62.きっと生きていますけど何か?
本日2話目です。
《sideフィネーク》
部屋が揺れた。
その一瞬の間には気づかなかったけど、
「お、おい!?なんだ!?」
「今揺れたぞ!」
基地の中にいる敵兵も騒いでいた。どうやら、基地全体が揺れたみたいだった。
基地内部があわただしくなる中、私が取り残されたようにボォッとしていると、
「嬢ちゃん。ちょっと外の様子見てみるかい?」
「へ?外の様子ですか?」
ドワーフさんからそんな提案が。
外の様子を見るってことはつまり、
「ここから出るってことですか?」
「あぁ。いや…………すまん。そういうことじゃねぇんだわ。ちょうど今ここに、外の様子が見れる機械を持ってきてたってだけでな」
「あっ。そうなんですね………なら、見ます」
「おう。こんなところで何もしないのもあれだし、しっかり見てくれ」
牢屋の中に置かれる機会。ドワーフさんがそれに触れて何かすると、空中に外の様子らしきものが浮かび上がる。
基地の周りにはいくつもの戦闘艦が飛んでいて、個々の守りが固いのが理解できた。
だけど。
だけど、そんな中で、
「んお?こいつは裏切りか何かか?同じ国の船だよな?」
「っ!こ、これは!」
1隻だけ。ほかの船に攻撃を仕掛けている船がある。
その船は小型間で、周囲を取り囲む大型艦や中型艦に比べれば圧倒的に小さい。そして、弱そうで、すぐに攻撃を受けたら破壊されそう。
それでも、それでもその船は、
「大佐………」
何か明確な証拠があったわけではない、
だけど、私は確信した。その船に乗るのが、こんなところまで敵の船1隻で乗り込んで来ようとするのは、大佐くらいだから。
私は助けが来るのをもう期待していなかった。あきらめてしまいかけていた。
でも、大佐はあきらめてなかった。私を助けようと手を尽くしてくれているのが、よくわかった。
「………すげぇな。機雷をバンバン使ってるとはいえ、小型艦1隻でこっちの船を何十隻も沈めてやがる」
ドワーフさんも感心している。それだけ、大佐の技術が高いっていうこと。
たった1隻。ほかに乗っている人がいるのかはわからないけど、それでもたった1隻という圧倒的な数の振りがある中で、大立ち回りを見せていた。
でも、それでも…………
「さすがに厳しいものがあるな。数が多すぎる」
「大佐………」
いくら大佐がすごくても、すべての攻撃を防ぎきることはできない。大佐の乗る船が少しずつ、でも確実に傷ついていくのが分かった。
私は震える手を握り締めて、大佐の無事を祈る。
そんな中、大佐はだんだんと傷を増やしながらも基地に近づいてきて、
「ほぉ?ミサイルをそんなに積んでたのか。やるな」
基地にミサイルを撃ってきた。
基地側もミサイルは防がないといけないと考えたみたいで、大佐へ向かう攻撃が少なくなる。その間にどんどんミサイルを撃ってきて、基地側の防衛の手が足りなくなっていくのがよく分かった。
「ほぉ~。うまいな。確かにこの基地の武装は強いが、それぞれ息を合わせて使わないとあまり意味はない。うまく技術力の低さをついてきたわけだな」
ドワーフさんが言っていることは恐怖とか興奮とか嬉しさとかの感情で頭がいっぱいになってて何となくしかわからないけど、とりあえず大佐がすごいっていうことは分かった。
そして、大佐が基地に対して大きな被害を与えていることも。
「おぉ。随分と物騒なミサイルだったみたいだな。今ちょっと揺れたぞ?」
「そ、そうですね。揺れましたね」
いま私たちが基地のどこにいるのかはわからないけど、ミサイルが基地のシールドに触れて爆発したとき、基地の中は少し揺れた。
間違いなくミサイルの影響だと思う。
大佐の攻撃で、基地は確実にダメージを重ねていた。
「………だが、快進撃もそろそろ終わりみたいだな」
「っ!大佐!」
浮かび上がった映像の中では、基地がミサイルへの攻撃をあきらめたことが分かった。もう被弾など気にせず、ひたすら大佐の乗る船を狙って攻撃を仕掛けている。
さすがにそんなことをされれば避けることなんて到底無理で、戦闘艦のシールドは今にも消失してしまいそうに見えた。
「おっと。そっちの船は方針を変えるみたいだぞ?」
「え?」
シールドを大きく削られた船。
その船は、今までとは急に進行方向を変えた。今までは安全圏を多く通りながら少しずつ基地に近づいてくるようにしてたけど、ここで急に変わったの。まるで、
「こっちに、来てる?」
基地へとまっすぐ飛んできている。そう見えた。
基地の人たちも予想していなかったようで、その対応はかなり遅れが出た。多くの武装の照準が合わないうちに船は接近してきていて、
ドォォォオォンンッ!という激しい揺れが起こる。
大佐の乗っていたであろう船は、
「爆発物を積んだまま突撃して、自爆したか…………」
機雷でもたくさん積んでいたんだと思う。だから、基地のシールドは一瞬で破られ、外壁も大きくえぐられていた。
そして私は見逃していない。
船が突撃する直前に、数機の戦闘機体が船から出てきていたことを。
「大佐」
大佐は、きっと生きている。




