9.隊長継続なうえに主人公ですけど何か?
ごめんなさい!
先に10を投稿していたので一旦削除して此方を上げます!!
教えて下さった方、ありがとうございます!!!
「……ふぅ。どうにかなりそうだな」
数人の逸脱者達と話をして、俺はそう感じた。王子が相手で色々と面倒に感じるところもあるが、逸脱者数人にサポートしてもらうことでどうにかできそうな雰囲気になっている。
裏で色々やってもらってる間はできるだけコソコソ動いて目立たないようにしたいところだ。……したいところなのだが、
「それでは大尉。これからも宜しくお願いしますわ」
そう言って柔らかく微笑むセシル。新しく付いた勲章が光を反射し、キラリと光る。そして彼女の顔に浮かぶ笑みもまた、輝いていた。
「はっ!誠心誠意お手伝い致します!!」
俺は彼女の言葉に元気よく応えるしかない。軍において上司に対して、「え~。嫌です~。やめて欲しいんですけど~」とか言えないのだ。……まあ、言えないはずだが、数人の部下は大した用事で無いときには俺に対してそんなことを言うけどな。俺は若干なめられているのだ。
「次はどんな勲章を得るか悩みます!」
「そうですね。隊長ほどの実力があればある程度狙える勲章の幅は広いでしょうが……」
悩んでると言いつつ元気な様子のセシルに俺は呆れつつ、こいつが俺たちによろしくしている理由を思い出す。
まず分かっているとは思うが、セシルは引き続き俺たちの艦隊の隊長を続けることになる。あわよくば更なる実績を積みたいと考えているようだ。いや、そう考えているように見せたいようだ。
本音としては、
「……良いですわねぇ。この船に乗っている間は、貴族としての自分を忘れられますわ」
と言うことらしい。大型艦の艦長席で呟くセシルに、部下の数名は呆れた笑みを浮かべているな。これが普通の令嬢の言葉だったら内心でぶち切れていただろう。こちらが命がけだというのに何を気楽なことを言っているのか、と。
だが、セシルは普通の令嬢では無い。戦闘機体で大活躍したセシルは、部下達に取ってみれば英雄的な存在。それの言葉となると怒りは湧かないが、なんとも言えない気持ちになるのだ。
「今回は前回とは違い、短期ではありますが遠征となりますのでお覚悟を」
「わ、分かりましたわ」
前回セシルを連れていたときは様々な場所からの働きかけにより特例として数日だけの活動が許されたが、基本的に俺たち軍人はある程度の期間前線へ出ることが多い。特に俺たちの艦隊は全て戦闘艦だから、製造費や維持費のような所を含めても出さないわけにはいかないのだ。輸送艦としても使えるタイプの船なら輸送任務も挟みつつの行動になるんだろうが、俺たちが乗ってるのは完全に戦闘に特化した船だからな……。
「ゴ、ゴトーてゃいい!」
「……落ち着け」
セシルや今後の戦闘について考えていると、大尉の部分を噛んで顔を真っ赤にする少女が俺を呼ぶ。
桃色の短髪。くりっとしたつぶらな瞳。まだあどけなさを感じる童顔。そして、白く艶のある肌。
俺の前でアワアワとしている彼女の名はフィネーク。まごうこと無き、この世界を表す乙女ゲームで主人公になるはずだった少女だ。
「しゅみましぇん!ほ、ほほほ、報告をいたしましゅ!」
「……ああ」
かみかみな彼女の報告を聞きながら考える。なぜこの主人公であるフェネークが俺の艦隊に居るのかということを。
まず前提として、彼女は乙女ゲームのルートに入ることができなかった。ゲームではずっと学園が舞台で、軍艦になんて乗るシーンは一度も無かったからな。
シナリオ通りに進めなかった理由は、俺がセシルを隊長として迎え入れたことにある。本来シナリオではストレスフルなセシルが平民であるフィネークをいじめ、それを見た元婚約者である王子に助けられるところから乙女ゲームは本格的に始まる。
彼女がセシルに発見されるのは、とある権威ある学校の入学試験の時。その学校では前提として非常に強い魔力を持つことが必要である。
そう。魔力だ。SF世界のくせに、この世界は魔力とかありやがるのだ。俺もこの世界に転生してきた当初はこれの活用に苦労したな……。
と、それは良いとして。フィネークには入学試験を受ける程度の魔力、というか、それ以上に膨大な魔力を持っていた。だからこそ、入学試験を受ける条件は満たしていた。
しかし、ありがちではあるが、フィネークは勉学がてんで話にならないのである。そのため、本来はというかこの世界でもそうなのだが、普通の状態では当たり前のように試験に落ちる。ただ、ゲーム内ではセシルが迷惑をかけたと言うことで公爵家が裏から動き、フィネークを入学させてくれるのである。
ただ、先程も説明したように、通常では試験に落ちる。この世界でも、フィネークは試験に落ちたのだ。その結果、彼女は軍事学校に行くことになる。そして、特に苦労することも無く合格して訓練生となったのだ!




