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美しい令嬢は貴方に全てを捧げます(完)

ソフィー視点、ランハート視点と視点が切り替わっていきます。

どうぞお付き合い下さい。

植物園に着き、ランハート様のエスコートで私達は園内を見て回った。


馬車を降り、帽子を被る私をランハート様は優しく待って下さり、「ソフィー嬢、あちらの花は珍しい物だそうですよ」と園内に所々ある花の説明を一緒に読みながら周った。私に合わせたゆっくりと歩くスピードだったり、もう一つ一つが尊くて、私はこのまま天に召されてしまうんじゃないかと思った。


カフェでもランハート様の所作は大変美しく、ああ、このまま絵画にしてしまいたいと、私は目を見開き脳内に少しでも焼きつけておこうと全てを記憶していった。



きっと私の瞳の瞳孔は開いていたでしょうね。変な顔してなかったかしら。


カフェで食事をしゆっくりと休憩をした後、街歩きに私達はむかった。


ランハート様と歩くと、人が左右に分かれていき、まるで気高い戦士の凱旋の様に皆がランハート様を見ていた。


分かる。分かるわ。皆様の気持ちが痛いように、手に取るように分かるわ。太陽の光を浴びたランハート様の髪は紺色に輝いていて、それはそれは美しかった。


街歩きを暫くした後、もう少し時間があるのでと、大通りのカフェに二人で入った。

そこで、私は思い切ってランハート様に尋ねる事にした。



「ランハート様。この度は我が家からの婚約の打診。ご迷惑ではなかったですか?」



ゆっくりティーカップをランハート様は降ろされると、私に眼を合わせた。



「いいえ、迷惑など。驚きはしましたが。ソフィー嬢は私でよろしいのですか?申し訳ありませんが、私は譲り受ける領地もありません。爵位も叔父から譲られる予定の子爵です。侯爵家からすればきっと驚かれる生活になるやもしれません」



「私は、ランハート様が良いのです」



私がそう言うと、ランハート様の至高の瞳が大きく開かれた。



「ランハート様は入学式の時に靴の踵が壊れ困っている生徒を助けていらっしゃったでしょう?テスト前にノートをなくした男子生徒と一緒に勉強をして、手伝っていらっしゃったでしょう?猫を助けた事もありましたわ」


あ、コレ、ストーカーって言われるかしら。気持ち悪いかしら。私は俯き、しまった、失敗したわと涙が出そうになった。



「我が家からでは断り辛いのは分かります、それでも私はランハート様が良いのです」



私は顔を上げ、ランハート様を見つめた。




****************




ああ、俺、もう、騙されていいと思う。俺は天の鐘を聞いた。


リンゴーン、リンゴーンと頭で響き、天使達が「おめでとう、おめでとう。よかったね」と、花びらをソフィー嬢の上に撒いていた。


今、このカフェの中はソフィー嬢の声を聴き逃すまいと皆耳を澄ましていた事と思う。


植物園でも、カフェでも、街歩きでも、ソフィー嬢は注目の的であった。そしてなぜ俺?横にいるのなんで君?いや、悪くないよ、でもねえ。という視線があった。


分かる。分かっている。俺自身も思っているから。



そして今だ。



ソフィー嬢が頬を染め、愛を地味男に伝えている。カフェ中の視線は今俺に注がれている。


視線って刺さるんだな。今俺は八つ裂きだ。きっと前世の俺は百も千も徳を積んだんだろうな。


ごくっと、誰かが唾を飲み込む音がした。


俺は今までの人生でこんなに注目された事はなかった。


俺にとってソフィー嬢は憧れで、同じ学園にいても、同じ人間であっても、まるで違う人種の様に感じていた。生きるステージが違うと。


たまに目が合う事はあったがその時も、「あ、綺麗だな。ラッキー」位にしか思っていなかった。遠くにいる綺麗な人。きっと同じような綺麗な令息か、高位貴族の元に嫁がれるんだろうなと思っていた。


憧れでしかなかった人から愛を伝えられて、頬を染められて、ここで踏み出さなかったら俺はきっと地獄に落ちる。一生後悔する。


カチャっと小さな音がする。普段聞こえるはずのない、誰かのカトラリーの音。


ソフィー嬢は静かに瞳を伏せ、長いまつ毛に涙が光っている。


ああ、手を伸ばしていいのか。


本当に俺でいいのか。憧れの人が目の前にいる。


何かの間違いじゃないんだよな?ああ、もう間違いでもいいや。


お前ごときがと、笑われてもいい。



「ソフィー嬢。私は何があってもあなたを守ります。あなたを幸せにする事を誓います。あなたに涙を流させる事がないように努力致します。私をあなたの生涯の伴侶として頂けますか?」


「はい。私の全てをランハート様に捧げます。宜しくお願い致します」



きっと俺はこの時の、このソフィー嬢の笑顔を死んでも忘れる事は無いと思う。

この笑顔の為に俺は生きてきたんだと思う。



ふわっと、花開いたようにソフィー嬢がそう言った瞬間。


カフェの中が歓声で沸き、すごい騒ぎになった。



「「「「うわあ!!」」」」っと声が上がり、お洒落なカフェとは思えないような騒ぎになった。皆が手を叩いたり、目元をハンカチで押さえたりと興奮した声が飛び交い、俺は目の前でこちらを見つめる女神と一緒に、思わず笑ってしまった。






両家での顔合わせはこのデートの後すぐに行われ、驚く程のスピードで婚約は調う事となる。



俺はその後、


地味男の奇跡。


地味男の歓喜。


地味男の希望。



色々と言われる事になるのだが、まあ、女神が伴侶になるのだ、何を言われてもしょうがないと諦めた。学園でも俺は行く先々で涙を流されたのだが、自分が思ったよりも大勢に祝福を受けた。


婚約後、ソフィー嬢は美しいだけではなく、優しさにあふれた女性でこんな俺にも甲斐甲斐しく尽くしてくれる事を知る。


女神は内面も美しいのかと、俺は何度も惚れ直す事になるのだが、それはまた先の話である。


また、やっかみがすごいんじゃないか、とか、それこそ闇討ちをされるんじゃないかとびくびくしていたのだが、ソフィー嬢の幸せは皆の幸せ。と、盛大な祝福を先々で受けるのだが今の俺はそれを知らない。






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