4章 プロローグ
『遅い襲い遅い!そんな攻撃、かすりもしませんわよぉ!!!」
『おや。的はこんなにもあるんですよ?どうして1発も当てられないのでしょうねぇ。1機も落ちることなく全滅しちゃいますよ?あなたたち』
『あっ、隙ありです!!!』
広い宇宙のほんの小さな一角。
そこでは、一方的な殺戮が起きていた。
船は何隻もあった。
だが、圧倒的な技術を持った1機が高速で移動しながら次々と破壊し、高い技術を持った連携を見せる集団が群がり飲み込み、こそこそと物陰に隠れた1機が超遠距離射撃により敵の指揮系統を確実に破壊していく。
まさに地獄絵図だった。
「少将。これはその、あまりにも……」
「これが、圧倒的じゃないか、我が軍は!というやつなんですね」
「いや、我が軍というか、たった3人の者なのだがな?……しかし、圧倒的であまりにもひどいな。敵に同情するほどだ」
小さくため息を吐き頭を抱える俺、ゴトー・アナベル。
小規模から中規模の間くらいの艦隊を率いる俺は、現在戦場に出ていた。しかし、その状況があまりにも一方的で実力と戦場が見合っていないと感じているのだ。
戦っているのは、ほぼ3人だけだというのに。
そう。たった3人なのだ。ドワーフ製の専用機を受け取った3人が戦場で初めて使用している。
まずその1人が、
『やはり専用機は素晴らしいですわぁぁ!!!』
とかお嬢様言葉で叫びながら高速で移動し敵を破壊していく公爵家の少女。セシル。
彼女の乗る専用機はまさに彼女が行っていることから分かるように、機動力と攻撃力に特化した機体であり、特殊能力として彼女が敵のシールドから奪った魔力を機体のシールドに変えることができるという能力を持っている。高い反射神経とテクニック、そして闇属性を持っている彼女だからこそ使いこなせる機体だ。
カラーリングは赤で、荒々しい豹族のような見た目の機体となっている。本人は赤猫と名前を付けていたが、それは何か違う気がした。ラーメン屋やってそうなどとは言ってはいけない。
そして次、
『どうしたんですか?たった10機ですよ?あなたたちより少ないんですよ?どうして1機もまともに攻撃できずに全滅しそうなんでしょうか?』
落ち着いた敬語でめちゃくちゃ煽りながら遠隔で専用機の集団を操作し敵を飲み込み破壊していく俺の国の第6王女、ダリヤ。
彼女の機体は彼女が直接機体に乗らず遠隔で操作するため、コックピット部分も詰め込むことができる。
そうすることで通常よりも多くスペースを使えたためその分スペックが高くなり武器を乗せられている。特殊能力などは特にないが、専用機の専用武器であるシールド破壊用のパイルバンカー的な何かは特徴的だ。彼女の持つ遠隔による複数操作の技術がなければ、まともに使うこともできない。
全て性能も外見も統一されており、カラーリングは黒で蜂のような見た目をしている。群がる蜂は危険で恐ろしいものだな。蜂を操るダリヤはさながら女王バチ。
そして最後。
『見つかってないですよね?怖いんですけど!………………あっ。その動きは丸見えですよぉ!!』
緊張しつつも超遠距離からレーダー探知範囲にすら本来入っていないはずの敵を撃ち抜いていく3人の中で唯一の平民の少女、フィネーク。
本来乙女ゲームの主人公となるはずだった彼女の機体は、そんなこととは裏腹に待って待って待ち続けて遠くから敵を撃ち抜くようなものになっている。機体自体の性能はほとんど他の戦闘機体と変わらず。違うのは超遠距離にまで届く巨大なレーザー武装を持っていることくらいだ。
持ち前の強い光の魔力で広いレーダーによる探知力と超射程の武装のコンボで、敵に発見されることなく遠距離から一方的に攻撃できるのだ。彼女のような光の魔力を持ちさらには魔力量が多くないと使えない。
カラーリングは金色で、ヒヨコのような見た目となっている。強力なレーザーはヒヨコのくちばしの部分に入れ込んで使うのだが、その姿がなかなかにシュールだ。
この計3人の専用機が、敵を一方的に蹂躙していた。
主にセシルが切り込み、フィネークが指揮するものを消し、ダリヤがその混乱に乗じて敵を飲み込むという戦い方になっている。
「強いのだが、逆にピーキーすぎるところはあるか」
「そうですね。こういった3人のみや我が艦隊のみでどうにかできる規模の敵なら強いですが、あそこまで性能がピーキーだと他の艦隊などとの連携は難しそうですね」
強いのだが、強すぎる。
それが俺たちの艦隊に新たに加わった戦力の評価だった。
またなんかこの作者が新作を今夜(2023/12/2)くらいに出すらしいです。
こっちはローファンタジーの悪役令嬢系で、誰にでも読んでいただけるものにするとかなんとか………




