31.罠を発見しましたけど何か?
昨日あげられなかったので、今日はできるのであればもう1話投稿します!
「……これで戦闘員は全員か。ではこれより、敵艦へ乗り込む。続け」
「「「「イェッ、サー!」」」」
魔法を使うために集まってくれていたおかげで、敵の多くの戦闘員を無力化する作業はすぐに終わった。後は敵艦内部を制圧すればいい。
風魔法で俺は部下を置いていくほどの速さで移動し、敵艦内部へ侵入。
「ふ、ふざけんなぁ!そんな化け物と戦ってられるかぁ!」
「全滅!?な、なんだよそれ!ありえねぇだろ!!」
あちこちから怒鳴り声のようなものが聞こえてくる。
戦闘員らしき格好ではあるのだが、誰も俺に近寄ってこようとはしていない。自分たちがこの段階から戦うことになるとは思っていなかったのだろう。
魔法を使っていた者たちがこんなに速攻で倒されるのは予定になかったはずだ。というか、そうそうあり得ることではない。
予想外過ぎて頭も追いつかないし、俺がいかに脅威であるかも理解できない。だからこそ、
「隙だらけだ」
「え?……あ、ぐぁ!?」
瞬時に俺によって始末されてしまう。敵が一切俺に気づかないし攻撃もしてこないしで、俺は一切速度を緩めることなく敵を片づけることができている。
目指す先は、この船のブリッジ。まずは何かしてこの船が自爆など脅威になることをしないようにそこは制圧しておく必要がある。
その後に各種制御室も制圧するのだが、
「撃てえええええぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
「「「「うわああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」
「さすがにここは俺に気づけたか」
ブリッジ内では多少抵抗があった。俺に銃を向けた者達が、雄たけびというよりは悲鳴に近い声を出しながら発砲してくる。
空気層の密度を変えることで光を屈折させるので射撃が俺に当たることはないが、道中とは違い足を止めることになったのは確かだ。とはいっても一瞬のことであり、瞬時に制圧は完了される。
「……データを削除された様子もなし。とりあえず取得だけして制圧を優先するか」
この船の中のデータを確認する。
本当に敵が優秀で愛国心や仲間への重たい思いがある場合はデータがすべて削除されていたりするのだが、そういった様子もない。そのため充分にデータは取得できそうであった。
専用の機材にデータをインプットさせつつ、俺はまた別の部屋へ向かう。
「……で、またこの気配」
俺は頬を引きつらせる。
いくつかの制御室をすでに制圧して機能停止させてきた後なのだが、今回入った制御室の制御装置に嫌な予感がした。
予感なのだから理由などない……ということも今回はなく。俺はこれを脅威だと考える明確な理由があった。それが、
「似てるな。あの罠にそっくりだ」
あの罠。
いくつか最近も罠は敵に仕掛けられたが、その中でも比較的新しい罠だ。さすがに自爆した敵の機雷というほど直近ではないが、これはまだ記憶に新しい。
個の魔力の感覚が、フィネークを現属国の基地から助け出すときに発動させた罠に似ているのだ。あの、何が起こったのか理解する前に吹き飛ばされていた罠である。
「これも同じタイプか?」
俺はいぶかしむ。
さすがにまた触れてみる気にはなれなかったので、近くに落ちていた工具のようなものを投げてみた。すると次の瞬間予想通り、
シュツ!
「……やはり闇属性の魔法。罠だったか」
まあ分かっていたから何も問題はない。他に似たような反応もないし、これだけで終わりだ。
………ただ、唯一懸念があるとすれば俺がこの船に入っていることが伝わっていることだな。罠であるこの魔法、発動したと同時にその発動を罠の主に伝えている可能性がある。
つまりそれは、俺の乗りこんでいるこの船が逆に襲われているとわかるということ。
「さらに対応策を考えられている可能性も視野に入れるべきか」
敵国と、おそらく王子派閥。この2つが手を組んで俺たちを消しに来ている。
どの程度動く敵がいるのかは分からないが、安全性を保つ必要があある。すぐにでもここから離脱して、何かしら対応を取らねけばいけないな。
「次の部屋まで制圧すればすべての部屋を制圧したことになる。その後はデータを抜き取り次第脱出するぞ」
『『『『イェッ、サー!!』』』』
部下たちには撤退を今のうちに伝えていく。部下たちはもう1部屋制圧してもらうことになるのだが、俺の方が担当するものはすべて終わったので支援もできる。対して問題が出ることはないはずだ。
だからこそ俺はあるていどそちらに意識を割きつつも、ブリッジへと戻る。
「あと数分もしないうちにデータ取得は完了か」
まだすべては終わっていなかったが、残り時間もわずか。
ということで、俺は少しそちらのデータに目を通しつつ終了を待つ。そうしていれば部下たちの方も、
『制圧完了しました。取れそうなデータを取れ次第すぐに撤退します』
「了解した。気を抜かないようにしろ」
『イェッ、サー!』




