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歴史改竄(1)

 さて、「海軍補充計画」に従い、「大和」級戦艦を量産し、我らが帝国海軍を未曾有の規模にするには、どう歴史をこねくり回す必要があるでしょうか??

 前提条件から順に、歴史の積み木を山が崩れない程度に組み替えていきましょう。

 


 と言っても、タイムスケジュールの問題から、時間があまりありません。

 

 なぜなら、「海軍補充計画」や「漸減戦術」が成立する歴史でなくてはならないからです。

 

 つまり、ロンドン海軍軍縮会議まで史実と同じもしくはよく似た歴史の流れでなくてはいません。

 少なくとも、史実同様のワシントン、ロンドン海軍軍縮会議が成立しているという前提条件が必要です。

 また、日本海軍がアメリカを第一の仮想敵国としなければなりません。

 でなければ、日本海軍の戦争(戦闘)計画そのものが史実とは異なる方向に行ってしまうという、実に困った状況が横たわっているからです。

 

 だから、日露戦争で鉄道王ハリマンとの約束を守ったり、日本が第一次世界大戦に積極的に参戦するなどのフラグが成立してはいけないのです。

 そこで前提として、スタートラインを「ロンドン海軍軍縮会議」に設定します。

 

 では、スタートラインが決まったところで、順番に見ていきましょう。

 


 さて、ロンドン会議以後約二十年間、大日本帝国の発展と繁栄に邪魔な存在は何でしょうか?

 筆頭にあげられるのは、アメリカ合衆国内のF・D・ルーズベルトを筆頭とする反日ロビーにしてアカどもです。

 しかもこいつらは、現代から(いや当時の国際常識から)見ても理解に苦しむ理由により、チャイナに妙な幻想と妄想を抱いています(まあ、現代でも似たようなものですが)。

 

 しかも、彼らの手前勝手な妄想を具現化すべく大金投じて、日本イジメをしています。

 

 一度でも、チャイナの現状を自分の目で見ていれば、歴史が変わったんじゃないかとすら思えてくる、でっかい勘違いぶりです。

 

 打通作戦により、アメリカをチャイナの幻想から解放してやった帝国陸軍に感謝して欲しいぐらいです(笑)。

 

 そして、当時のアメリカ上層部の対アジア政策と共産主義に対する姿勢を見ていると、アカなのかバカなのか、それともそのどちらか、もしくは何かしらソ連とシナに妄想を抱いているか、大枚積まれたのか、単にだまされていたのか、アカの下僕だったのか、としか考えられません。

 恐らくどれかが正鵠を得ているのでしょう。

 

 つまりは、この日本にとってのサタンとベルゼブブ率いる悪魔の軍団を、何とかしないといけません。

 でなければ、日本自身がどういう道筋を歩こうとも、昭和二十年あたりにアメリカの圧倒的国力で日本が押しつぶされてしまう可能性が極めて高いからです。

 

 とりあえず、ルーズベルトとその不愉快な仲間達には、政治的に失脚か選挙に敗北でもしてもらえれば、アメリカの政治姿勢そのものも変化するので、歴史は大きく揺り動くでしょう。

 

 だがしかし、そう話を都合よく持っていくのも問題があります。

 取りあえず、ルーズベルトどもは横に置いておきしょう。

 

 いっぽう、諸悪の根元たる共産主義者さえいなければ、日本自身も大陸に入らぬちょっかいを出す必要性も減少(脅威そのものが減少するから)するでしょう。

 

 大陸に必要以上に目を向けなくてよいならば、「八八艦隊計画」の頃のようにアメリカを見据えた海軍偏重の軍備を建設すればよくなります。

 そして共産主義者がいなければ、必要以上に満州に軍事的に進出する必要も薄れますし、大陸での争乱が引き起こる可能性も激減します。

 

 また、そもそもアカがいなければ、アメリカ国内でのアカの浸透も減少し、彼らがレーニンの「予言」を実現すべく画策した世界大戦への道のりを、アメリカが歩む必要性もなくなります。

 

 つまりアカがいなければ、日米は何となく相手が気に入らないながらも、戦争なき睨み合いだけに終始するでしょう。

 そう考えれば、共産主義こそが日本にとって、そして世界にとっての最大の諸悪の根元といえるかもしれません。

 

 ただし、アカの総本山たるソ連が1931年以降簡単に崩壊するという可能性は、独ソ戦争の序盤以外ほとんど見つけられません。

 だから、短期間でのアカの消滅というフラグを成立させることは難しいでしょう。

 

 スターリンの独裁は、生半可なもんじゃありません。

 伊達に何千万人もの自国民を殺してないということです。

 

 と言うわけで、結局日本自身を見ざるを得なくなりました。

 


 さて、史実と同じレールの上と考えると、何をどうすれば良いのでしょうか。

 

 1931年と言えば、満州事変を起点とする、プロ死民にジョブチェンジしたサヨクセンセー方が悪魔の所行と言い立てる、15年戦争が始まった頃です。

 

 極めて単純に見た場合、日本を発展させるためにも、日本自身による直接的なシナ大陸での火遊びもホドホドにしたいところでしょう。

 満州事変はともかく、日支事変は必ず避けて欲しいところです。

 

 日本の財政悪化は、先に書いた通り日支事変だけが引き金や原因ではないのですが、これがあるとないでは大違いです。

 何より大陸へ深入りしたら陸軍の肥大化につながり、大艦隊建設の道のりが遠のいてしまいます。

 

 ちなみに、大正時代末期から続いていく日本の負の連鎖は、戦後不況、関東大震災、金融恐慌、世界恐慌、昭和恐慌、東北の凶作、米での人工絹布(化学繊維)の開発、統制経済の実施、慢性的な赤字続きの植民地経営(朝鮮・台湾)となります。

 

 ただし総力戦経済の側面だけを見ると、満州事変は外せないでしょう。

 もちろん不発ではなく、限定的な形でも良いから「勃発させる事」に対してです。

 

 国際政治的にはともかく、満州という新たなフロンティアの存在が日本の景気を上向きにした事は間違いありません。

 大きな投資先の出現は、経済の起爆剤になる可能性を大いに秘めています。

 

 できれば、熱河省侵攻、もしくは上海で大きな騒動を起こさずに、英仏と政治的取引をして何とか満州自治や独占を黙認させる事ができれば、この時点では文句ナシと言ったところでしょうか。

 客観的に日本側から見ても、欧米が提示した満州の自治化で十分な得点だと思えます。

 要するに、「急いては事をし損じる」という事です。

 

 アメリカとソ連、そして全てに不満な中華勢力以外は、ちょっとした不満を抱えつつも大きく文句を言わない可能性が高くなるでしょう。

 

 そして、日本が満州事変で国際的非難が低くなると、国際連盟脱退という事態に発生する可能性も低くなります。

 植民地獲得のための紛争なんて、それまでの欧米列強にとって日常茶飯事で、当時の列強外交の常識内におさまる事件に過ぎません。

 要は、出しゃばりすぎなければよいのです。

 

 そしてそのまま日支事変が発生しなければ、第二次世界大戦を迎えるまでの日本は、どことも連携せず国際的に宙ぶらりんのまま、開戦を迎えている可能性も高くなるでしょう。

 

 さらに、英仏との関係悪化フラグが少なければ、1930年代下半期においてドイツと関係を強化する必要性も薄れます。

 ソ連や中共に対する防共なら英国と関係強化で十分だし、国連に加盟し続けている場合、英国と手を組む方が自然だからです。

 英国も反共で日本が握手を求めるなら、拒む理由は低いはずです。

 

 だいいち、日本の国際貿易関係から見れば、英米との関係は切っても切れません。

 英米との関係悪化が無ければ、経済的にシナへの偏重も止められます。

 

 英米の資本を日本市場に入れることが外交的に必要になるでしょうが、上昇傾向にある途上国にとっての外資は景気の起爆剤足り得ます。

 

 日本経済にとって悪いことはほとんどありません。

 

 日本政府がしっかり腰を据えて外交を行い、軍事力を外交上のカードとしてそれなりに使えるのなら、英米の影響力浸透も最低限に止められるでしょう。

 

 また、アメリカが国際社会の中において、日本の反共姿勢を肯定する政権である限り、最低限の日本の既得権は認める姿勢を通すしかありません。

 そして、日本的無定見さのままダラダラと時を過ごせば、欧州で大戦争が勃発した時、英米協調の経済姿勢ながら政治的には完全な宙ぶらりん状態、という可能性がかなり出てきます。

 

 なお、日本がシナの泥沼に足を取られた原因に、同大陸で日本が頭を出しすぎた事と、共産主義の暗躍、国府軍の態度などがあります。

 

 しかし、日本が満州事変を起こしたとしても、史実ほど出過ぎなければ、、北京から満州南部にかけて中間地帯への進出が抑制されるので、チャイナ中央との衝突が少しは回避されます。

 また、日本が必要以上に出しゃばらなければ、国府軍の目も少しは緩和できます。

 また、日本政府の反共姿勢をもう少し明確に国府軍にアピールできれば、少しは妥協できるかもしれません。

 

 もちろん、英米と協調するなら、日本の勢力圏に外資を入れる必要がありますし、欧米にとってのチャイナの中枢である上海で日本が悪者にされるような事件を起こしてもいけません。

 一時的に一方的に攻撃されるような事があっても、チャイナを悪者にして欧米諸国と連携する姿勢を崩してはいけないのです。

 

 とにかく日本側としては、「出る杭は打たれる」という普遍の理論を、支那大陸で回避する方向しかありません。

 日本が大陸で槍玉に上げられる行動を控えれば、日支事変のフラグ発生も防げるでしょう。

 

 あと大陸に対しては、国共合作を可能な限り阻止することでしょう。

 そうしておけば、放っておいても内戦に明け暮れてくれる筈です。

 


 いっぽう、日本国内で「五・一五事件」や「二・二六事件」など日本軍部が政治的に強い勢力を持つようになった一連の軍事クーデター、テロがどうなるかによっても、その後の情勢がずいぶんと違ってきます。

 

 私が個人的にここをねじ曲げるのに非常に重要なファクターだと思うのは、張作霖爆殺事件直後から首相に就任した浜口雄幸が暗殺未遂により早逝せずに、5年程度の安定政権を運営するところにあるのではと思います。

 

 もともと、大恐慌以後の日本の財政改革や経済政策の最初のレールを引いたのは、実質的に浜口内閣の浜口雄幸首相と井上準之助蔵相です。

 この二人が行った、緊縮財政と金本位制復活による輸出拡大を狙った改革は、大恐慌というアクシデントにより挫折を余儀なくされます。

 そして彼らの数年後に、高橋積極財政による経済拡大という逆の路線が組み上げられたのです。

 しかし、このテロの凶弾の前に早期に倒れた二人が、史実より数年長く存命だったのなら、浜口政権により日本の政治は健全な状態が維持されるのではと思われます。

 

 また、民政党率いる浜口は、統帥権干犯問題などでも軍部の権限拡大を押し止める最後の防波堤と見る向きもできるでしょう。

 さらに幣原外相による融和外交が、米英との関係緩和を推し進める可能性も高くなります。

 

 非常に重要な時期に存在した浜口政権が、4〜5年間ぐらいの期間維持されたのならと思わずには居られません。

 

 ちなみに、平成のライオン宰相小泉純一郎(01年〜06年)の祖父も商工大臣として顔を並べていたそうです(開戦時も何かの大臣していた筈)。

 

 そして、彼が長期政権を保持するフラグとしては、何としてもテロの凶弾に倒れない事。

 そして満州事変では、軍部に徹底的なパージを仕掛けることです。

 水面下で滅茶苦茶恨みを買いますが、この時点で軍の暴走に一度でよいから歯止めをかけておかないと、日本の側から日支事変を引き起こす土壌が完成してしまいます。

 


 もっとも仮にライオン宰相率いる浜口政権が、それなりの安定をもって5年間続いたとしても、その終末は視野狭窄な不平分子(軍部・国粋主義者)による幼稚なクーデターもしくはテロ行為となるでしょう。

 

 残念ですが、当時の日本においてテロやクーデターを否定するファクターはほとんど見られません。

 せいぜい、警察や憲兵組織を帝都内においてのみ強化して、被害を最小限に止めるのが関の山でしょう。

 

 権力に巣くう魑魅魍魎と純粋培養の馬鹿が相手なので、事前に大量摘発して徹底的にパージしない限り止める手だてがありません。

 そんな馬鹿を内に抱えつつ、統帥権に足かせつけ、満州事変で徹底パージを行い、英米資本を満州に引き入れたりしたら、後で何が起こるか予測するまでもないでしょう。

 軍部や国粋主義者が、時期を見て激発するのは明白です。

 

 つまり、賢者達による日本の舵取りの結果、それを理解しない愚者によって、史実と同じ情勢が訪れる結果に変化はなくなってしまいます。

 

 ですから、史実と同じレールを避けるためには、さらに少しどこかをねじ曲げないといけません。

 

 そしてその一手が、「統帥権」により軍事力を統率するとされる昭和天皇の存在があります。

 

 そう、架空戦記でよくあるように、「二・二六事件」のような大規模クーデターで昭和天皇に頑張っていただくのです。

 ここで日本国内の馬鹿どもを一掃した後、その反作用で立憲態勢を強固にする方がやりやすくなります。

 まさに水戸黄門並の「黄金パターン」です。

 

 もしくはまったく逆に、昭和天皇がまったく動かずにクーデターがとことん悪化するまで放置してもらいましょう。

 そうして、世間に軍部の暗部をとことん見せつけさせて、民衆の軍不信を増大させるというショック療法で日本の政治をもう少しマシにする事ができるかもしれません。

 大正から昭和初期は、大正デモクラシーの流れもあって市民の反軍姿勢も強いので、その名残があれば国民の感情面でも後押しが期待できます。

 

 だいいち、浜口政権内で統帥権に何らかの足かせがつけられていたら、遵法精神の強かった昭和天皇が動かない可能性が高くなります。

 

 そして後者の方が、皮肉が効いていて面白いかもしれませんね。

 (市販の作品でもこの筋道、いまだありませんし(笑))

 つまり天皇がどうどちらに動こうとも、日本にとって都合良く陸軍の主流派が一時的に殲滅される事になります。

 

 そしてクーデター後、浜口内閣の意志を引き継ぐであろう新政府(やはり、浜口のライバルだった犬飼毅による内閣か?)主導による日本政府の方針が親英米に傾いて、日本が連合国として欧州で戦っている状況すら比較的簡単に予測できます。

 

 この道筋こそが、日本にそれなりに明るい未来をもたらす架空戦記小説での王道と言えるのではないでしょうか。

 

 そして、浜口内閣が日本改革の基礎を成し遂げ、軍部急進派と差し違えの形で消滅した後に、政党政治家の生き残りと陸軍に対してアドバンテージを握り善玉に担ぎ上げられた海軍主導による政府が構築される事となります。

 


 あ〜、はいはい。

 陸軍も海軍も旧軍としての悪弊を持っているのは同じじゃないか、とおっしゃる方は多い事でしょう。

 私の空耳でしょうか、何やらシュプレヒコールすら聞こえてきそうです。

 

 ですが、間違ってはいけません。

 

 ここでは、「海軍補充計画」達成こそが目的であり、その為にも海軍の台頭が必要なんです。

 ぶっちゃけ、海軍のせいで昭和25年以降の日本がどうなろうと知ったことではないんです。

 ただ、強大な艦隊を作り上げる、大和を量産するという事こそが目的なのを忘れないでくださいね。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 日本国内の愚か者共とルーズベルト政権への辛辣な指摘が本当に面白かったです。 海軍大拡大の目的がブレないのも良いですね。
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