5.思わぬ拾い物ですけど何か?
「………あれ?思ったほどじゃないな」
俺は装備を使用した後、そんな感想をこぼす。
俺の見る宙賊のアジトにはいくつも大きな穴が開き、拠点としての使用は不可能に思える状態へとなっていた。普通に軍の基地などに使っても大打撃となりそうな威力だ。
が、正直言って思っていたほどではない。
「あいつが作ったのだと、もっと威力が高いのはいくつかあったよな」
この規模の拠点は跡形も残さず消滅させられるほど高威力の武装。それをティアは以前作っていたし、俺も使用している。
そのため、正直今回の装備は期待外れだ。威力が高いのは間違いないんだけどな。
「………ふむ。まあいいか。残党も片付けて、戦利品の回収をするとしよう」
気持ちを切り替え、次の行動に移る。うろちょろと周りでうるさい宙賊どもを武器の錆にしていくのだ。これに関しては数が多かったから多少時間はかかったが、苦戦することはなったな。
でかい組織ではあるが、まだまだ練度は低い。できたばかりの組織なのかもしれない。
「船も寄せ集めって感じだし、質も低いな………」
パーツを回収していくが、特に強いものなどは使われている形跡がない。全体的な性能も低いな。ただの寄せ集めのようにも思えるが………判断に困るな。なぜ弱い奴らでここまでまとめ上げることができるのか。
そして大きな組織になれるのか。
不思議でならない。
「拠点の方を探れば何かわかるか?」
船がだめだったということで、今度はアジトの方をあさる。いろいろと資料やら見つかって、この組織の大きさを改めて思い知る。
特に国家機密みたいな情報まであるのを考えると、やはり大きい組織なのは間違いないように思われる。
そんなことを考えている時だった。俺の出していた回収用のドローンが、とあるものを発見する。
「………あぁ。間違いない。この組織、相当でかいな」
今まで以上に、それの裏付けとなるものが見つかった。
今までは、これまで聞いたこともなかったから半信半疑なところもあったのだ。だが、これではっきりと理解させられた。
「こんなところに、ドワーフがいやがったのか」
宇宙服を着たままぷかぷかと浮いているドワーフ。
意識はあるようで、俺のドローンが近づくと手を振ってきた。スキャンすると奴隷の首輪も確認できたし、つかまった違法奴隷なのだろうと思われる。
とりあえず回収は確定だな。
「テストのつもりだったが、さすがにそうも言ってられないか」
このドワーフをどこか安全な場所まで送り届けなければならない。
本当は邪魔だし始末してもいいのかもしれないが、送り届けた際のメリットを考えるとな………。
ということで、急発進だ。あらかた回収し終われば船をトップスピードでドワーフの居住惑星まで飛ばしていく。
その間、ドワーフには事情聴取をさせてもらう。
念のため俺は話しかけたりせず、
『初めまして。私シグマと申します。事情をお聞きしてもよろしいでしょうか?』
『あ、ああ。うん。良いよ』
『ありがとうございます。ではまず、どのような経緯であのアジトに入ることになったのか説明いただけますでしょうか』
『分かった。まず、僕は親方に言われて荷物を運んでいた最中だったんだけど、そこで急に人の乗った船が現れて………』
もしかしたら、自分の意志で宙賊の奴隷になったのかもしれない。もしかしたら、何か犯罪を犯していてドワーフの奴隷を独占販売しているタチバナ奴隷商会を経由して売られた正式な奴隷かもしれない。
そんな可能性がいくつも浮かんでくるのだから、疑問を解消するためにはいろいろと尋ねておく必要があった。
『………なるほど。では、まとめますと誘拐されて奴隷の首輪をはめられ、働かされていた、と』
『うん。そうなるね』
『分かりました。では、そういった内容で対処をさせていただきます』
とりあえず聞いてみた限り、嘘をついていなければそういうことはなさそうだった。ならば、やることは1つである。
恩を売るのだ。それも、こちらから一方的に、
『一応私たちのことを説明させていただきます』
『あ、うん』
『私たちは人間の社会で『死神』と呼ばれている宙賊狩りをしている存在です』
シグマが俺たちという存在の説明を始めた。
これは、恩を売った後に下手なことをさせないためだな。
『へぇ~。そうなんだ。じゃあ、僕を助けたのも相手が、宙賊?っていうものだったから?』
『そうなります。あなたを救出するために動いたのではなく、宙賊を襲ったらたまたまあなたがいたという状況です。………それで、実は私たちとある事情により各国から指名手配をされている状況でして』
『え?』
『ですので、私たちの情報を大まかなものを話すことはかまいませんが、細かい大事な部分を触れ回ったり私たちを探したりするのはやめていただきたいのです』
『え?………………ええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!??????????』
大絶叫。
助けられたと思ったら、助けてくれた存在が犯罪者だったとか心が追い付かないよな。
『ぼ、僕、本当に助けられてよかったんだよね?』
こんな人たちに拾われたくないw




