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6.ミッションコンプリートですけど何か?

やばぁ。投稿予約出来てなかった。

ドワーフの少年はしばらく呆然としていた。理解が追い付いていないし当然ではあるな。

だが次第に元気を取り戻してくると、


『何か材料ない?モノづくりがしたいんだけど』


『材料を用意するのはかまわないのですが。こちらとしても何か作られても困るといいましょうか』


『そうなの?種族としての本能が抑えられないんだけど?』


『分かっています。現在使用してもいい材料を考えている最中になります』


さすがはドワーフといったところだ。もうモノづくりがしたいといい始めたのだ。

シグマの方で一存できることでもなく、俺にどう対応するべきかと質問が来ている。とりあえずシグマから船にある物資のリストが送られてきたので、その中で使っていいと思われるものを選択していく。


『………考えがまとまりました。こちらが使用可能な材料となります』


『おっ!来た来たぁ!ありがとぉ!!」


『いえ。礼には及びませんが、危険物の作成は控えていただけると幸いです』


『了解だよぉ!』


聞いているのかいないのか、元気のいい返事をしてドワーフの少年は作業に熱中しだす。渡された材料は、木材やゴムだ。

俺はその様子を静かに眺めた。


それから数時間後。

作っているものの形がぼんやりと分かってくる。


「これは、タイヤか?」


『そうだと推測されます。しかし、通常とは違った凹凸のつけ方がされているようです』


車のタイヤより少し幅が狭い程度のタイヤ、に似た何かが作られていた。

ゴムがあるから当然外側はゴムに覆われており、内側のホイール部分は木材で作られている。俺みたいなよくわかっていない人間からすると木材のホイールなんて簡単につぶれてしまいそうな気がするのだが、少年は満足そうだ。


『計算を行ったところ、かなり多くの面で力を受けた際に耐えられるようになってきています』


「そうなのか?」


『はい。あれがもしこのまま完成すれば、地上を走る機械のタイヤとして使用可能かと』


「ほぉ。木材とゴムでそこまでできるか、すごいな』


俺は素直に感心した。ドワーフの実力を思い知らされたわけだ。

が、逆に言えば感心しただけである。正直使えるとは思ってない。

なにせ、この世界で地上を走るものなんてほとんど存在しないからな。たいていのものがジェットやら魔力やら磁気やら諸々で浮いて動いている。車輪の出る幕なんてないんだ。


その後、数日時が過ぎる。

その間に少年はタイヤをさらに改造し、もうタイヤとは呼べない何かにまで変えていた。なぜ機械として動く部分はないはずなのに、グニャグニャと形を変え続けているのだろうか。

不思議でたまらないな。


「………さて。そろそろ見えてくるか」


『はい。そろそろレーダーの探知範囲などに入ってくる頃かと思われます。もしかすると、こちらが気付いてなかっただけでもう入っていた可能性もありますが』


「ふむ。それもそうだな」


俺とシグマはそんな会話をかわす。

この船は、かなりドワーフの星に近いところまでやってきていたのだ。普通の国の星ならこのあたりでぎりぎり探知されるかもなんていう話をするところなのだが、相手がドワーフだとすでに発見されているのではないかという気がしてくる。今頃、気づいていないだけでスキャンされているのではないかとかな。


だが、不気味なことにしばらく船が近づいてくる様子はなった。

結局船が近づいてきたのは数分後の、普通の人間の国でも探知されるのは当たり前みたいな距離であり、


『おい。そこの船。いったい何の用だ?ここは俺たちドワーフの星だぞ?』


やってきた船も1隻だけ。警戒心が薄いのではないかと思うほどだ。

とりあえず俺はここで、


「シグマ」


『了解しました』


頼んでおいたことを今実行してもらう。

その頼んでいたことというのが、少年に対しての呼びかけだ。呼びかける内容は、


『数秒後に脱出ポットからあなたを放出します』


『え?』


『あなたの作製したものに関しては一緒に入れて放出しますのでご安心ください』


『………え?』


簡単に言えば、お別れの挨拶だな。戸惑っていてまだ頭が追い付いていないようだが、こちらから一方的に少年へ通達させてもらった。ここで時間を食うのも恐ろしいし、これで良いと思う。

すぐに俺の方の準備も終わり、


『それでは短い間でしたが、ここで失礼させていただきます』


『え、えええええぇぇぇぇぇ!!!!!?????????』


脱出ポットを放出。そして、それと同時に俺たちの船は元来た道を引き返すようにして動いた。こうなるとドワーフ側の船は、


『え?脱出ポット?しかも中身は同族!?お、おい!待て!お前は何なんだぁ!?』


混乱した様子で騒いでいる。

俺たちのことも気になるようだが、残念ながら追ってくるのは難しいだろうな。何せ俺たちの船よりも、優先すべきものが目の前にあるのだから。


『くっそ。命優先だよな』


ドワーフはそう言って、脱出ポットを回収するように動く。その時にはすでに、ドワーフの船であっても追えないほどまでに俺たちの船は離れていた。

ミッションコンプリートだ。

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