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11.経験済みですけど何か?

「あ、あの。た、たたたた、隊長」


フィネークがセシルへ話しかけた。


「ど、どうしましたの?落ち着いて下さいまし」


「ひゃ、ひゃい。しゅみましぇん。……そ、その、ふ、副隊長は上官に軽口など言えませんのでこの反応になっているんだと思いますぅぅ!!……ひぃぃぃぃ!!!!生意気言ってごめんなさいぃぃぃ!!殺さないで下さいぃぃぃ!!!!!」


フィネークも一応その辺の教育は受けていたのか、軍人としての俺の状況を伝えてくれる。ただ、その後すぐに助命の懇願をしているな。セシルは隊長な上に貴族の令嬢だから変なことを言ったら殺されるとでも思っているのかもしれない。

セシルはその説明に納得し、更にその後の怯えように苦笑しながら、


「お、落ち着いて下さいまし。殺したりなど致しませんわ」


「ほ、ほほほほ、本当ですか!?ありがとうございます!!!!」


セシルの言葉に顔を輝かせ、フィネークはダイナミックに土下座した。プライドなんて欠片も感じさせないその土下座にセシルは唖然としている。

ただ、俺から言わせてもらえば、


「訓練生。求められていない際に艦内で土下座をするのはあまりよろしくない。大型艦とはいえ地上ほどスペースにあまりがあるわけでは無いからな」


「あっ。す、すみません!」


フィネークは俺の注意を聞いて急いで立ち上がった。その時、勢い余ってからだが前のめりになり、


「きゃっ!?」


「……危ないぞ」


倒れてくる体を俺は素速く受け止める。フィネークは驚いたのか何なのかはよく分からないが、俺の顔を暫く黙って見つめた後、


「しゅ、しゅしゅしゅしゅしゅ、しゅみましぇぇぇんっ!」


噛みまくりな謝罪を行なった。

顔が真っ赤だな。これは俺の顔を見て恋愛感情に影響があったとか言うのではなく、おそらく異性と体が触れあって恥ずかしかったという感情が強いのでは無いかと推測される。


「気にするな。今後気をつけるように」


「ひゃ、ひゃい!そうしましゅ!」


フィネークは何度も首を縦にコクコクと振って頷き、俺から離れる。

こういう姿を見ると、本当に主人公のドジっ子属性って凄いなと思う。正座から立ち上がるだけで前のめりに倒れるんだぞ?こういうのを見ると、階段をもう1段あると思って踏み外してこけるとかも日常的にやりそうな気がする。


「大尉。もしかしてこういう年齢の子が好きなんですの?」


「……恋愛に年齢は関係ないと耳にしたことがありますが」


俺がフィネークを抱き留めたことが原因なのか、セシルが面倒な質問をしてきたので、当たり障りの無い回答をしておく。

軍人として嘘はつけないからな。俺だって若い子は好きだぞ。うん。


「聞いたことがある、ですの?ということは大尉に恋愛経験は無くて?」


「生きてきてこの方、異性と恋仲になったことはありません。が、拷問のために性行為は経験済みです」


「……うん。そうですの」


微妙な顔をするセシル。

そこで俺は更に微妙な気持ちになるであろう発言を。


「拷問の際は必ず対象が特殊な性癖に目覚めるとして現在は性行為による拷問は控えるように命じられております」


「……そうでしょうね」


何かを察したような、微妙な表情でセシルが見つめてくる。因みに、主人公ちゃんことフィネークは顔を真っ赤にしてアワアワとしていた。初心だな。

そのまま微妙な沈黙が続いて会話が終わるかと思われたのだが、


「その特殊な性癖に目覚めた何人かが情報を伝える対価として、大尉の部下でいることが許可されたりしてるんですよ。私みたいに」


昔俺に拷問を受けた結果色々とねじ曲がってしまった部下の1人が手を挙げる。他にも数人が此方を見てコクコクと頷いているな。

……因みに変な性癖と入ったが、Mに目覚めたというわけではないことを明言しておこう。こいつらはもっと業の深いところに目覚めてしまったのだよ。


「あ、あなた拷問を受けるような人間でしたの?」


「え?……アハハハッ。これでもスラム育ちなものでして」


俺に拷問を受けたと明言した部下がセシルから信じられないものを見る目で見られている。まさか元犯罪者だとは思わなかったようだ。

ただ、意外とスラム出身で犯罪を犯したやつが軍に来るって言うのも珍しくないんだよな。犯罪者は腕っ節が強かったりすることもあるし、スラム出身で金が無くて仕方なくやってたなんて者も多いから。実力があって金を払えば味方にできるというのならば、軍は率先してそいつらを雇う。

ということを、セシルは護衛から聞かされて、


「へぇ~。……私の知らない世界ですわ」


どこか興味深そうな表情をしていた。特に政治に関わるわけでも無いご令嬢が知る必要の無い世界ではあるが、知識を増やすのは悪いことでは無い。


「隊長。気になるのでしたらそれぞれの隊員の出身地のリストがありますのでそれをお見せしましょうか?」


「ああ。気になる人がいればその人に聞いてみるといいということですの?……とりあえず保留ですわ。まずはこの方のお話を聞きたいですから」


セシルは俺の提案を保留にして、部下の話を聞くことに決めた。どう考えてそれを決めたのかは分からないが、決して悪いことでは無いだろう。

さらにそこに、


「あ、あの。私もそのお話聞いても良いでしょうか?」


手を挙げる者がもう1人。

フィネークである。

セシルは一度話を聞く部下の顔を見た後、フィネークに頷く。許可が出たな。

セシル達は早速話を聞くために部屋を移動しようとするのだが、


「あっ。大尉~。話をするご褒美に今日は相手を」

「却下だ」

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