71.珍しくお揃いですけど何か?
軍の階級が怪しいです。有識者求む
結局、敵国は裁判でボロボロになった。とはいえ周辺各国は利益ばかりだったので、その廃れていくのを止める存在などなかったがな。
約束通りこちらは領域を割譲したうえで敵国を属国化。それからすべての国にも含まれているので賠償もふんだくった。
「いやぁ~。情勢も大きく変わりましたわね」
「ですね。おかげでまださらわれたドワーフがいることもわかってしまいましたが………」
セシルが気分よさそうに笑い、ダリヤがそれにうなずいた後苦虫を噛み潰したような顔をする。
今回こちらが敵国を属国化にあたり、すべての敵国の貴族や国が持つ資料を接収した。
一応これまででわかっていたドワーフは回収していたのだが、資料を見ているとそれ以上にドワーフがさらわれていることが分かったのだ。しかも、その大半がすでに国外に出ていることもわかっている。
「各国ともに見つけ次第引き渡すとは約束しましたが」
「口先だけですわよねぇ」
約束は破るためにある。バレなければ犯罪じゃない。そういうことだ。
各国ともに今回の件でドワーフの奴隷を発見次第ドワーフのほうに連絡し、引き渡すという内容の条約を締結した。だが、ほとんどの国がそんなこと守るとは思えなかったわけだ。
もしドワーフの存在がバレたとしても、知らぬ存ぜぬで通すだろうな。きっと様々な細工をして、ドワーフだとは思わなかったや認知していなかったなどと言い訳を並べることだろう。
そんな言い訳を並べて、さらにその話をするのが話の上手いものだった場合有罪判定は不可能だろう。たとえドワーフがうそ発見器を作ったとしても、話術のレベルが高ければ嘘をつかずにごまかされてしまう。
この問題はかなり長く続くだろうことは予想できた。
………といった感じではあるが、今回の件はとりあえずこれで終わりだ。
それ以外で何かあるとすれば、
「しかし、ついに少将になりましたわねぇ~」
「そうですね。異例の出世コースですわね。さすがですわ」
「身に余る光栄でございます」
俺が少将という地位に就いた。大佐の1つ上だな。俺の大佐としての日々は一瞬で………いや、全然一瞬じゃないはずだけど一瞬だと思う速さで消えて行ってしまったのだ。実に悲しいな。
出世したことで一応艦隊が強化されたりとかいろいろあったが、それについてはまた今度説明しよう。
何せ、大事な変化はほかにあるのだから。
今回の活躍で、我が艦隊はドワーフたちから非常に感謝された。ということで、ドワーフたちから俺たちに向けて感謝の気持ちが示されたりもしたんだ。
国に対しては販売だったり金銭だったりの面で対応がなされたようだが、俺たちの艦隊は別であり、
「しかし、専用機体ですかぁ」
「いい響きですよねぇ。専用機体」
感慨深そうに語るセシルとダリヤ。
彼女たちが言うように、今回提示された感謝の証は、2人に対しての専用機体の作成だった。何の専用機体かっていえば、それは戦闘機体のだな。
ドワーフが作成と整備をすべて行ってくれるらしく、2人とも大はしゃぎで担当のドワーフと打ち合わせを行っていた。データをとったりとかして、2人に合う完璧な機体が作られるのだそうだ。
とはいえそんな専用機を作るのにはもちろん時間もかかり、
「待ち遠しいですわねぇ」
「全くです。完成するまでに1つ任務を挟む必要があるなんて思いませんでしたよ」
1度任務を行ってからの受け取りということになっている。
国としても完成するまで遊ばせておくなんていう真似はさせられないからな。何せ今、俺たちの艦隊はドワーフを救った艦隊としてある程度知名度が上がっているし。
特に王族であるダリヤと公爵家の令嬢であるセシルの2人が戦闘機体に乗って戦ったというのは、市民たちに対して受けがいいものだった。そのため我が国だけでなく、他国でも2人は今非常に高い人気を誇っている。
………あっ。ちなみに俺は知り合いを使って注目されにくいようにしてもらった。有名になれば間違いなく自由な行動はできなくなるし。面倒なのは好きじゃないからな。
「お二人とも、そんなに楽しみなんですか?」
有名となって人気を得たセシルとダリヤに声をかけるのが、同じような年代であり2人の友人でもあるフィネーク。よく2人から周囲の状況によって離されることが多い不憫な子である。
が、今回その顔に寂しさは浮かんでいない。
「ふふっ。当り前ですわ」
「だってお揃いじゃないですか。専用機体なんて。………3人のお揃いなんて初めてじゃないですか?」
「ああ。そうですわね。フィネークだって楽しみにしているではないですの」
「ま、まあ、それはそうなんですけど………」
困ったような笑みを浮かべるフィネーク。だが、彼女が楽しみにしているのは間違いなかった。
何せお揃いなのだから。
そう。今回フィネークもまた、ドワーフ全体からのお礼とは別件で戦闘機体の専用機を作ってもらえることになっているのだ。珍しいことに、今回の彼女は1人だけ寂しく置いて行かれることがない。
少将ではなく准将が来るのか?
あと最近思い出したのですが、セシルって触れるだけでシールドどうにかできたような記憶があるんですよね。いくつかの場面でもっと活躍させられたような…………




