25.支配されてますけど何か?
「敵の動きに変化が見られます!」
敵が戦い方を変えてきた。それは当然のこと。新人たちが取り残されそうになっていて、激しく攻めれば落とせそうな状況なのだ。逆に言えば、俺たちからすれば落とされそうな状況。
辛いものがあり、
「砲撃の支援だけで足りるか?」
「時間は稼げますが、流石に足りません。それ以上の何かが必要になるとは思います」
「そうか…」
足りない。どうしたって手が足りない。
できる限りのことはするが、
「どのくらい保てそうだ?」
「5分保てばいい方だということです」
「5分……こちらの合流に必要な時間は?」
「15分です」
「………………そうか」
熟考したが、思いつかない。この船で、新人たちを助け出す方法が。
とはいえ、あきらめるなんてことはしない。確実に、
「敵が薄い場所を集中的に狙って支援しろ!少しでも包囲から抜け出しやすくなるように支援するんだ!」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
部下たちも気合を入れ、いつも以上に集中して確実に新人たちの逃げ道を作ろうとしている。
が、それでもたかが数隻による支援では、大量に出てくる敵に与える損害等ほんの僅か。
減らす数より増える数の方が多い。
「この流れのおかげで他のグループは格段に動ける範囲が増えたとのことではありますが……」
「そうか……」
それはいい事でもあり、悪い事でもある。
任務的に見ればかなりいい事だろう。動きやすいならそれだけ沈められるスパイの数が多くなる。
だが、新人たちの救出という点で考えれば非常に悪いことだと言って良い。なにせ、スパイたちを沈める必要があり、新人たちの支援をしている暇がその船らにはないのだから。
「っ!被害の報告です!一部冷却装置が機能停止!シールド出力が一時的に大幅低下したことの影響だということです!!」
「ついに、きたか」
出てしまった。被害が、
新人たちが乗る船のうちの一隻。それのシールドが恐らく敵の攻撃によるものと思われるもので一時的に弱くなり、そこでシールドを突破してきた攻撃により機体損傷。被害も大きくはないしそこまで重要な個所が破壊されたわけでもないが、これによる衝撃は間違いなく大きい。
傷ができるというのは、間違いなく焦りにつながる。
「っ!敵小型艦の主砲が直撃!シールド出力が20%まで低下しています!」
焦れば焦るだけ被弾は増える。
そうなると、余計に焦り、さらに対応がマズくなっていく。
そして、焦るのは新人たちだけではない。
そんな状況を見せられてしまえば、支援するこちら側もまた焦る。焦れば砲撃の精度も落ち、さらに新人たちは追い込まれていくことになる。
「マズい流れですね」
「ああ。だが、打てる手はこれしかない。我々にできることは今まで通りのしごとをすることだけだ」
「……はい」
部下たちは悔しそうな顔をしている。
だが、さすがにこの船に乗るやつらは長年俺についてきただけはあり集中力を落としたりはしない。着実に敵へ攻撃を命中させている。
ただそれでも間違いなく、圧倒的に足りていない。
食物に群がる蠅のように敵艦が新人たちを包囲し接近し、仕留めようとしている。
シールドを削られ破られ新人たちの乗る船は少しずつ傷を増やしていき、
「敵大型艦の射程に入ってしまっています!」
「すでに敵艦は発射用意完了しており、逃れられません!」
かなり粘った。5分と予想されていたが、それでも8分は逃げた。
だが、それもここで終わり。敵に追い込まれ強力な砲撃の餌食となり。消し飛ばされてしまうのが誰にでも予想できた。
「敵主砲、発射されます!」
新人たちは、確実に覚悟しているだろう。自分たちの死を。
敵艦の主砲から光があふれだし、新人たちの乗る船へと伸びていく。
だが、
「間に合った、か」
「はい。ギリギリでしたね」
本当にギリギリのところで、間に合った。
敵艦はシールドを失い、主砲で爆発を起こしていた。撃とうとしていた主砲にたまっていたエネルギーが、突如来た外部からの攻撃により爆発を引き起こしてしまったのだ。
それを行なったのは、
『ふぅ。焦りましたわ』
「さすがは、隊長ですね」
たった1機の戦闘機体。それに乗るこの艦隊の隊長である少女、セシルだ。
たった1人だが、ぎりぎりのタイミングで新人たちを狙っていた敵艦の主砲を破壊。新人たちを見事守って見せたのだ。
さらには、
「み、見る見るうちに敵艦が沈んでいきます!」
周辺の敵を無力化していく。
敵が密集している今の状況は、セシルにとって最高の狩場なのだ。空気(真空だが)を完全に支配している。
これにより、状況は完全に回復。新人たちはかなり安全にその場から逃れていくことができた。
敵もおっていこうとはするものの、次々とセシルに沈められていく。勿論セシルを避けようとする船もいるが、そういうのは率先して俺たちの支援砲撃でつぶしている。
そのため、
「合流、完了しました!!」
1隻もかけることなく、どうにか艦隊は合流を成功させた。
今回はセシルの株がうなぎのぼりだったな。




