思いよ、届け
思いを手紙で伝える。その美しさと、重さを感じて欲しいです。最後まで読んで、視点を変えてもう一度。散りばめられたかけらを集めて、考えてみてください。
誰が何を目的に書いた手紙なのか。考え抜いた先にあなたなりの答えがあるはずです。
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拝啓 手紙を読む貴方へ
この手紙を読む貴方は
私という存在とのつながりの一切を
もう既に忘れてしまっているのかもしれません
この手紙は
私と貴方とのつながりを僅かながらに繋ぎ止めておくためのものですから
決してゴミ箱に投げ捨てたりしてはいけませんからね
ゴミ箱といえば
いつのことだったか忘れてしまったけれど
ゴミ箱に片足を突っ込んだ私を
腹を抱えて笑い飛ばしたこともありましたね
あの時は嘲笑われたような気がしてむすっとした私でしたが
今なら素直に受け止めることができるのかも知れません
洗濯物を干す貴方に
買い物に行きたいから早く終わらせてと声をかけて
怒らせたこともありました
あの時は三日三晩喧嘩もしましたね
今なら素直に謝ることができるかもしれません
ごめんね
まだこの手紙、ゴミ箱には捨ててないみたいだね
でも一言断っておくけど
ここから面白い話は何一つないからね
それでもいいなら
最後まで読んでもらえたら嬉しいな
いつも代わり映えのしない髪型ばかりの私に
思いきって短くしてみたらと
思いつきの提案を魔に受けて
次の日バッサリと髪を短くした私に
苦笑いで微笑みかけた貴方
貴方こそあの髪型似合うってなかったからね？
2人で行った水族館
頭上を泳ぐアザラシを見て
私のように優しい顔をしているねと声をかけられて
涙を流してしまったこともありました
アザラシ、かわいかったね
真夏の太陽の下
日焼け止めを入念に塗る女性に
ろくろ首みたいだねと言った貴方
絶対他の妖怪と勘違いしているよね？
それをいうなら一反木綿だよ
蜜柑を頬張りながらコタツで丸くなる私に
どこぞの猫だよと声をかけた貴方
猫って好奇心旺盛で知らないうちに色ん所に行っちゃうんだよ
気をつけようとつぶやいたね
こうやって振り返ると
貴方との思い出は全部楽しくて
私にとってかけがえのない宝物です
ありがとう
こんなご飯は美味しくないという貴方
でも栄養だって大切だと何度も説得しましたね
でもおかげさまで健康診断には引っ掛からなかったね
あそこが痛い
ここが痛い
毎日散々飛び交った言葉も
今となっては一つの思い出です
段々と声を荒げることが増えました
そんな時にかける言葉もなく
夜な夜な涙を流して己の無力さを責めましたね
きっとお天道様はみていてくれているはず
別れの日
最後の言葉は
貴方は私の全てだった ありがとう
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傍にはあなたの写真
涙を堪えて立てかけた手紙は、音も立てずゴミ箱にぽつり。
