表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/244

9.心を折らないため大変ですけど何か?

「訓練生。暇ならば、少しでも戦闘機体の運転に慣れてもらおうか」


「え?あっ………………そ、そういえばそれがありましたね!すぐに準備してきます!!」


今の今まで忘れていたようで、焦ったような表情を浮かべて自室へと走っていった。俺が休暇で艦隊を離れる時には戦闘機体に乗れる部下数人から熱心な指導を受けていたはずだが、まさかすべて忘れているということはないよな?

色々心配だ。


「では、私もお手伝いしましょうか」

「私もお手伝いしますわ」


フィネークの訓練に、友人2人も協力を口にする。

ただ、この2人って参考になるかといわれると微妙なところなんだよなぁ。セシルの場合は幼いころからの英才教育のたまもので体に染みついた動きというのが多いようだし、ダリヤの場合は運転方法自体が違うんだ。


「ご協力いただけるのは大変うれしいですが、心を折ってしまわないようにお願いします」


「あ、あぁ。そうですわね」

「気を付けます」


燃えていた2人の勢いが少し弱まったような気がする。かなり全力でやるつもりだったんだろうな。事前に注意しておいてよかった。

この2人が本気でやるとたいていの初心者は心が折れると思うぞ?手伝いというのがどういうものかは分からないが、手本を見せるなら化け物過ぎてできるわけないし、敵となるなら練習にもならずに瞬殺されるだろう。


「………も、戻りました!」


数分後、フィネークが走って戻ってくる。これから訓練開始だ。

まずフィネークは戦闘機体に乗るわけだが、通常の戦闘機体をどの程度動かせるのかもわかっていない。ということで、シミュレーション用の機体に乗ってもらい、


「まずは起動から出撃までの一連の流れを行ってもらう」


「は、はい!」


「そこまでは教わっているな?」


「は、はい!先輩にも教わりましたし、学校でもちょっとやりました!」


「ならいい。早速やってみてくれ」


ということで、フィネークの運転が始まる。

戦闘機体の電源を入れ、各種必要な設定を行ない、誘導に従って指定の位置まで移動して、船から出ていく。そういった一連の流れなのだが、


「で、出ました!どうですか!!」


「「「う、うぅん」」」


誇らしそうに宣言するフィネーク。

だが、俺、セシル、ダリヤの3人はそろって首を傾げた。正直に言って、かなり微妙だ。確かに操作して出ることはできたんだが、


「システム的な評価はGですね」

「最低評価ですわね」

「ま、まあ、評価外にならなかっただけ良いんでしょうけど」


そんな感じの評価だった。

誘導係には激突するわ、壁や天井にあたりまくるわ、指示された方向から逆走するわ。本当にひどい形での出撃となった。

出撃前に味方への被害が出過ぎている。


「とりあえず、方向感覚をつかんでもらう必要があると小官は思うのですが」


「そうですわね。同意しますわ」


「私もそれが大事だと思います。訓練を続ければパニックになるのは自然と収まっていくと思いますし」


ということで、その後ひたすら訓練させまくった。

やっぱり慣れっていうのが大切なんだよな。こまめに休憩をはさみつつ数時間訓練を続ければ、


「ほらほらぁ!当たりませんわよ!」


「え、えぇ!?それ避けるんですかぁ!?」


とりあえずある程度動かせるようにはなった。現在はセシルを的にした射撃練習を行っている。セシルもシミュレーターを使っているのだが、並んで運転している姿を見るとやはり大きな差を感じる。

セシルの方が手がスムーズに動いているし、迷うそぶりが見られない。フィネークの場合は、どれをどう触ればいいのかと混乱して手が何も触れていない状態で細かく震えているんだよな。


「まだまだ戦場に出られるようになるには時間がかかりそうですね」


「そうですね」


ダリヤのつぶやきに俺はうなずく。

もう少し慣れてくれば実際にリアルの戦闘機体を動かさせてみてもいいかもしれないが、実際に戦場に出てもよくなるには長い時間がかかるだろう。

言ってしまうと、


「専用機が届いた後も乗れない期間があるかもしれないですね」


「あぁ~。ありえそうです」


残念だが、宝の持ち腐れになってしまうだろう。そうならないためにも、というかさせないためにも、フィネークには頑張ってもらわなければならない。

まあ、だとしても、


「な、なんでダリヤ様にも当たらないんですかぁぁぁぁ!!!」


「それはダリヤがうまいからですわ」

「そうです。セシルよりは劣りますが、これくらいはできますよ」


あの化け物2人を練習相手にするのはやり過ぎだと思うけどな?完全に選ぶ相手を間違えてるし、フィネークもあまり成長を実感できるとは思えないな。

ここは、


「お二人とも、射撃ばかりですと方向感覚を鍛える訓練には物足りないものがありますので」


「あ、あぁ。そうですわね」

「じゃあ、訓練メニューを変えましょうか」


心が折れない内に訓練メニューを変更させた。

休日に行うただの訓練なのだから、もう少し心に優しいものにしてほしいな。フィネークは友人たちからも不遇な扱いを受けるようだ。

乙女ゲーの主人公って、そういうものじゃなかった気がするんだけどなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ