8.艦隊に戻りますけど何か?
数週間、予定を追加して俺は宙賊どもを狩り続けた。おかげで情報も報酬もがっぽりである。とはいえその分、疲労もいつもより大きいがな。
ちなみに、2人目のドワーフに遭遇することはなかったぞ。俺は非常にそれにはほっとしているな。最悪2人目は見捨てる選択肢も考えていたから。
「はぁ~。やっと戻れるか」
『そうですね。なかなか時間がかかりましたが、ここまでやればデータに不足があるということはないでしょう』
「まあそうだが………試作品の試験で使う時間ではないな」
割と無駄な時間を使ってしまった。急いでこれからティアの工房へ帰るぞ。本当に気疲れした。
そしてこれからティアの機嫌を取ると思うと、
「………………」
「ティア」
「………………」
「拗ねてるのか?」
「………………ふんっ」
面倒くさい。本当に面倒くさい。
拗ねるのは分かっていたが、この少し疲労感がある状態で相手するのはだめだ。
が、それでもここでこちらが怒っても意味はないからな。こいつも大事な逸脱者の1人なわけだし。面倒くさいが、それでもどうにか耐えて、
「ほら。ドワーフが作ったタイヤのデータを持ってきたぞ」
「………………」
無言でそっぽを向いているティア。
だが、やはり気になるようでぴくぴくと体が動いている。この様子を見ると、少しだけストレスが抜けていくような気がする。
クソダサといえどかわいいものはかわいいのだ。
「ついでに作成時の映像もあるんだけどなぁ」
「………………」
もう興味を隠す気ないだろうというレベルで体が反応している。ちらちらと俺の方を目で確認までしてきだしたぞ。
ここで最後の一押しに、
「せっかく持ってきたんだが、いらないっていうなら捨てるしかないよなぁ」
「………し、仕方ないな。ゴトーってば。そんな貴重な品を捨てるのももったいないし、僕がもらってあげるよ。価値の分からない人に捨てられるなんて、本当にもったいないことだからね。うんうん」
本当に仕方ないといった風にうなずきながら、俺の手から素早くデータを奪い取るティア。ついでにシグマからもデータをもらってるな。行動が素早いことだ。
「じゃあ、俺は疲れたししばらく休ませてもらうぞ」
「了解。船の改良もしておくから、楽しみにしておいて」
ティアはいい笑顔でそんなことを言ってくる。船を点検して改良してくれるのはうれしいことだな。
非常にうれしいことなのだが、
「あぁ~。………そろそろ休暇終わるし、乗るのは次の休暇の時になるかもな」
「………………え?」
唖然とした表情をするティア。
その後、また拗ねたティアを慰めることに時間を取られたのは言うまでもないかもしれない。その日の柔らかいベッドは、いつも以上に体にしみた。
そんでもって次の日。
予想以上に時間を取られてしまった俺はそろそろ帰らなければならず、
「じゃあ、またな」
「うん。またね。次に船に乗ったときは、驚くことになると思うよ?」
「驚かせるな。戦闘中に驚いたら危ないだろうが」
「ぶぅ~。ゴトーってばやっぱりわかってないんだから」
適当に言葉を交わし、俺たちは分かれる。また会うのはかなり先のことになるだろうな。
どうせ会えないのなら今のうちに、
「これとこれ貰ってっていいか?」
「え?あ、うん。いいよ。効果は真逆だけど大丈夫?」
「ああ。それは理解してる」
工房で見かけた指輪と手榴弾をもらっておいた。
使いどころがあるかは分からんが、欲しいものは忘れないうちにもらっておいた方が良いだろう。
そうして、新たな装備も手に入れて、
「………あっ。少将!」
「お久しぶりですぅ~!」
「久しぶり少将!元気だった~?」
艦隊に戻る。
数人の部下たちが出迎えてくれたな。見たところ、セシルやダリヤの姿はなさそうだ。護衛が確認できないし。
「いろいろとやる前に、今いるメンバーを教えてくれるか?」
「あっ。了解だよぉ。今いるのはねぇ………」
とりあえず戻ってきているメンバーを確認しておく。それから、メンバーが戻ってくるのを待ちつつ部下たちを数日相手して過ごした。
そうしている間に他の部下やセシルたちも戻ってきて、艦隊のメンバーがそろいだす。集合の日の前日には全員集まり、
「………集まったはいいですけど、特にすることもないですわね」
「そうですね。今日戻ってきてもよかったかもしれません」
「私は今日でよかったです。毎日あんな高級なものを買っていただいてたら心が………」
暇な奴が続出した。仕方のないことだな。部下の多くが集まって休日最終日の宴会とか、明日から頑張ろうぜの宴とかやってるが、まあそこに関してはいいだろう。
休日なのだからその程度のことは許す。
ただ、
「訓練生。暇ならば、少しでも戦闘機体の運転に慣れてもらおうか」
「え?あっ………………そ、そういえばそれがありましたね!すぐに準備してきます!!




