14.悪役無双ですけど何か?
セシルに無人機の破壊を頼んで、長官はどうなると考えていたのだろうか。
俺はモニターに映る映像を見ながら、そんなことを呆然と考える。
「隊長は相変わらずですねぇ」
「俺がこの艦隊指揮したとしても負ける未来しか見えないな」
「……セシル様、こんな凄かったんだ」
モニターに映る映像、つまり宇宙を縦横無尽に飛び回り無人機を破壊していくセシルの映像を見ながら、部下達はそれぞれの感想を口にする。フィネークも仲の良いセシルがここまでの強さを持っていたことは知らなかったので、唖然としているな。
「仕事に集中しろ。隊長から少し離れた位置の無人機に攻撃を行なえ」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
俺はモニターを見ている部下達に指示を出し、砲撃を開始させる。無人機に付いている武装と比べて明らかにこちらの砲門の射程の方が長いので、一方的に敵を沈めることができた。
「隊長様の目標が500体だから、400機ほど倒した段階で進めれば良いか」
「……そうなりますと、約3分ほどで開始すれば良いかと思われます」
「了解」
俺の考えを聞いた部下が、今の殲滅ペースから計算して良さそうな開始時間を教えてくれる。それが出たら後は、
「総員、3分後突撃する予定で行動しろ。ただし、緊急に動けるように警戒は怠るな」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
待つ間、砲撃で無人機を溶かしていく。かなり敵の厚みが減ってきた。
俺の乗っている艦の砲撃をよく観察してみると、少し以前よりも太くなり、届く距離も伸びて貫通力も上がっている気がする。おそらくフィネークが光属性を持ってるからレーザーが強化されてると思うんだよな。主人公だから魔力の強さもかなりあるし。
計測したわけでは無いから正確なことは言えないが、5%程度の強化が行なわれてると思うぞ。
俺がなんとなく感覚で強化を感じていると、
「……突撃開始10秒前、9,8,7,6,5…………」
突撃の時間が近づいてきた。通信担当がセシルの方にも連絡を入れているな。
「……4,3,2,1,全艦、発進!」
進む合図が出た。艦隊が進んでいこうとするのを感じ取った。
だからこそ、俺はこのタイミングで、
「道を開くぞ!砲撃も行なえ!!」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
俺の指示に従い、艦隊は多くのレーザーをまき散らしながら進んでいく。俺たちの仕事はこの無人機がいる場所を超えた先まで道を作ること。
できれば無人機を生産している工場がどこかにあるはずだから、それも破壊したいな。そんなことを思いながらセンサーの方に目を向けてみる。
当然ではあるがそういった反応は見られなかった。この近くでは無いのか、それとも隠密性能が高いのか。
「敵無人機、数が減少し始めています!生産力が追いついていないようです!」
「ふむ。ではこの艦の副砲を2つ切って、センサーの探知範囲を広げろ。敵の無人機生産基地を探せ」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
丁度良いことに敵の数が減ってきたようなので、俺の乗る艦の攻撃の数を減らした。そして、生産を行なっている場所を探す。
おそらく生産工場を破壊すればこの艦隊としての成果が認められて隊長であるセシルに勲章が与えられると思うんだよな。
「……あっ。隊長の撃破数が500を超えました!」
セシルの勲章のことを考えていたら、丁度セシルが無人機を必要数である500を倒し終えたとこだった。俺はすぐに部下に、
「隊長にその連絡を送っておけ。此方に戻って来るかどうかは隊長の判断次第だ」
「イェッ、サー」
セシルに連絡を取る連絡係がやる気無さそうに返事をする。連絡係なんていっているやつは、役割はオペレーター見習いのような立ち位置だ。まだ外に連絡を取るには色々と足りないため、同じ艦隊の人間と連絡を取らせることで鍛えている。
連絡を送り終えた連絡係は、
「隊長はもう少し外で活動するそうです。邪魔になる可能性もあるのでしばらくは戻らないとのことです」
「了解」
セシルは戻ってこないらしい。このまま無人機1000機倒して、もう1つ上の勲章を手に入れる可能性もあるな。
問題は前回もあったエネルギー切れだが、
「隊長の機体の残りエネルギーは?」
「武装のエネルギーは60%残っています。飛行時間の方はまだ80%台です」
此方も問題無さそうだ。まだまだ集中力の方も見た限りは問題なさそうだし、放っておいて良いだろうな。俺たちは攻撃が間違えて当たったりしないように気をつけながら無人機を減らすとしよう。あと、工場の探索も。
「あ、あの」
俺がレーダーの反応を見たり艦隊の状態を確認したりしていると、1人、俺に声をかけてくる者が。
それが、
「訓練生か。どうした?」
訓練生。この艦隊にいる訓練生はたった1人であり、それはフィネークである。フィネークは本来ブリッジでは無く他の場所で働くはずなのだが、訓練生と言うことで訓練の一環としてブリッジの中に今回入れている。
そんな彼女が声を上げたことで部下の数名は眉をひそめるが、
「あの。私、工場っぽいの見つけました」




