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傭兵、異世界に召喚される  作者: 藤咲晃
第七章 休暇の日々
82/325

7-8.敗北者

 月と星空が浮かび、フェルシオンの歓楽街を星明かりと街灯、そしてオペラハウスから響く美声が包んでいた。

 そんな夜の町中とは裏腹に未だ事件を引きずる者達の憂に満ちた眼差しが交差する。

 ミアに連れられたスヴェン達を、魔力を受けて稼動するスロットや配られるカードの音ーー賭けに勝つ勝者の笑い声と負けた敗者の叫びが歓迎の如く迎える。

 スヴェンは魔力と導入した賭け金を受けて回るスロットに思わず口を開け感心していた。

 以前デウス・ウェポンで共に戦場を生き抜いた傭兵達に連れられる形で行ったカジノ。そこで稼動するスロットマシンと遜色無い性能を見せるスロットに自然と喉が鳴る。


「おやぁ? 流石のスヴェンさんでもカジノには圧巻されちゃった?」


 ミアの挑発混じりの視線と口調に、スヴェンは反論せず抱いた感想を口にした。


「圧巻とは違えが正直驚いた……これも技術開発部門の研究成果なのか?」


 そんな事を告げながら疑問をレヴィに向ければ、彼女の口元が柔らかく緩む。


「えぇ、町の街灯から娯楽用の魔道具、生活基盤を支える魔法陣もカジノの魔道具も全て技術開発部門の研究成果よ」


 確かにあの技術開発部門の研究力と発想力は凄まじい。

 生活に必要な魔法技術だけでなく武器に転用可能な魔法陣、銃弾やハンドグレネードの開発を所長抜きで行えるほどに。

 技術開発部門は福所長のクルシュナをはじめ優秀な人材揃いだ。


「技術開発部門は凄えな」


 改めてエルリア城で日夜研究に励む彼らを褒めれば、レヴィの頬が更に緩む。

 そんな彼女の様子を見ていたエリシェが疑問を浮かべる。


「レヴィの家族って技術開発部門の研究員なの?」


「如何してそう思うのかしら」


「スヴェンに褒められて凄く嬉しそうだったから」


「そう? 私はこの国が大好きなの。だから国の良いところを褒められるとつい嬉しくなるのよ」


 エリシェの疑問を愛国心ゆえの反応だと切り返すレヴィに、スヴェンは人知れず小さなため息を吐く。

 そろそろエリシェに正体を明かしても問題ない頃合いではないのか。それとも身分を隠したまま彼女と友人関係を続けるのか。

 それこそ真実を告げるかはレヴィの判断だ。部外者の自身が口出すべき事じゃない。

 スヴェンは改めてカジノの施設に視線を向け、既に受付に向かったミアとアシュナに歩む。


「チップの交換はここでいいのか」


「そうだよ。ここはドーンっと交換してもいいんだよ?」


 金が入ったばかりで無計画に浪費してはたちまち資金不足に陥る。加えてスヴェンは自身が稼いだ金に手を付けるが、旅の資金に手を出すつもりはない。


「得た報酬金から……そうだな銀貨50枚でチップを交換すっか」


「意外と消極的? じゃあ私は謝礼金と合わせて銀貨250枚で交換を!」


 賭けごとに余程の自信が有るのか、ミアは渡した山分けを全て注ぎ込む形でチップを交換した。

 確かに勝てば倍の金額が見返りとして獲られるが、その分負けた損失も高い。

 リスクリターンを計算し、しっかり遊びに興じるミアに内心で感心しながらアシュナに視線を移す。

 はじめてギャンブルに興じるのか、浮ついた様子で受付の係員に銀貨十枚を差し出し、


「これで交換」


 静かな声で告げた。すると係員はアシュナに困惑した様子を見せ、


「えっと、君にはまだ早いんじゃないかなぁ? それともお二人はこの子の保護者ですか?」


 保護者同伴かと訊ねられた。

 保護者かと問われれば違うが、ここで否定すればアシュナは遊ぶことも叶わないだろう。

 切札として温存する方針は変わらないが、頼らないということは彼女に小さな不満が蓄積される。

 それがいつ爆発するとも判らない爆弾を背負うのはリスクでしかない。

 スヴェンが口を開きかけた時、


「お兄ちゃん、遊べないの?」


 アシュナが涙目で甘えた声を発し、明確な罪悪感を係員に植え付けた。

 こうなれば後は適当に口裏を合わせれば係員は落ちる。


「あ〜保護者同伴なら遊べると思ってたが?」


「そうですねぇ〜この子の姉としてちょっと一人にするのは見過ごせませんね」


 こちらの演技に乗る形でミアが追撃を加えれば、係員は納得した様子で銀貨をチップに交換した。

 スヴェンは各々の場所に駆け出すミアとアシュナを見送り、自身は一台のスロットマシンに座る。

 投入口に五枚のチップを入れ、レバーの魔法陣に魔力を送ってからレバーを下げる。

 するとスロットの絵柄が回りはじめ、左から順に自動で止まりベリーの絵柄が揃う。

 小さな当たりを告げる音と共に賭け金のチップが払い戻された。


 ーーベリーで損得無しか。他の絵柄、特に姫さんに似た絵柄は百倍か。


 普通ならスリーセブンが最高だが、この国ではスリープリンセスが最も高いらしい。

 どれだけこの国がレーナを愛してるのか、些か度が過ぎる気もするが、


「今度こそレーナ様の絵柄を揃えてやる! そんで故郷のダチに自慢してやるぞ!」


 隣りで気合いを入れる男性の叫び声にスヴェンは一瞬だけ判断に迷う。

 何処の国の人間なのか、実のところ国ごとの身体的特徴が殆ど判らない。

 魔族のような身体に現れる特徴なら何処の国の住民、出身なのか判断できるのだが、まだ判断材料が少ない。

 スヴェンはそんな事を漠然と考えながら再度スロットを回す。

 何も思考せず、ただスロットを回し追加のチップを導入する。

 淡々と続ける作業にも似た感覚。そこに決して高揚感も湧き立つ感情も無い。

 ただ有るとすれば技術に関する関心のみ。

 無意味にスロットを眺めていると、左と真ん中でレーナの絵柄が止まりーーなんだて野次馬が多いんだ?

 気が付けばレーナが揃うのか揃わないか、そんな緊迫した状況にスヴェンの背後から見守る客の吐息が漏れる。

 そして最後の右側がレーナの絵柄で止まり、盛大に盛り上がる効果音と共に大量のチップが溢れ出した。


「うおぉ! 5年に一度揃うか揃わないかのスリープリンセスが揃ったぞ!」


 ーーどんだけ低確率なんだよ! 


一人の歓喜の声にスヴェンが内心でツッコミながら溢れ出たチップを全て回収する。

 不意に背後に視線を向ければ、にやりと含みの有る笑みを見せる客の反応に面倒そうに眉を顰める。


「悪いなぁ、連れが大負けしそうなんだ」


 適当に嘘を吐けば、ディーラーを中心にポーカーテーブルで参加者とポーカーを行っているミアから、


「あああぁぁっ!?」


 壮大な絶叫に更に眉が歪む。

 これが嘘が本当になる瞬間なのか。恐らく何か違う気もすれば、単に間が悪いだけだとスヴェンは結論付ける。

 そしてスロットマシンから離れ、カジノに併設された酒場に足を運ぶ。


 ▽ ▽ ▽


 立ち飲みバー形式の酒場には既に賭けを十分に楽しんだレヴィとエリシェがカクテルを嗜んでいた。


「おう、調子は如何だ?」


 当たり障りもないあいさつにレヴィとエリシェの二人は、口元を緩ませて笑う。


「ギャンブルって不思議ね。5枚のチップが5000枚に膨れ上がるなんて」


「今日はたまたま運が良かったけど、金貨600枚相当は稼げたかな」


 確か銀貨一枚で交換するチップは一枚だ。

 それをレヴィとエリシェは千倍まで稼ぎ、カジノのディーラー達を泣かせた。

 現にスヴェンは二人が立ち寄ったであろうブラックジャックテーブルに視線を移せば、惨敗による絶望に涙を流す二人のディーラーの姿が映り込む。

 強運を誇る二人に負けたディーラーにスヴェンは確かな同情心を宿す。


「……同情する」


 二人に聴こえない程度の声でぼやき、カウンターの店員に適当な酒を注文する。

 そして出された青いカクテルを呷り、背後に近付く気配に視線だけを向け、


「金は貸さねえし、報酬が欲しいなら働けクソガキ」


 大敗に涙を浮かべるミアを冷徹に切り捨てる。


「お願い! ほんの少しだけ貸して!」


 ガンバスターの鞘越しに泣き縋るミアに鬱陶しさを覚え、


「アンタの友人は金を貸して欲しいそうだ」


「うーん、いくら友達でもギャンブルにお金は貸せないかな。ってミアはあたしなんかよりもずっと高給取りでしょ?」


「うぅ〜給金の支給日は明日だけど、今日遊ぶお金がもう無いの!」


「じゃあミアは敗北者だね」


 微笑みながら揶揄うエリシェの様子に静観していたレヴィが楽しげに笑う。

 元々必要以上に金を貸す気も無いスヴェンはミアを無視するようにカクテルを呷る。


「……スヴェンさんはお酒を楽しんでるけど、幾ら勝ったの?」


 スヴェンはチップ用の袋に入った枚数を浮かべ、


「500枚だな」


 素直に告げればミアが音を立てて背中から離れた。


「ギャンブル初心者の? スヴェンさんにも負けるなんてぇ〜」


「ギャンブル初心者はミアも同じでしょ。というかスヴェンって初心者なのかな?」


「まぁ元の世界で経験は有るが、初心者と変わりはねえよ」


 実際にギャンブルの経験はミアとそう変わりが無い。

 そもそも興じたのはスロットだけで、ディーラーと勝負ともなればチップの所持数は随分違う結果になっていたかもしれない。

 その意味では今回は運に恵まれた。

 それが今までの事件に対する帳消しにならない事を祈るばかりでは有るが。

 ふとスヴェンはアシュナが戻って居ないことに気が付く。


「そういや、アシュナは如何した?」


「あの子なら奥のポーカーで……あっ、ディーラーと客が泣き崩れたわね」


 レヴィの視線を追えば、ディーラーと三人の参加者が泣き崩れる光景と無表情ながら勝ち誇るアシュナの姿にスヴェンは驚愕を浮かべた。

 普段無表情で感情の動きが判り辛いアシュナだからこそ、勝負に必要な読み合いで優ったと判断すべきかは判らない。

 判らないが、ミアを除いて大勝ちした少女が周りに居ると思えば不思議と負けた気分にもなる。

 別に勝負はしてないが、なぜかそんな感情が湧き立つ。

 スヴェンは自身に浮かんだ感情を隠すようにカクテルを呷り、


「……まあ、チップで百枚ならミアに貸してもいいか」


 謎の敗北感とは別にそんな提案を彼女にした。


「えっ、いいの?」


「ああ、いつカジノだとか娯楽に立ち寄れるかは判んねえからな」


「実はスヴェンさんって遊ぶ時は遊ぶタイプ? それとも気紛れとか?」


「いや、アンタの負けザマを見て愉悦に浸るタイプだ」


「あははっ。次は私が大勝ちしてスヴェンさんを煽ってあげるよ」


 そんな冗談を交えながらミアにチップを貸し与え、意気揚々と駆け出す彼女を見送る。


「なんだかミアが惨敗する予感がするわね。少し見守って来るわ」


「あたしも行くよ。親友がこれ以上カモにされないとも限らないしね」


 ミアがまた負けると予想した二人は彼女の後を追って行く。

 確かにミアが惨敗して泣くのかは、正直に言えば気にもなる。

 気になるが今はゆっくりとカクテルを味わいたい気分でもである。

 同時に異世界に召喚されてから今日まで美味い食事を食べ続けて来た。だからもうあの食事擬きの生活には戻れないだろう。

 元の世界に帰る意志は変わらないが、やはり食事だけが気掛かりだ。

 すっかり自身の舌もこの世界に馴染んだと感じていると、


「スリープリンセスを揃えた幸運の持ち主はお前か?」


 そんな声をかけられ、声の主に視線をわずかに向ける。

 厳つい顔、戦闘で負った傷が身体のあちこちに見える彼にスヴェンは、


「なにか用か?」


 いつも通りの眼差しで用件を訊ねると男はニヤリと笑い、そして用件を口にした。


「ちょいと負けちまって酒を奢って欲しいわけよ」


「酒を強請るなら対価を払え」


「生憎と金はねえんだ。妻にぶち殺されるレベルでな」


 男が妻に殺されようとも如何でもいいが、酒の対価は何も金だけとは限らない。


「金は要らねえ。欲しいのは情報だな、どんな些細な情報でも何でもいい……それこそ世間話程度でもな」


「マジか、兄ちゃんは鋭い目付きに似合わず気前が良いんだな!」


 男は早速隣りの席に座り、バーテンダーに酒を注文しては話をして切り出した。


「ここ最近巷で噂になっている話なんだがな? ガルドラ峠に出没する野盗の話、兄ちゃんも聴いたことはぐらいは有るだろ」


「ああ、モンスターが蔓延る守護結界領域外でよくもまあやるなと」


「確かに危険も多ければリスクに利益が釣り合わねえ。だがな? 襲われた行商人は子供に襲われたと言ってるんだよ」


 子供に行商人が襲われた。見た範囲で治安のいいエルリアで子供が野盗に身を落とす。

 考えられる理由とすれば周囲との環境が合わず、折り合いも付けられず野盗に身を落としたか。あるいは単純に稼ぎとして手っ取り早いと判断したか。

 野盗に強制された子供の可能性も高いと判断したスヴェンは男の語る噂話に興味を示す。


「襲撃した野盗の人数は? まさか魔法が使える大人がガキ一人に襲われたなんてことはねえよな?」


「いや、そのまさかさ。野盗はたった一人、それもまだ10歳程度の子供となれば行商人は躊躇しちまうのさ。まぁ他にも野盗の一党が居るようだけどな」


「他の野盗はともかく、確かにガキを討伐すんのは躊躇もしちまうか」


「だから現状はケガをしない程度に追い返してるそうだ」


 スヴェンは襲われた行商人の考えは甘いと断じながら冷徹な眼差しを浮かべる。


「武器を手に魔法を唱え、襲って来る時点でガキだとか性別なんざ関係ねえと思うがな」


 明確な敵意で武器を手に持つならそれはもう戦士だ。

 例えそれが子供であろうとも等しく戦士なのだ。だからこそ区別も無く一人の戦士として相手にするのがスヴェンなりの自論だった。

 ただスヴェンは自身の自論を他者に押し付けることはしない。相対した敵がどんな存在で、生かすも殺すもその者達の決断次第だからだ。


「兄ちゃんは情けが無いねぇ。ただ、魔法騎士団も野盗に成り下がった子供をどうするのか判断に迷ってるらしい」


「捕縛か危険分子として討伐か、それとも野盗に襲われた事実を無視して見逃すのか……何方にせよ対応はモンスターの群れの後になんだろ」


「ラデシア村の往来に支障が出ているからなぁ。はぁ〜最近はあちこち物騒で気が滅入る」


「他にも物騒な噂があんのか?」


 興味本位で訊ねると男は届いた酒を呷りながら、


「ルーメン村の南に位置する森で虐殺された死体が発見されただとかそんな噂程度だな。あとはエルリアの北西部だとか他の地方の情報だと明日発売される情報誌頼りなのさ」


 明日に販売される情報誌から他の地方の情報を得るのも悪くはない。

 そう判断したスヴェンは、カウンター席に自身の酒代と男に酒代を置く。


「そうか。旅行でジルニアに向かうことになった時は注意しておこう」


 スヴェンは残りのカクテルを一気に飲み干し代金を払ってからレヴィ達の下へ歩み出す。


 ▽ ▽ ▽


 またポーカーテーブルに着いていたミアの様子をレヴィとエリシェと共に他の客に混ざりながら観戦する。


「……うーん、これは負けたかも」


 表情をげんなりさせて語り出したミアに、他の参加者は余程手札が良いのかそれとも単にミアの惨敗を目撃していたのか、ゲームに付いた参加者は勝ちを確信した笑みを浮かべる。

 今来たばかりのスヴェンにはゲームの進行状況が分からないが、周囲の観戦客が浮かべるミアへの同情の眼差しがある種の結果を十分過ぎるほど語っていた。

 つまり情報を得ている間にミアは負け続け、今もまた負けようとしている。

 生憎とスヴェン達側からはミアの手札は見えないが、彼女の先程の言動は明らかなブラフだ。

 その証拠に彼女の変化は表情だけで口調は比較的冷静なものだった。

 普段の鬱陶しい彼女なら口調も喧しい。だからこそスヴェンは少ない情報からミアが勝ち確の手を揃えているのだと判断した。

 

「では同時に手札を公開してください」


 同時に公開される手札に観客から歓声が沸く。

 スリーペアを揃えた二名とワンペアだけの一名。

 そして勝ち誇った眼差しを浮かべるミアの手札は最強の組合せ、スペードのロイヤルストレートフラッシュだった。


「うん! 私の一人勝ち!」


「クソ! 騙されたぁ〜」


「確実に勝てると読んでんだけどなぁ」


「さっきのノーペア続きの娘とは思えない強運だ!」


 一人の参加者が発した言葉にスヴェンは耳を疑い、ミアとエリシェの苦笑混じりの笑みを浮かべていた。

 ポーカーはひと試合五セットのゲームだ。

 それが全てノーペアで敗北するなど余程運が悪ければならない。

 ミアは人に対する観察眼はそれなりに有している筈だ。だから今までの惨敗は改めて考えれば腑に落ちない点が多い。

 

 ーーまさか、アイツは周りの参加者を欺すためにわざと惨敗したのか?


 ポーカーも立派なギャンブル、取り分け心理戦が主なゲームとなれば騙し合いは必須だ。

 イカサマも可能に思えるが、ディーラーの眼に現れている魔法陣がそれを許さないだろう。

 他人にチップを借りることを前提としたミアの作戦にスヴェンは、単なる偶然だと結論付ける。

 その後スヴェン達が見守る中、ミアは手札が揃えられず惨敗を重ね最終ラウンドを迎えた頃、


「ここに私の全てを賭ける! オールイン!」


 自棄になったのかチップを全て賭け、それを見た参加者達はにやりと笑みを深めた。

 

「ならオレもオールイン!」


「じゃあオールインだな」


「もうオールインしかないじゃない」


 全員が手札に自信を持ってオールインを宣言した。

 これの何処に心理戦が有るのかスヴェンには何一つ理解できないが、丁度戻って来たアシュナが小首を傾げる。

 そしてディーラーの宣言に参加者全員の手札が公開されるのだが、観戦していた者達は結果にどよめく。


「……これって?」


「……読みは良いんだがなぁ」


「あちゃ〜単純な読み合いならミアは強いけど、運が絡むとダメなんだよね」


「初手でノーペアは当然、手札を交換してもノーペア続き……あの子の運と確率って如何なってるのかしら?」


 スヴェンはポーカーテーブルに公開された其々の手札に視線を向けた。

 最終ラウンドはミアの除き全員がワンペア、肝心のミアはノーペアという悲惨な結果が彼女に現実を突き付ける。

 そして崩れるように床に座り込んだミアが結果に泣き叫ぶ。


「また私の一人負けっ!?」


 如何やら彼女はどうしようもなく賭け運に見放されているようだ。


「そろそろアイツを回収して帰るか?」


「うん、お小遣いも沢山増えて満足」


 アシュナは既に換金を終えたのか、大量の硬貨に膨らんだ金袋を両手一杯に抱えていた。

 一体どれだけ大勝ちしたのか気にはなるが、彼女が自由に使える金が増えたならそれで良いとさえ思える。

 

「それじゃあミアを連れて帰りましょうか……多分あの子はお酒とギャンブルはダメね」


「敗北者ミア〜そろそろ帰るよ」


「敗北者はやめてぇ〜大負けたした私が惨めになるからぁ!!」


 こうして四人はカジノから立ち去るのだが、スヴェンの耳にこんな会話が届く。


『あのお客人様方は出禁だ』


『あぁ、あの青髪の美少女と大剣を背負ってる男以外な』


『オーナーに顔向けできねえよぉぉ!!』


 レヴィ達の出禁が確定した中、果たして本当の敗北者は何方だったのか。

 それは三人の強運に負けたカジノ側なのかもしれない。

 スヴェンは賭けも勝ちも程々に行うべきだと結論付けながら、和気藹々と話し合う三人ーー気が付けばアシュナの姿は既に無く、ミアは既に立ち直ったようだ。

 なんとも忙しない二人にスヴェンは呆れた眼差しを向け、宿屋フェルに向かうのだった。

 

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