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バトル・プログラム

 国力差1対6以上。

 表面的軍事力格差1対3以上、表面的海軍力1対1・5という劣勢をいかにして克服し、短期的・戦略的勝利を勝ち取りましょうか。

 

 これは、難しい問題です。

 

 ジオンと連邦の差とほとんと同じです。

 先制全面核攻撃でもしないかぎり、日本に勝利はあり得なさそうです。

 

 もしくは、アメリカがマタドールのマントに突っ込んでくる牡牛のようであれば、西部太平洋に日本の全戦力を集めて、米艦隊を殲滅してやればいいのですが、そんなに都合良く話がいくでしょうか。

 

 外交も踏まえて見てみましょう。

 


 さて、この頃のアメリカが気になるのは、1に世界経済の覇権確立で、2にソ連+共産主義の脅威で、3つめぐらいにようやくアジアを含める日本との関係が来るでしょう。

 

 市場としてのシナは、内戦ばかりして軍需以外魅力が薄いですし、日本という壁がある以上、簡単にお金儲けはできそうにありません。

 シナに深く根を下ろしているイギリスなど欧州列強の目も気にしないといけません。

 満州を虎視眈々と狙うソ連も無視できないでしょう。

 

 これをアジア・太平洋限定のアメリカからの視点で見ると、フィリピン、グァムが有力な植民地で、フィリピンは形式的には独立しています。

 フィリピンは革命前のキューバに近い政治的ポジションでしょうか。

 

 拝金主義に染まったアメリカってのはそんなもんですね。

 

 そしてキューバがそうであったように、常にクーデターの危険をはらんでいる事にもなります。

 今でもフィリピンはクーデターがたびたび発生しているのが良い例でしょう。

 まあ、大戦で勝利して世界の覇権を手にしたと思いこんでいるアメリカ様にとって些細なことですけどね。

 

 いっぽう日本から見ると、アジアでの争乱の火種を利用して一気に勢力拡大したいというのは本音のひとつでしょう。

 日本人にしてみれば、ご先祖様の血であがなった当然の利権と言いたいところな筈です。

 

 しかし、アメリカもしくはソ連の風下に立たないと決めた以上、ある程度アジア世界を自立させて自分中心に団結させないかぎり、政治的な視点から日本に未来はありません。

 あるのは、経済競争によるじり貧だけです。

 当然ですが、日本単独では米ソに対抗できるだけの基礎体力がありません。

 

 日本が外交巧者なら、インドシナ、インドネシア、フィリピン、ビルマでの独立の火種を裏からあおって自分は知らんぷり。

 欧米が手を出してくる前に、自分の勢力圏に取り込んでしまうというのが突破口になるのでしょうか。

 

 が、多少現実的な日本を見ると、核戦力でもない限り、史実での大東亞戦争同様に世界を敵にして袋叩きされるのが関の山です。

 

 やっぱり戦争などしてはいけないのでしょうか。

 

 いや、これではいけません。

 もう少し日本に都合よく考えてみましょう。

 


 敵はアメリカだけ。

 

 ここではイギリスは、仲介役として以上は無視。

 アメリカとの争いで、他の植民地に手を出すぞというポーズを見せるか、ハナっから仲介相手にしてしまいましょう。

 

 ソ連に対しては、満州以外のシナ本土への浸透を認めて中立確認。

 

 シナがどうなろうと知ったことではありません。

 それに日本にとっては、当面満州があれば経済的な問題もゼロです。

 モンゴル経由で華北一帯ぐらい貪欲な熊にくれてやればよいのです。

 どうせ自分の財布じゃないですからね。

 

 フランスは、インドシナで自滅しつつあるので、利用価値がありそうです。

 アンクル・ホーとの仲介してやるからと、アメリカへの仲介相手に使うのです。

 

 複数チャンネルの確保は外交の必須です。

 

 そうしておいて、フィリピンの一部資本家以外の市民革命勢力を育て上げて、武器や軍事顧問団ともどもフィリピンに送り込み、アメリカ傀儡政権をひっくり返してしまいます。

 

 もちろんそこにできるのは、満州国のお題目にあった王道楽土に根ざした民主的な社会です。

 

 当然、怒り狂ったアメリカがフィリピンに手を出そうとするでしょうが、国際的に内政干渉だと訴え、アメリカの初手を止めてしまいます。

 

 そしてアメリカが焦る中、フィリピンでのアメリカ利権をことごとく排除。

 アメリカが激発するのを待ちます。

 

 その間日本は、国際社会の優等生を気取って、表面的には何もしていないフリをします。

 とにかく、アメリカが軍事的に動けないように民族自決を錦の御旗にして国際世論に訴え、世界中の目をアジアに向くようにします。

 

 おそらく共産圏は、アメリカが少しばかり弱くなり日本の圧力が南に向かうのならと、当面日本を支持するでしょう。

 欧州にとっては、近所に植民地を持つ英仏以外は無関心です。

 その英仏も、中東問題も抱えていてリアクションできる能力はありません。

 それにアメリカが少しだけ弱くなるのはむしろ好都合でしょう。

 植民地人にいつまでもデカイ顔させておく事など、歴史と伝統有る欧州人にとって不愉快極まりません。

 


 このまま日本有利の逃げ切りゴールなら、日本にとっては戦略的大勝利です。

 このままジリジリとアジア中で同じ事を繰り返していけば、本格的な戦争を経験せずに自らの勢力圏を広げることは難しくないはずです。

 

 そして稼ぎ出した時間を使かって何とか核兵器を開発してしまえば、アメリカも迂闊に手を出さないでしょう。

 アメリカにとって、自国が焼け野原になる戦争は、とうてい許容できるものではない筈です。

 

 しかし、アメリカが日本の手に乗るほどお馬鹿でもないし、大人しいワケもありません。

 もっともらしい手前勝手な理由をつけて、カタストロフ・ポイントを超える直前に、フィリピンの元政権の復活をお題目にして大軍をしたててくるでしょう。

 

 自分の財布がかかると、アメリカとはそうした行動をとる国家です。

 


 アメリカが大軍を準備し始めた時点で、日本も動き出します。

 しかも、アメリカと本格的に対立し始めた時からオフレコで戦争準備しておくので、アメリカ以上のスピードで自らの勢力圏に軍事力を展開して、言い放ってやります。

 

 曰く「内政干渉には断固反対する」と。

 

 そして、アメリカのやろうとしている事を内政干渉と断定。

 国際法・国連憲章にも抵触すると非難して、日本が軍事力を行使する事の正義を確保。

 

 さらには、一極支配を目指すアメリカに不満を持つ国々から内々の協力と講和の際の仲立ちを依頼。

 同様にアメリカを敵とするソ連に対しては、支那利権でもちらつかせて、核兵器供与をちらつかせてもらうよう話を付けておけばよいでしょう。

 

 あとは焦り・怒り狂ったアメリカの大艦隊がフィリピン目指して来るのを待つだけです。

 

 決戦場は、日本領のパラオ諸島東方海上。

 

 艦隊はパラオと沖縄に集結させ、航空戦力はマリアナ、トラック、パラオに集中。

 

 米艦隊が網にかかった時点で、文字通り全戦力を突っ込んでの一斉攻撃を仕掛け、自軍の損害を省みずに米太平洋艦隊を随伴船団ごと殲滅してしまいます。

 

 この想定が成立した場合、アメリカ側は日本が形振り構わず全てのチップを盤上に乗せてくるとは考えないでしょうから、日本の勝利する可能性はかなり高くなると予測できます。

 

 もちろん日本側が勝利できたとしても、海軍が半壊するぐらいの損害を出すでしょう。

 しかし、それで米艦隊を殲滅できれば、ここでは戦略的には日本の勝利です。

 

 アメリカ側の侵攻戦力が激減して力を一時的に無くし、一度に数万の死者が出れば政治的、戦略的には勝ったも同然です。

 

 フィリピンに向かう以外のアメリカに対する攻撃は行わずに、後は再度国際世論に訴えて勝ち逃げを目指します。

 

 そして、再度侵攻したくてもその戦力がなく、数万の死者を前に政府・大統領を非難する世論にアメリカも矛を収めざるを得なくなるかもしれません。

 

 ここで幼稚に怒り狂って見せても、アメリカが得るものはあまり多くありません。

 先ほども書いた通り、日本を全面屈服させたところで、日本が背負い込んでいたものをさらに背負わされるだけ。

 日本と長期の戦争をしたところで、喜ぶのは他の列強だけ。

 

 得る利益と被る負債を考えると、到底損得勘定の合う取引ではない筈です。

 


 本来なら、自らの絶対的と信じられた軍事力に楔を打ち込んだ日本を完膚無きまでに殲滅したいところですが、大侵攻部隊を再度揃えるのには時間がかかります。

 しかも、最初の戦闘で苦戦することも分かりました。

 そのうえ、日本を叩きつぶしたら、ソ連に対するアジアの防波堤が決壊することぐらいもう理解しています。

 

 また、核兵器を使っても、カウンターの宣伝戦略で自分たちが悪者にされるのがオチです。

 それに敵が使う可能性が皆無でない以上、核兵器もおいそれと使えません。

 日本を完膚無きまでに叩きつぶしても損するだけ。

 

 となれば、停戦と話し合いしかありません。

 


 対する日本側としては、アメリカが当面矛を収めるといっている以上、国際的な会議を行って紛争として事態を解決してしまえば後は終わりです。

 

 また勝ち逃げするためとアメリカの怒りを回避するために、会議上ではアメリカの短絡的な行動を非難すると共に自らの行きすぎた軍事力の行使を詫び、日米双方の市場開放を促進すると結んでしまいましょう。

 シナや満州市場はここで、何度目かの解放を宣言してやりましょう。

 

 ソ連と裏約束があっても、アメリカと仲直りする以上はソ連は無視です。

 それに、古今東西、約束事を守るロシアの政府なんて聞いたことありませんからね。

 こっちが約束破ったからと言って、ロシア人以外は誰も非難しないでしょう。

 

 そして殴り合った後のアメリカとの交渉で、アジアの市場独占をカムフラージュにした、日本のアイデンティティー確保のための戦争とアメリカ側に思わせます。

 

 これ以後のアメリカは、ことあるごとに日本に難癖をつけるでしょうが、常に日本が追いつめられたら何をしでかすかを思い出さねばなりません。

 対する日本も、一度の勝利に奢ることなく毅然とした姿勢を示し続ける限り、英米を中心とする西側社会の中で確固たる地位を占める道が開けてきます。

 

 恐らくこれが最も穏便な決着の付け方でしょう。

 

 派手なだけの連続した殴り合いなんて、亡国に繋がるだけ。

 立派な軍艦なんて、観艦式で並べて置けばよい、床の間の日本刀と同じで全然良いものなのです。

 


 以上、途中にあったものとは違った想定を展開しましたが、最終的に私が至った結論がこれでした。

 

 途中では、一度全力でぶつかったあとでの朝鮮戦争型戦争の演出と考えましたが、それでは日本に明るい未来はないと思われます。

 

 そして人も国家も一度本気で殴り合いを行わないと、互いを認めての共存はなかなかできないものです。

 

 今の欧州が比較的大人の対応するのは、長い歴史の間に何度も戦争を繰り返してきたという歴史的ファクターが大きいと思います。

 その逆に、近代において本格的な殴り合いとは無縁だった今の東アジアは、心理面の奥底で外交を難しくしているのではとも思えます。

 

 そう言う心理面から見ると、日本の計画した海軍補充計画と漸減戦術というのは、日本が自らを取りまく情勢を日本側から理解し、回答として示した感情的表現を具現化したものでしょうか。

 

 だからこそ攻撃的な艦艇ばかりであり、あそこまで手前勝手な迎撃戦術を組み上げたのではないかと思います。

 


 以上、今回は戦闘面での細かな分析はほとんど行いませんでしたが、大艦隊を揃えるのはともかく、この時代での大艦隊のガチンコ勝負というのはやはり難しというのが今回の結論となりました。

 



 了

ここまで駄文に付き合っていただき、ありがとう御座いました。

作ることが主題で戦闘が主題ではないので、これにて幕となります。

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