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36.出会った時も襲撃ですけど何か?

ティアシー視点です。

風と闇がぶつかり合い、激しい衝撃が伝わってくる。

そのたびに僕の髪がなびき、周囲の者が吹き飛んだ。


難しい顔をしながら戦うゴトーを見る中で、僕が思い出すことは1つ。

それは、彼との出会い。

あの時もまた、襲撃を受けていた。


「……おいガキ!パーツもってこい!」


「は、はい!すぐに!」


幼少期の僕は、小さな修理工場で働いでいた。

そこは主に違法なパーツなどを取り扱うお店で、よく宙賊の船の修理や改造なんかも請け負っているところになっていた。

でも、違法だとしても僕が生きていくのには必要な場所。そして、技術を学び、僕の考えを実現するのに最適な場所だった。


お世辞にもいい給料とは言えなかったけど、同年代の子供が行う細かい仕事よりは圧倒的に専門的で儲かった。それに、そこの人間であるからこそある程度安全は保たれていた。

でも、


「しゅ、襲撃だあああぁぁぁ!!!!」

「傭兵だ!あのクソったれな傭兵どもが来やがった!!」


ある日工場が宙賊を狩ることを生業にした傭兵たちに襲撃され、一瞬にして崩壊した。

しかも工場だけじゃなく、周辺のちょっとした悪いことをする人たちの集まる場所まで次々に襲い掛かり破壊していく。多少罪があれば、容赦なく子供であっても殺害された。

僕も当然違法な整備なんかもやってたから、見つかれば命がなくなるのは間違いないこと。

そう思っていた時に、


「おい。逃げるぞ!」


数人の集団が僕へ声をかけてきた。

逃げる、とその時は言っていたけど、実際は逃げるのではなかった。

逃げる場所もないため、


「最後の抵抗だ。力のねぇ市民どもから根こそぎ奪うぞ」


「「「「うおおおおぉぉぉぉ!!!!!」」」」


そこまで近くはないけど、僕たちは市民の住む地域へ襲撃を仕掛ける。そして、できるだけ奪えるものを奪って、姿をくらます計画。

だったのに、


「……来るとは思ってたけど、貧弱そうだな」


「あぇ?」


民間人の居住区域の入り口にぽつんと佇むたった1人の少年。いや、少年というにもあまりにも若すぎる男児に。一瞬にして半数以上が命を奪われた。

その時は分からなかったけど、やったのはただ魔法で気圧を高めて頸椎を砕いただけらしい、

でもその時には訳も分からず、その恐ろしい事実に皆が震えあがった。

だけど、それでも僕は、


「これでも、くらえぇぇぇ!!!!!」


僕には自信があった。

これでも何年も機械には触ってきた。船を修理する中で時には武器だって修理したし改造した。そこでの改造で戦果が上がった宙賊も大勢いたって聞いたし、僕も実力がついていたのは間違いなかった。

だからこそ、僕なら通常の武器だって改造すれば人1人くらい余裕で消し飛ばせるものを作れると思っていたのに、


「ん?随分と威力が高いな」


「え?き、効いて、ない?」


彼の体には傷1つなく。彼の周囲をなぞるようにして地面がえぐれているだけ。

呆然とする僕をよそに彼は魔法を使い、残った人たちを全員気絶させ。そのまま動けない僕へ近づき、


「なぁ。これ誰が作ったんだ?」


彼へ使った銃の制作者を尋ねてきた。

その時の僕はいろんな勘定で頭がごちゃごちゃになっていたけど、


「ぼ、僕」


製作者としてのプライドなのか。自分が製作者であることを僕はしっかりと示した。

彼は僕の返答を聞き一瞬目を見開いた後、


「ほぅ。面白い。良い拾い物かもな」


悪そうな笑みを浮かべてから僕の腕をつかんだ。

暴力が振るわれるのではないかと身構えた僕だったけど、いつまでたってもその様子はない。それどころか、


「よし。お前にはこちら側へ来てもらおうか」


僕の体を優しく抱き上げ、空を舞った。


「何?僕を警察にでも突き出すつもり?」


「あぁ?そんなわけないだろ。警察に突き出すよりあそこで始末したほうが手っ取り早い」


「ま、まあそうかもしれないけど…でも、僕に犯罪歴がある場合僕は奴隷落ちになってその売り上げの何割かが君に行くんじゃないのかい?」


「はっ。いらねぇよ。そんなはした金。お前みたいなちっちぇちんちくりん売ったところで大した額にはならねぇっつうの」


「なっ!?僕はちんちくりんなのではないよ!」


そんなことないだろ、と笑う彼の顔はとても輝いて見えた。僕は何とも言えない不満を感じつつ、小さな彼の腕の中へと少し強く抱き着く。

僕はその日、たくさんの名前もしらない後ろ暗い仲間たちを失い、代わりに1人のパトロンを得た。


まあ、そのあともう1人貴族のパトロン様にもあったりしたんだけど、それはまた別の話だね。

あの時は仲間を殺された恨みがなかったわけではないけど、でも今僕にそんな気持ちは一切ない。それほどまでに僕の心は研究というものにとらわれて、人間関係という者への関心が薄い。僕はどこか間違いなく、壊れてしまっている。

でも、そんな僕でも彼にはあの頃の仲間たちへの気持ちとは比べ物にならないほどの気持ちを抱いている。きっとこれは研究で消え去ることはない気持ちだと思うし、そうであってほしいと思っている。


僕だって、彼の教えてくれた気持ちを失ってしまうのは寂しいから。

ティアシーは人間関係に関してかなりドライなところがあります。が、襲撃の際に失ったものに関して何も感じていないわけではありません。そのため、ゴトーには何も恨みがないものの………………


あと、ゴトー君がめちゃくちゃこのころから風魔法がうまい感じになっていますが、実際は狙いを外しまくってますし、気絶させるつもりが殺しちゃってるのも結構います。

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