1章 プロローグ
書いてた作品がスランプに陥ったのでネタを考えるために書きます。(ネタを考えるために新しい作品を書くという狂気
誤字の多い作者ですので、温かい目で見守って頂けると幸いです。
それは何かの物語のきっかけ。
「セシル嬢。君との婚約は、ここで破棄させてもらう!」
それは、物語の大事なピース。
「なぜですの!?私は何も問題は起こしておりません!そんなに簡単に婚約を破棄されては困りますわ!」
それは世界が、いや、宇宙が決められたとおりに進むための必要な出来事。
「問題?まず、この婚約に僕は最初から承諾を出してないんだよ!母上と公爵家が勝手に、僕と父上の許可も得ずに行なった婚約だろ!それが問題だ!こんな婚約が認められてたまるか!君みたいに1人じゃ何もできない、公爵家のすねかじりとなんて婚約したくない!!」
それは傲慢であるが、宇宙のために許されるはずだった傲慢。
「っ~~!!!!……わ、分かりましたわ!では、私は戦地へ出ますわ!誰か私を戦地へ連れて行き、私に実績を上げさせなさい!!」
これもまた傲慢であるが、与えられるはずの無かった傲慢。
「……だ、誰か!手を挙げなさい!」
世界から見て見ぬ振りをされるはずだった傲慢。
「挙げなさい!挙げなさいよ……」
宇宙から拒否されるはずだった傲慢。
だが、宇宙は時として、決まった軌道を通らないことだってある。時として、軌道上をそれ、どこか遠くへ飛び出すこともある。
なぜなら、
「……分かりました。でしたら誰も他に手は挙げないようですし、この私がセシル嬢の副官となりましょう」
宇宙は広く、細かな全てのことは等しくなど無いのだから。……たったわずかな違いでも、それが浸食し広がれば宇宙は大きな変化を向かえるのだから。
「セシル嬢。君との婚約は、ここで破棄させてもらう!」
「なぜですの!?私は何も問題は起こしておりません!そんなに簡単に婚約を破棄されては困りますわ!」
目の前で繰り広げられる、昼ドラにでもなりそうな言い争い。
何度も各地でドンパチ争いを繰り広げる俺はそれを見ながら思うわけだ。そういえばここって、乙女ゲーの世界だったな、と。
正直忘れてた。いや、正直に言わなくても忘れてた。でも、仕方ないと思うんだ。なにせ、乙女ゲーの世界に転生したのにもかかわらず、俺は軍なんかに入って前線で宇宙船を指揮してるんだから。
「問題?まず、この婚約に僕は最初から承諾を出してないんだよ!母上と公爵家が勝手に、僕と父上の許可も得ずに行なった婚約だろ!それが問題だ!こんな婚約が認められてたまるか!君みたいに1人じゃ何もできない、公爵家のすねかじりとなんて婚約したくない!!」
この俺が見ている光景だが、前世でやった乙女ゲームでは最初のオープニングに出てくるような序盤も序盤なシーンだ。ここで起きる出来事によって、今はまだ出てきていない主人公が大活躍するきっかけになる。
このシーンを詳しく説明すると、悪役令嬢が王子に婚約破棄をされるありがちなシーンだ。……とはいえ、それがありがちなのは中盤から終盤。こんな序盤のまだ主人公を操作することも無い段階で起きるイベントでは無いだろう。
まあ、それがこの乙女ゲーが注目を集めた理由だな。
さて、そんな婚約破棄シーンだが、この後悪役令嬢は王子を納得させるため、自身の実績を作ろうとする。王子に1人じゃ何もできないすねかじりなんて言われたからな。それを払拭するには、自分で実績を作る必要がある、その簡単なやり方が、軍で活躍する事だと思ったのだろう。
「っ~~!!!!……わ、分かりましたわ!では、私は戦地へ出ますわ!誰か私を戦地へ連れて行き、私に実績を上げさせなさい!!」
なんて思ってたら、実際にそのシーンに突入した。
だが当然ではあるが、誰1人として手を挙げる者はいない。なにせ、王族である王子に悪役令嬢は嫌われているわけだからな。ここで味方をしようものなら王子から敵対認定されかねない。誰だってそれは嫌だろう。
ここで何も言わなかったとしても、自分が目立たないでおけば責められることも無いだろうからな。
「……だ、誰か!手を挙げなさい!」
悪役令嬢は叫ぶ。その声には焦りと絶望の色が見える。自分はこのまま何の実績も立てることはできないのかと考えているのだろう。
「挙げなさい!挙げなさいよ……」
泣きそうな顔で言うが、誰1人としてその手を挙げる者はいない。ゲームのオープニングでもそうだった。このままシナリオ通りに進んで行けば、悪役令嬢はひたすら不幸な方向に進み、何事も無く俺たちは平穏に生きることになるのだろう。
だが、俺はそんな道は選ばない。
「……分かりました。でしたら誰も他に手は挙げないようですし、この私がセシル嬢の副官となりましょう」
俺が、手を挙げる。俺が、シナリオを壊す。俺が、平穏を壊す、
例えシナリオ通りに進むことを世界が、宇宙が望んでいたとしても、俺はその通りには動かない。俺はこのぬるいシナリオを……ぶち壊す。
「なっ!?大尉殿!?」
「あなたには任務が!……と、そういえば現在は丁度フリーのタイミングでしたな」
「しかし……」
荒れる周囲。驚きの視線と言葉が俺に向けられる。
だが、俺はそんなものを相手にはしない。それよりもやる必要があることは、
「王子。誠に恐れながら質問をよろしいでしょうか?」
「な、なんだ?許可しよう」
俺は婚約破棄を宣言した王子に恭しく問いかける。王子も嫌そうな顔をしながら許可してくれた。俺は悪役令嬢であるセシルに協力しているし、敵に認定されているのだろう。
だが、俺はここを切り抜ける!
「もし上官に不幸があった場合、王子はその部下に責任があると思われますか?」
「ん?どういう意味……そういうことか」
少し悩んだ後、納得したような顔を。笑みすら浮かんだな。俺の問いかけを聞いた周囲の人間達は、驚愕の表情で俺と、黒い笑みを浮かべた王子を見ている。
まさかそんな真っ黒な会話をするとは思わなかったのだろう。
セシルを俺の上官にして、適当なタイミングで始末してしまうという会話を。
ただ、上司にしたセシルを消す計画を行なう場合、セシルの部下である俺に責任が来ては困る。だからこそ、俺は問いかけたのだ。王子というかなり権力を持った人間に、問題の有無を。
「もし上官に不幸があった場合、王子はその部下に責任があると思われますか?(もし上司のセシル嬢を暗殺しても不幸な事故ってことで罪には問われませんよね?)」
と言う質問である。意味を理解した王子は、
「勿論そんなことはない。その場合は上官に問題がある。逆に不幸な部下には手当が必要なくらいだな(OK!暗殺しちまえよ!暗殺したら褒美もやるぞ!!)」
と言ってきた。お互い満足した表情で頷く。
それから俺はセシルの前まで歩いて行き、綺麗な敬礼を。
「それでは、セシル嬢。いえ、セシル隊長!これから宜しくお願い致します」
この瞬間、公爵家令嬢セシルが俺の上司となった。これから世界に波乱が起きる。本来悪役令嬢となる予定だった少女の、軍人としての活躍が。
そして、彼女の副官にして転生者である俺の、異端者としての暗躍が。