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艦隊編成と漸減戦術(日本側のみ)

 さて、ようやく日米双方のラインナップが揃いましたが、日米双方とも第二次世界大戦の大軍拡をはさんで、その後さらに日米だけで競争しているので、やたらと戦艦も造ってます。

 

 ただし、アメリカで建造される超大型戦艦は、「改モンタナ級」とでも呼ぶべき艦になるでしょう。

 

 日本の「大和級」から「紀伊級」のように、主砲を乗せ替えてその他諸々をパワーアップした戦艦です。

 

 それ以上の規模の艦を作ろうとしたら、たとえアメリカ様といえど運用効率が落ちるからです。

 

 超大型戦艦を建造するためだけに、わざわざ施設や港の改修工事するなんてできませんからね。

 

 それに、「モンタナ級」クラスや「大和級」クラス以上の規模のモンスターを生み出したところで、兵器単体としてのコストにも大いに疑問符がつきます。

 

 だから日本の「紀伊級」も史実どおりの、51センチ砲を6門積んだ「大和級」です。

 機関や装甲、その他諸々が多少強化されているのは間違いありませんが、贅沢な「大和級」以上のものではありません。

 ただし、スペースと技術的な問題から機関出力の大幅上昇は難しいので、「大和級」以上の低速に甘んじたくないのなら、装甲その他はそのままとされ、実質的な巡洋戦艦のような存在になるでしょう。

 

 もっとも、46センチ砲防御そのものが常識から外れているんですから、51センチ砲防御を本気で施す必要があるのか、かなり疑問符がつきますね。

 


 なお、「大和級」以下の戦艦は、史実より遅く計画されますし、その前に戦艦を作って実績も増えていますから、ベースとなる「大和級」そのものが史実より完成度は高まっているでしょう。

 

 しかも、第二次世界大戦に連合国側で参戦しているので、装備も充実です。

 きっと、優秀なレーダーやヴォフォースの40ミリ機関砲を満載しているに違いありません。

 ダメコンの考えも進歩しているでしょう。

 

 嗚呼、まるで夢のような戦艦ではありませんか! まるで日本の皮をかぶったアメリカ戦艦のようです!

 ・・・とまあ、このまま夢を語っていきたいところですが、艦艇データは後回しにして、まずは組織・編成面を見ましょう。

 


 さて、史実の開戦時、日本海軍は第一、第二、第三、第四、第五、第六、第一航空、第十一航空の艦隊に分けていました。

 

 このうち、第一が主力艦隊、第二が夜戦艦隊、第六が潜水艦隊、第一航空が空母機動部隊、第十一航空が基地航空隊になります。

 他は、小規模な偵察艦隊です(植民地警備艦隊でないのが日本海軍の何たるかを物語っていますね)。

 

 そして上記した戦力単位が、漸減戦術における基本戦術単位といえます。

 

 そして今回の想定での昭和25年時は、史実昭和16年時の戦艦10、大型空母6の艦隊に対して、戦艦14、大型空母14という規模に膨れあがっています。

 

 今まで説明してきた通り、時代の趨勢で空母の増勢が大きくなっています。

 とうぜん、艦隊運用理論もそれに準じ、欧州大戦後の帝国海軍の編成も空母中心に強く傾くでしょう。

 

 そこで以下のように艦隊を編成します。

 


 第一艦隊 BB:4(主力艦隊)

 第二艦隊 BB:4(主力艦隊)

 第五艦隊 BB:2 CV:2(艦載機120機)

 第三〜四艦隊 (軽艦艇主力の偵察艦隊)


 第一機動艦隊 CV:4 BB:2(艦載機350機)

 第二機動艦隊 CV:4 BB:2(艦載機350機)

 第三機動艦隊 CV:4(艦載機250機・平時は予備)


 潜水艦隊 第六艦隊から再編成

 第十一航空艦隊 一個航空師団(約700機編成)

 第十二航空艦隊 一個航空師団(約700機編成)

 海上護衛総司令部 戦争中に新たに設立


 以上、極めて分かりやすく定形化しましたが、航空機と空母中心の艦隊にしました。

 ハッキリ言って、帝国海軍ご自慢の超戦艦たちは、平時の海軍の威厳を保つためと観艦式以外では、残敵掃討や艦砲射撃ぐらいにしか役にたたなさそうです。

 物価上昇で2億円ぐらいするのに、もったいない限りです。

 

 まあ主力艦隊については、アメリカ側が日本以上に戦艦抱え込んでいるので、艦隊決戦の可能性があるから維持されているようなもんですね。

 敵が持っている以上自分もというやつです。

 それに誰も皆戦艦は大好きですし。

 

 いっぽう、見た目で分かると思うのですが、全体の編成は「昭和版八八艦隊」的編成としました。

 超戦艦と超空母が8隻ずつ。

 そして在来型戦艦と在来型空母が6隻ずつ。

 

 つまり、新鋭艦による八八艦隊と二線級艦艇による六六艦隊のセット。

 何とも贅沢な話しですね。

 経済成長と先の大戦争のおかげもあって、補助艦艇も日本とは思えないぐらいに潤沢です。

 

 ただし、かつての八八艦隊計画のように、戦艦は戦艦、空母は空母だけで艦隊を組み上げてしまうと、フレキシビリティに欠けることこの上ありません。

 だから、まともな主力艦隊と空母機動部隊を2セットずつ用意してみました。

 ほかは、偵察艦隊と予備の空母部隊に集成されています。

 

 予備部隊があるのは、艦艇数、とりわけ母艦数が多すぎて平時の帝国海軍では維持できないからに他なりません。

 それに、ジェット機時代に入りつつある中、改装が可能な「鶴級」以外の在来型空母の戦力価値はどうしても低くなります。

 図体がデカイ以上、費用対効果ってものも考えなくてはいけません。

 

 また、第五艦隊がやたらと増強されているのは、ソ連のせいです。

 この艦隊はアメリカではなく常にソ連を指向しています。

 まあ、赤熊なんて海じゃなんの力もありませんから、それなりに強力な二線級の艦隊で脅しておけば十分でしょう。

 


 いっぽう、艦艇を持たない二つの(基地)航空艦隊ですが、こいつらが一番の金喰い虫となっています。

 

 なぜなら、帝国海軍が順調に発達し、そのまま第二次世界大戦に雪崩れ込んでいたら、彼らこそがドイツ本土を吹き飛ばす役割を担うからです。

 

 アメリカから、B17やB24を供与され、自前で連山やその改良型を揃えている事でしょう。

 場合によっては、帝国海軍のもう一つのマーブルファンタズムである「富嶽」が大量就役しているかもしれません。

 

 ヤンキーのピースキーパー(B36)のお値段が最大駆逐艦1隻分にもなり、格下のB29ですら一個中隊で重巡洋艦が買えてしまうお値段です。

 「富嶽」もB36と同クラスの巨体。

 もはや財務官僚にとって、悪夢のような買い物になるでしょう。

 

 値段の事を思うと、B29を2000機も作ったヤンキーって恐ろしいですね。

 こちらの世界では、大戦末期にドイツのジェット機すら軽くあしらいながら、欧州各地を掘り返しているに違いありません。

 

 そして、まともに敵国を戦略爆撃しようと思えば、最低でもこれら贅沢という言葉すら不足する機材を300機以上も第一線機として揃えなくてはいけません。

 B29以降の米重爆が異常なほど贅沢だということを割り引いてもこれは大変なことです。

 

 また、日本海軍の性癖から保有機のだいたい半数が攻撃機(名称は爆撃機にはならない)になります。

 

 となると、最低で700機の攻撃機を保有することになります。

 一機200万円(連山強化型クラス)と割引ぎみで考えても機体価格だけで、総額14億円です。

 これがB29クラスになると、総額30億円です。

 さらに「富嶽」なら100機揃えただけで、ヘタすりゃ大和級戦艦が六隻も浮かんでしまいます。

 しかも機体だけで。

 

 ハッキリ言って、艦隊揃えるよりお金かかるんですよね。

 巨人機なんてもんは、札束や金塊が空を飛んでいるようなもんです。

 

 第二次世界大戦で、イギリスが海上護衛以外の大艦隊作らなくなったのが分かるような気がします。

 重爆撃機を何千機も作っていたら、そんな気も起きません。

 そんな離れ業できるのはアメリカだけです。

 

 だからこそ、この世界の帝国海軍でも第十二航空艦隊の方は、平時において半数が練習部隊や予備部隊となるでしょう。

 第一線を維持する部隊揃えるだけで予算が消し飛んでいる筈です。

 

 誰もが、ヤンキーみたいに1000機もの戦略爆撃を常時揃えられるわけではありません。

 ましてやビンボー日本では……。

 

 まあ、他人の芝生の話はともかく、帝国海軍が揃える重爆撃機の群ですが、この戦力は彼らにとっては「攻撃機」です。

 帝国海軍にとっての機体は、本来は爆撃するもんじゃなく攻撃するもんなんですよね。

 だから、魚雷積めるようにしたり、やたらと運動性が高かったりするでしょう。

 

 そして時代が進んでいるので、魚雷に代わる兵器として、誘導爆弾や空対艦誘導ロケットが登場しているでしょう。

 「イ号兵器」のような国産ものやドイツの誘導兵器の改良型を腹にたくさん抱えているに違いありません。

 

 ドイツのマウザー機銃すら防ぐ重防御の機体から、誘導兵器が雨霰。

 オタク様にとっては妄想具現化の最たる現象であり、敵にとっては悪夢であり、帝国海軍にとっては漸減戦術になくてはならないファクターとなることでしょう。

 この時点で原爆が開発されていなければ、おそらく漸減戦術上の最重要兵力になっている筈です。

 

 もっとも、機体および周辺機材の贅沢さは、主計官が目も覆わんばかりになるでしょうけどね。

 


 では、一通り艦隊の概要が見れたと思うので、このキャスティングでの漸減戦術も少し見ておきましょう。

 

 先にも触れましたが、漸減戦術とは富岡定俊(当時大佐)が中心になって完成させた、日本海海戦型の決戦戦術です。

 

 遠路はるばる襲来する敵艦隊を、様々な戦力で磨り減らして最後に艦隊決戦で殲滅するという夢のような作戦です。

 

 古今東西、ここまで手前勝手な作戦案はマレでしょう。

 冷戦時代のソ連赤軍による西欧突破作戦ですら、ここまでイってないと思います。

 少なくともあっちは、自身がイニシアチブを握れる可能性の高い攻勢作戦ですしね。

 

 どうして、敵艦隊が馬鹿正直に磨り減らされるためだけに突進してくる前提が組み上げられるのか、疑問以前の思いを抱いてしまいそうです。

 

 ただし、手前勝手に組み上げられただけに、精巧無比です。

 他と比べるまでもないぐらい完璧な戦術です。

 

 この通り作戦が進行すれば、間違いなく敵艦隊は消滅するでしょう。

 図演では、芸術作品を見るかのような見事さで、赤と青のダンスが見られることでしょう。

 

 それに関しては、疑問の余地すらありません。

 もちろん、帝国海軍の秀才参謀のスケジュール通りに作戦が進行すればの話し、ですけどね。

 


 で、この世界でも史実と同じ迎撃作戦案は作られるのか?

 作られるでしょう、間違いなく。

 なにしろ帝国海軍ですから。

 それに漸減戦術が作られるからこそ、海軍補充計画は実働しているはずです。

 

 ただし、計画完成までに第二次世界大戦という、とんでもないファクターが加わってしまいます。

 

 この戦いに参戦する日本も、大規模な実戦を経験します。

 戦争がいかに自分の思い通り進まないかを思い知らされることでしょう。

 

 つまり、少しだけ大人になっているんですね。

 この前提がないと、史実通りの漸減戦術から脱け出すことは無理です。

 

 そこで最初に示した、史実とは大きく異なる艦隊編成にしました。

 

 規定の漸減戦術のように、決められた役割以外果たすのが難しい艦隊をひと揃えずつ用意するのではなく、それなりに他の戦闘にも使える艦隊を幾つか揃えて、状況に応じて艦隊を投入するのです。

 

 そして、最大の仮想敵たるアメリカ海軍を相手にするときは、決戦場に全てのカードを乗せられるようにするでしょう。

 

 漸減戦術は、その名の通り自らも兵力の逐次投入する傾向が強く見えます。

 そんなもん、敵が何らかのアクティブな対応をしただけで容易に崩壊するでしょう。

 

 いくら最精鋭の艦隊を最初当てて敵を磨り減らすといっても、ひとかたまりで突っ込んでくるであろう彼らを前にして、自らが消耗するのがオチです。

 

 そして、何とか敵を磨り減らし混乱させることができても、二の矢たる主力艦隊と主力空母部隊と前衛の機動部隊の間隔が開いていては、戦力集中という原則に大きく外れてしまいます。

 

 恐らく米軍も日本軍の各個撃破を狙って行動してくるでしょう。

 反対に米軍側から見れば、日本の意図さえ分かれば、各個撃破に徹すればよいだけです。

 新鋭艦ばかりが殴り込んできても、奇襲されないかぎり鴨葱にすぎません。

 

 大戦力で待ちかまえて、もみ潰せばよいだけです。

 

 その後ろに控えている主力艦隊は、それが終わってからじっくり料理すれば良い。

 アメリカ側からすればタダそれだけのことです。

 もみ潰すだけの戦力も持ってますからね。

 


 でまあ、そんなアメリカ海軍を横目で見ながら先の戦争を戦う帝国海軍ですので、少しは自らの目論見が甘いことを思い知るでしょう。

 

 ナチに対するヤンキーの殴りかかりかたを見ていれば、中途半端な小手先芸が通じる相手でないことぐらい一目瞭然です。

 

 やるなら、自らになるべく有利な場所に全戦力を短期間で集中し、分力された相手に順番に全てを一気に叩きつけるしかありません。

 古今東西、統制された自軍の戦力集中と敵の各個撃破こそが勝利の鍵です。

 

 戦力集中と相手の各個撃破を実現してなお勝てないなら、何をどうしようと勝てない筈です。

 相手が米軍では、日本的小手先芸の通じる相手じゃありませんからね。

 

 そしてここまで言えば、もはや言うまでもないのですが、漸減戦術なんて実質的には吹き飛んでしまっています。

 あるのは、漸減戦術の名を借りた、まったく違った兵力を用いた全面対決。

 ただそれだけです。

 

 そして、米軍との全面対決のできない事を知った史実の帝国海軍は、真珠湾奇襲(もしくは強襲)というバクチに全てを賭けるしかなかったんでしょう。

 

 漸減戦術という芸術的な作戦そのものが机上の空論であり、手前勝手なものであることなど、当の本人達も本当は気付いていたんですよ。

 間違いなく。

 

 そして、ここでの帝国海軍は、正面戦力に限りアメリカに対抗できるだけの戦力を整えることに腐心し、一時的にであれそれを達成しています。

 

 しかし、アメリカに一時的に対抗できる戦力を揃えたとしても、現代版日露戦争を戦術面でも演出し、自らの戦力を集中して、相手を各個撃破していくしか勝機はありません。

 

 だからこそ、艦隊はフレキシビリティを持つ集中性の高い艦隊を編成する必要があると考えます。

 

 そして、漸減戦術の本来の前提である「一戦で全てを決する」という帝国海軍の伝統にこれは合致しており、一度目の決戦と二度目の泥仕合に耐えられるだけの戦力があれば、後のことは考えないという戦力編成になります。

 

 帝国海軍は、長期戦をする海軍ではない。

 

 これは、少しばかり帝国海軍が増強され進歩したところで、変化することのない事実といえるでしょう。

 


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