7.賞金が出るらしいですけど何か?
後半主人公視点です、
《sideドワーフの少年》
ゴトーはドワーフの少年を脱出ポットで放出し、逃げた。
その後、回収されたドワーフの少年は事情を話し、
「え?あいつら、誘拐犯じゃないのか?」
「そうみたいなんです。ただ、犯罪者ではあるみたいですけど」
「マジかよ。そんな人族もいるのか。俺たちとはやっぱり違うな………ただ、ドワーフとしてここは同族を助けてもらった礼をしないといけねぇよな」
「はい。僕も、お礼がしたいです」
「じゃあ、とりあえず追跡班は戻ってこさせていいだろう」
追跡班。最近ドワーフの誘拐が表ざたとなり、ドワーフ方で新設された部門である。侵入した存在を監視し、あやしい場合には相手の拠点まで追跡するという役目を持っている。
実は、そんな存在がゴトーの船を追っていたのだ。
ドワーフの技術でステルスの性能を大幅に上げているため、通常の人族の技術では発見できない。つまり、追跡されていることにすら気づかないのだ。
「じゃあ、何をやるのかって話になるんだが」
「あ、あの。犯罪者ということで賞金もかかってるみたいですし、こちらからも生存していて船が残っている場合だけ賞金を出すってしたらどうですか?」
「ああ。そうすることで、あいつを殺されづらくするってことか?」
「はい。そういうことです」
「………………うぅ~ん。まあ、それくらいしか思いつかないしそうするか。大雑把なスキャンはできたから船の識別番号も把握できたし、本物かどうかも確かめられる。多額の賞金を出すことにしとけばそれでいいか。じゃあ、上にはそういうことで通しておくから」
「はい!よろしくお願いします!」
こうして『死神』としてのゴトーの生存確率は少しだけ上昇した。
ただ、同時にいくつもの賞金稼ぎたちから狙われる確率が増したのは言うまでもないことだろう。それが凶とでるか吉と出るかは、まだ分からない。
《sideゴトー・アナベル》
「ふむ。反応が消えたな」
『そうですね。おそらく事情聴取が行われ、こちらが敵ではないと認識したのかと』
「そうだと良いんだがな」
俺はレーダーを眺めてほっと息を吐く。
緊張が解けて力が抜けたな。何もないのかと警戒していたが、案の定追跡の部隊が来ていつ襲われるものかとひやひやした。
「しかし、さすがはドワーフだ。ティアが新しいレーダーをつけてなかったら確実に追跡に気づけなかったぞ」
『そうですね。ただ、レーダーの反応を見る限り性能は確かでしたが、乗り手の技術はいまいちなようでした』
「確かにそうだったな。ドワーフにはそういう弱点もあるか。とはいえ、技術を上回るほどに高スペックだからなぁ。………………まあいい。しばらく追っ手も警戒しつつ宙賊狩りをするとしよう。ティアにも少し遅れることを伝えないとな」
俺たちは、ぎりぎりドワーフたちに追われていることは気づけた。ティアの技術様様な形ではあるがな。
とりあえず確認できる限りのドワーフは離れていったが。まだ安心はできない。これからしばらくは追手の有無の確認や追っ手をまくことなどをするために宙賊を狩ったりするつもりだ。
本当は数日後にティアの工房へまたデータを持って帰って細かい修正を入れてもらう予定だったんだが。それもできなくなってしまった。
「ティアが拗ねないことを祈るとしよう」
『そうですね。ただ、ドワーフの方が作っていたあのタイヤの進化版の映像やデータをお土産として渡せばある程度の機嫌回復は見込めるかと』
「ふむ。良い案だな。採用だ」
俺たちの間でのティアの認識は、そんな感じである。
不機嫌な様子でむすっとしているが、データに興味があるのが隠し切れないティアの様子を想像したらなんだか笑えてきた。あいつ、なんだかんだ言ってちょろいからな。
「………さて、送ったし返信待ちつつ宙賊狩りするか」
『何かお手伝いすることはございますか?』
「今のところないな。とりあえず新しい装備ばかりだから問題が起きてないか点検しつつ、俺の話し相手にでもなってくれ」
『了解しました』
そうして、俺はしばらく代わり映えのない生活を送る。
ただ、途中でティアから連絡が入ってきて状況が動いたことに気が付く。
「ドワーフが俺を生け捕りにして船を鹵獲したら賞金を出すって宣言したらしい」
『おぉ。これで死亡率は下がりましたね』
シグマが平坦な抑揚でそんなことを言う。これは、喜ぶか悲しむか判断に迷っているんだろうな。
これをされた場合は死亡率が確かに下がるが、襲われる確率が高くなるということだし。
「早めに船のカラーリングだけでも変えておくか?」
『それをおすすめします。ティア様に塗装をお願いしましょう』
「くぅ。俺、このカラーリング気に入ってたんだけどなぁ」
一瞬でも相手を惑わすため、塗装を変えることになった。
さすがにスキャンされたら簡単にバレてしまうとは思うが、姿だけ確認して死神だと察知される確率は低くなったはずだ。
見た目でイメージもかなり変わるものだしな。
「どうせならイメチェンでピンクにでもしてみるか?」
『効果的ではあると思いますが、ピンクの死神というのもまたシュールですね』
「そうか?俺はクールだと思うぜ………………ぷぷっ」
『ご自分でも笑われているではないですか』
俺たちはその後、新しい塗装で議論を重ねた。
さすがに痛車ならぬ痛船にするとシグマが言い出した時には全力で止めたな。俺もそこまでする勇気は残念ながらない。




