3章 エピローグ
「実は前回任務に出てきた時から違和感を感じていたのですが……」
俺は王子へ探りを入れた。
今回俺が戦った襲撃者に関しては全く知らないようだった。だが、
「んっ、そ、そうなのか?まったくわからないが、気のせいじゃないか?」
あまりにもあんまりなくらいにあからさまだった。
確実に王子が前回の敵艦にかかわっていたのは間違いない。少し王子にも焦りが出てきているのかもしれないな。
「そうですか。そうだと良いのですが……しかしデータで報告は致しましたが、敵の新型の兵器は厄介です」
「そうなのか?」
「ええ。船内の魔力を乱すといった効果を持つものや、照明を強制的に落とすものなどもありましたので」
「ふむ。よく分からないが、そこは軍部の問題だろう?こちらに言われてもな」
「ええ。そうですね。しかし、今回の件もありますし何かと殿下にはお気を付けいただきたく」
「分かっている」
表情や声色から判断する限り、王子は具体的な敵の兵器の内容までは理解していないようだな。作戦立案は配下がやったのだろう。
さて、こうして王子から多少情報を引き出したので今度は、
「お久しぶりでございます。公爵様」
「うむ。久しぶりだな」
公爵の方にも接触。
今回の襲撃の詳細と王子に探りを入れた感想を報告する。
「ふむ。殿下のことに関しては潜らせてる部下と内容は変わらないな。そういう流れで間違いはないということか」
公爵の方も王子関係は情報を仕入れているようで、俺の情報は真偽を確かめる要素の1つ程度にしかならなかったようだった。
とはいっても、そういう真偽を確かめられる情報というのも大切なものではあるがな。
「しかし、地上特化殺戮兵器と呼ばれる貴様でも難しい相手か」
「はい。かなりの練度でした。あれを相手にする場合、現在我が国にいる地上戦に特化した兵が何人いたとしても傷一つつけることは難しいでしょう」
「そうか……」
王子と同じく、公爵も今回の襲撃者に関してはかなり恐れを抱いているようだ。
実際かなりの脅威であることは間違いないからな。俺も2度目にあの閃光手榴弾の情報を知られたうえで戦うとなれば今回以上に苦戦するのは間違いないだろう。
ひたすら中距離戦をされ続けたら魔力切れで勝ち負けを決めるしかなくなる。
「ふむ。対処法がないとはいえ脅威があるとわかっただけでも十分。情報を提供した貴様には後日改めて褒美をやろう」
「ありがたき幸せ」
公爵は褒美をくれるらしい。当り前のようにしていた王子とはやはり違うな。付くなら公爵側だろう。うん。
………………まあ、嘘だがな?俺は利益になる方につく。
「しかし、我が娘に専用機で流れが来たかと思えば新たな脅威か。世の中うまくいかぬものだな」
「私ごときが申すことは不敬かもしれませんが、心中お察しいたします」
「ふむ。別に不敬などとは言わん。が、貴様の方がこの2つに関しては苦労が多そうにも思うのだがな」
公爵は薄く笑みを浮かべながら俺へそんなことを言ってくる。
確かに俺は襲撃を受けた人間であることに加えて、3人も専用機持ちがいる部下を指揮していくことになる。今まで以上の活躍が期待されるのは間違いないだろう。
「小官のできる限りのことはしてみるつもりです」
「ふっ。そうか。せいぜい我が娘の命は守るように」
「もちろんでございます」
お互い目を見据え、会話が終了する。
その後は俺の疲れて凝り固まった体を伸ばしつつ、民間の輸送艦に乗る、それでいつも通りのところに移動すればストレス発散も兼ねつつ、
「消え去れ。宙賊ども」
宙賊狩りだ。
かなりいろいろと起きて時間を食われたが、ティアの改造を受けた愛機の動作確認も必要。シグマが先に使用していたためその感想なんかも聞きつつ、俺は疲れを抜いていった。
「……今度、あいつらの対策のために新しい武器でもティアに作ってもらうか」
『それが良いかと思われます。もちろん、魔法技術のさらなる飛躍を求めてあの方々に会いに行かれてもいいかとは思いますが』
「あぁ……いや。あいつらに会うのはまだいい。どうせならがっつりやりたいし、もっと本格的な長期休暇が取れてからにしたい」
『なるほど。では、やはりティア様に頼るのが1番でしょう』
シグマにも賛成されたので、さっそくティアへ作成依頼のメッセージを送る。
そして、それと同時に思い出すのは出会ったころのティアの姿だ。あの頃は仲間を殺されたにもかかわらず平然としていたため違和感を感じていたが、今なら納得できる。
あいつは、天才であると同時にプライドが高かった。だからこそ、自分が思っているほどかそれ以上の価値を感じている人間にしか心を開けない。
「あいつも不器用だよな」
『……ほぼ変わらないかと』
「誰とだ?」
『………………』
シグマは沈黙した。
いったい誰のことを言っているんだろうな?もしかしたら不具合かもしれない。
『他人のせいにして逃げないでいただきたく』
「お前は人じゃないからセーフだろ」
『その手の言い訳は自身が不利であると自覚している時に言うものですよ』
シグマが何か言っているが、無視する。それよりも大事なのは、ティアのことだ。
あいつはまだまだ上に行ける。だが、だからこそ俺はあいつの価値を認め、ほめて、隣に立とうとしなければならない。
いつまでも、あいつの支えであり続けてやりたいからな。
これで3章も終わりです。
ランキングからも外れるようになりましたし、あまり急いで書く必要もないので次の章まで少しお休みを……と思っていたのですが、専用機やら乙女ゲームっぽい展開やら忘れないうちに書きたいので明日から4章開始します。
引き続きよろしくお願いします。




