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3.昔の雰囲気ですけど何か?

雰囲気を出す話なのでテンポは悪いです

奪われた王子が使う予定だった専用機。

それは実際にはドワーフが王子用に作ったものではなく、単純に誰でも使える性能が上がっただけの機体だった。

ただ、それが敵に奪われてしまったのだから話にならない。誰にでも使えるということはつまり、敵にも使えるということなのだ。


その奪われた機体で敵側が戦況を有利に進めたら、必ず敵は大々的にこちらから奪ったものだと公表するはずだ。

それに加えて王子が管理していたなんて言う情報まで流せば、確実に世論から王子は叩かれる。

それは避けたいということで、


「奪還ですか」


「そうだね。本当はもう少し政治の面倒なあれこれがあったりするけどそういうのを無視すればそんな感じだよ」


ということで非常に不本意ながら、俺はあのアホ王子のために敵が専用機を保管しているという倉庫にまで奇襲を仕掛けて奪還することになった。

部下たちにもさすがにあの王子が関わっていた件は伏せなければならず、


「え?軍部大丈夫なんですか?考えられないような失態ですよね」


「専用機を奪われたって………………えぇ?」


信じられないといった顔をする部下達。まったくもって同感だ。軍部がそんなに愚かなミスをするはずがない。

なにせ、本当に軍部のミスではないのだから。


今回の件は軍部のせいということになっているのだが、さすがにその汚名をただで被るのはありえないということで王子が責任逃れのためにさらに責任を押し付けられた財務省とかがかなりの額を支払ったらしい。ゆすられてかなり軍にとって有利な条件を飲まされたらしいな。

そういう意味では軍部にとってメリットのあることだったのだろうが、あまり下手に失敗を重ねると名声に傷がつく。

取らなくてよかったなら取らない方が良かった選択だろう。


「今回は敵を殲滅する必要も、強襲する基地を奪う必要もない。ただ専用機を1機盗んでくるだけの簡単な仕事だ」


「「「「いや、絶対に簡単じゃないと思います」」」」


俺の言葉にジト目とセットの言葉が返ってくる。

当たり前だが、簡単という要素は何1つとして存在しないだろう。専用機の重要性は敵も理解しているだろうし、かなり警備も厳重にしてあるはず。それを盗み出すなど正気ではない。

しかし、俺はまるでそれが聞こえなかったかのように言葉を続ける。


「やることは単純。小官が専用機の置いてある敵の基地に入り込み殲滅して専用機を奪還する。それだけだ」


「いや、それだけと言いましても………」

「その前段階である、少将がいかにして基地に入り込むのかというのが何1つとして決まっていないのですが?」


さらなるジト目が追加される。

しかし、真剣に考えると実際にそうなのだ。どうやって近づくのかとかどうやって俺を基地の内部まで送り込むのかとか、考える必要のあることが山積みだ。

はっきり言って本来はこうして話している時間すら惜しく、決める時間に回さなければならない。


が、


「結局考えてもいつも通りになりますからねぇ」

「だねぇ~。結局そうなるもんねぇ」

「いろいろ考えるけど、あれ以上にならないんだから仕方ないよ」


いつも通り。

といっても、このいつもというのがセシルたちの来る前のいつもの話なんだがな?

どういうものなのかといえば、


「「「「とりあえず突撃して、あとのことはそれから考える!」」」」


である。

脳筋とか言っちゃいけない。

これでも十分今までやってきた中で1番効果的だった戦法、というか作戦なのだ。使えるのだから使うのは仕方のないこと。


「うちの艦隊はその場で対応できるだけの対応力がありますからねぇ」

「まあ、メンバーが多様だから対応できる内容も多様ってことでしょ。たまにごり押しな時もあるけど」

「あぁ~。やったねごり押し。艦隊全体で一切止まらずに前方にひたすら最高速度で駆け抜けたりとか懐かしいよ」

「「「「あぁ~。懐かしい」」」」


部下たちは過去に合った事例の思い出話に花を咲かせている。

どうしようもなくなってとりあえず突撃するしかなくなったのは苦い思い出だな。あの時ばかりは、というかあの時も死ぬかと思った。



「……あっ。そろそろ目標地点です」


「よし。では総員気合を入れろ。仕事の時間だ」


「「「「イェッ、サー!」」」」


さて。

この懐かしい少したるんだ空気を消し去り、真剣に仕事をしなければならない時間が来た。

艦内の空気がガラッと切り替わり、一瞬にして沈黙が訪れる。


「さて、小官はすぐに出られるようにしておくので、あとの判断はすべて任せる」


「「「「イェッ、サー!」」」」


言うことはそれだけでいい。

あとは昔の通り、きっとあいつらがどうにかする。

普段はセシルやダリヤの護衛たちの目もあるから俺が指示を出してるが、本当は俺がいなくてもこの艦隊はしっかりと回るんだ。


「ふむ。忘れそうになるが、あの頃のメンバーがすべてそろっているわけではないからな……」


俺はそんな言葉をつぶやきつつ、専用のスーツとジェットパックを身に着ける。

戦闘が始まったのは、その直後だった。

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