手に渡ってしまっていいのでしょうか」


「それは悩みどころだね。誤射とか言って敵対派閥に使うなら目も当てられないけど」


伯爵は王子派閥というわけではない。そのため、王子がこの専用機の攻撃で他の派閥は大打撃を与えることを恐れているのだ。

とはいえ、別に今王子派閥としのぎを削っている公爵派閥というわけでもないので、うまく使うことができれば漁夫の利は狙えるだろうが。


「どうするにせよ、まずは殿下と会って交渉してみないことには決まらないけどね。渡すかどうかなんて所詮は殿下次第なわけだし」


「それもそうですね……小官らも1度隊長たちと合流しようと思いますので、ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ。もちろんだよ。せっかくだし合同演習みたいにして、近くの宙賊の基地でも攻めてみるのはどうかな?」


「構いません。伯爵家の武装関連は部下達にもいい刺激となるでしょう」


この伯爵、同じ逸脱者であるクソダサ発明家のティアとそこそこ仲がいい。というか、実を言うと出資しているのが俺と伯爵の2人だったりするのだ。

俺は個人的にいろいろ作ってもらっているが、伯爵はティアにいろいろと領地で使うものの制作も頼んでいるようだ。伯爵家の持つ戦闘艦なんかは武装にティアの作ったものが使われたりしていて、軍の物以上に強いものも多い。


さすがに技術で負けるつもりはないが、ティアの作った武装の数々が部下たちにとっていい刺激になるのは間違いない。

実際、


「な、なんですかあの威力!?」


「あの小型艦から、うちの主砲をフィネークちゃんが強化したときの主砲と同じくらいの威力のレーザーが出てるんですけど!?」


部下たちは伯爵の部下が操る船の性能に驚いていたな。国に雇われた公務員と、貴族に直接雇われた精鋭との差を感じたようだ。

もちろんそのあとこちらはこちらで高い操縦技術を見せて向こうに負けていないとアピールはしたがな。


『いやぁ~。良い物が見れたよ』


「それはこちらも同じです。参考にさせていただきます」


『ハハハッ。まだまだ上を目指すのかい?怖いねぇ』


伯爵は通信の向こうで笑っている。向こうも見ていて楽しめたようだ。

俺としても普段ストレスの多い伯爵に楽しんでもらえたなら何よりといったところだな。


宙賊を狩ったその後はそのまま王子の下へ向かうのだが、どこか雰囲気は重く暗い。


「………………予算」

「これが、お金の暴力」

「金か!やはり金なのか!!」


テクニックは見せつけたものの、さすがに資金面の差を見せられたのは部下たちも心に来たようだ。かなり落ち込んでいるように見える。


「あのすべての戦闘艦の費用を合計しても、専用機1機分にすら届かないとは思うがな」


「それはそうかもしれないですけど………………」

「結局専用機って1人用じゃないですか!私たち個人が直接恩恵は受けないですし」


かなりの落ち込みようだ。見ていて面白い。

なんていうこともありつつ、俺たちの船はまとまって動き、


「ふぅ。到着ですね」


「ああ。ここが学園だな?」


「はい。本来であれば隊長やダリヤ様が通っている場所になりますね」


学園。それは、フィネークが主人公でセシルが悪役令嬢で、ダリヤが親友となる乙女ゲームの舞台。本来ならフィネークが輝き、高い地位を得るはずだった場所。

この場所を見ると戦いの場所に巻き込んでしまっているフィネークには少し申し訳なさも出てきてしまうが、


「少将?」


「いや、少し小官も何かが違えばここに通っていた可能性があったのかもしれんと思っただけだ」


「なるほど」


俺は幼少期に軍事学校に入ったためこの学園に来ることはなかったし、これからもない。

だが、もし俺が何か抱く危機感や思いつくアイデアが違うものであったのであれば、ここに通っていた可能性もあるのだ。

これでもそこそこ勉強はできるし、魔力量だって一般人から見れば圧倒的。さらには、ほとんどの人間には負けない魔力操作の技術も持っている。

ここに特待生として通うのも全くおかしな話ではなかったのだ。


まったく別の人生を送る自分を考えるのは、少し感慨深く面白い。

たとえそうはならないとしても、まったく別の人間のことを考えてみるというのも面白いからな。嫉妬して現状に不満を持ってしまったりする場合は話は別だが。

なんて少し黄昏ながら、普段はあまり抱かない感情を胸に学園を歩いている時だった。


「あっ!少将!」


「む?訓練生か?どうしたそんなに焦って」


フィネークが俺を見つけ、慌てた様子で駆け寄ってくる。

そしてその口からは、


「た、大変なんです!セシル様と殿下が決闘を!」


「………………決闘、だと?」

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