ストラテジー・バトル
さて、舞台、双方のキャスティングが出そろったところで、もう一度昭和25年(1950年)の全般状況を整理して見てみましょう。
はたして、日米が正面決戦する事になるのでしょうか。
まずは、戦争中の史実との大きな違いと、列強各国の状況とポジションです。
・戦争概況
・欧州の事情により、史実通り第二次世界大戦勃発。
・日本が当初から英米寄りの中立。枢軸同盟にも加盟せず。
・欧州の戦力がアジアから欧州に向かう。
・ソ連との対立は途中まで同じ。
・日本が1941年中頃より連合国で参戦。
・世界の流れに沿ってアメリカも少し遅れて参戦。
・ドイツは世界中からタコ殴り。
・史実より三ヶ月程度早いドイツの無条件降伏。
・連合軍の握手する場所は、日本の参戦と米の全力発揮によりベルリン東方のオーデル川。
・戦後概況
国際連盟→国際連合
常任理事国
アメリカ、イギリス、フランス、ソ連、日本
・各国一口メモ
アメリカ:世界の半分のGDP。圧倒的軍事力
イギリス:青息吐息。でも頑張ってる
フランス:青息吐息。各地でもめ事も多数
ソ連 :ナチのおかげで国土がガタガタ。まだリアクション不可能
日本 :戦後経済停滞、膨脹傾向再燃?
・その他の列強一口メモ
ドイツ :各国の占領統治中
イタリア:途中で寝返ったけど、やっぱり再建中
チャイナ:ブッチギリの内乱まっただ中
インド :独立したばかり
・単純な各国の関係
・アメリカが共産主義との対立を深刻化。
(ソ連対それ以外の列強。単純な国力差=1対4)
・アメリカ一極傾向強まる。
・大戦の舞台となった欧州は、ソ連の脅威もありアメリカに一時的に従属。
イギリスですら大きなリアクションは不可能。
・アジアでは、日増しに態度を強めるアメリカに、日本が感情面で反発。
ソ連も自らの不利を覆すため日本を焚きつける。
・大戦終了と共にアジアでの経済対立再燃。
・シナ内戦は、日支事変がないので辛うじて国民党有利。
ただし、満州は日本の勢力下。これに英米などがくっついている。
・インド地域が独立しインドシナ内戦開始を始め、東南アジアで独立の煙がくすぶり出す。
中短期的総力戦指数(世界=20)
アメリカ:10
ソ連 :3
イギリス:2
日本 :1・5
その他 :3・5
(※長期的視点なら、アメリカの力は最大で世界比率の7割に達する。)
核戦力
アメリカ:既に保有。圧倒的優位
ソ連 :史実通りなら1949年開発
イギリス:史実通りなら1952年開発
日本は、欧米からの技術導入や奪取を懸命に図ったとしてもソ連、イギリスの数年遅れ、1950年頃なら開発中というのが関の山。
保有するのは50年代後半ぐらいだろう。
ざっとこんなところでしょうか。
単純に見ると、史実の10年遅れで史実と同じ日本降伏フラグが出現しそうな予感が強いですね。
まあ、それはともかく、ここからいくつか可能性をあげてみましょう。
その1 日本が妥協
日本が、アメリカなどに満州市場を全面開放し、アジアでの利権を共有し合った形に持ち込み、ロシア(ソ連)の脅威に立ち向かう。
経済的にはアメリカ優位だが、日本も賃金格差など途上国特有の優位を活かしてアメリカ市場に食い込める。
結果として、日本経済の発展は見えている。
以後日本とアメリカは、アメリカ優位の状況のまま経済戦争だけしつつ共存。
日米戦争なし。
その2 アメリカが妥協
アメリカが日本に対して広く市場開放し、日本に対しても同様の事を求める。
結果、アメリカ経済に日本が飲み込まれる。
そして、巨大なアメリカ経済圏に組み込まれた日本は、そのまま戦争する事もできなくなる。
しかし、「その1」同様に日本もそれなりの発展が見込める。
以後日本とアメリカは、アメリカ圧倒的優位の状況のまま経済戦争だけしつつ共存。
日米戦争なし。
その3 日米激突 日本判定勝利
シナ・満州利権を巡り、日米の対立が激化。
日本側の攻撃により日米開戦。
ナゼか発生する中部太平洋での大規模海上戦闘(決戦)で日本が圧倒的勝利。
アメリカが、核兵器の使用をちらつかせ恫喝。
ソ連が、日本の支援をちらつかせる。
どこかで、アメリカが自国の優位を作るための局地戦が発生。
通常戦のみ。
戦闘が数ヶ月膠着。
泥沼化。
そこで他国の仲介が入り停戦。
アメリカ側に不満を残したまま、問題が先延ばしにされる。
戦争期間は、半年から1年程度。
以後日本は、核兵器の戦力化までややソ連寄りの第三勢力として立ち回らざるを得なくなる。
その4 日米激突 日本全面降伏
シナ・満州利権を巡り、日米の対立が激化。
日本側の攻撃により日米開戦。
核兵器を含むありとあらゆる軍事力の集中投入により、短期間で日本の軍事力が殲滅。
他国が介入する間もなく日本が降伏。
戦争期間は、1年半から2年程度。
史実よりはるかにアメリカ優位で、極東情勢全体が史実と似た経緯になる。
シナ・満州利権の多くもアメリカが牛耳り、アメリカは支那の人の海に飲まれつつも、史実より有利に冷戦を運ぶ。
その5 日米激突 ソ連漁夫の利
シナ・満州利権を巡り、日米の対立が激化。
日本側の攻撃により日米開戦。
日本の徹底抗戦と国際世論を気にしたアメリカが、核を含む無軌道な戦争に走らないため泥沼化。
その後後背からソ連が対日参戦して、満州、日本本土北部を占領。
米ソ核戦力をちらつかせて千日手。
その後、慌てた日本側からの停戦成立。
日本本土を最前線とする冷戦構造出現。
戦争期間は3年以上。
戦後日本は民族が分断され、南側は史実と似た経緯になる。
さて、戦争をするのが今回の大前提ですので、「その1」、「その2」は論外ですね。
そして日本としては「その3」に持ち込みたいところですが、アメリカとしては「その4」が理想で、これに第三者たるソ連が「その5」もしくは「その3」の変形パターンを求めてくるでしょう。
ただし、現代の視点から長期的に見れば、日本に戦争する理由が希薄です。
単なる経済的繁栄・利益を求めるのなら、地域大国としての矜持と力を持ったまま、親アメリカ政策に傾倒する方がずっとに利にかなってます。
史実世界のように占領されたり内政干渉もないから、日本のアイデンティティーの保持もラクでしょう。
ただし、史実戦前の国内世論(一部の国粋主義者や軍部を除外する一般世論)を見る限り、連合国として第二次世界大戦を戦ったとしても、アメリカの不当な内政干渉・経済干渉を前にしては、激昂する可能性がかなり高いと見られます。
また、史実以上に発展している日本経済が、アメリカから閉め出し食らったらすぐに窒息してしまうのは間違いありません。
満州の大慶油田が発見・大量採掘されていても、アメリカを中心とする国際貿易からつまはじきにされては、待っているのは経済的破滅だけです。
経済が発展すれば、油だけで国家経済がどうこうできる問題ではなくなっています。
逆に、アメリカがダメだからソ連との連携と言っても、ソ連は共産国なので市場としてはたかがしれています。
だいいち、ロシアやアカと固く手を組むなど、日本人の心情からはあり得ないでしょう。
というわけで、日本はアメリカに一度は挑戦してもらいます。
では次は、「その3」のプランに沿って、日本に何ができるのかを見せつけたところで、短期間での戦争収拾を目指す道のりを考えて見ましょう。




