表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さき神々の聲を聴く者~聖女さまとおじさんたちのささやかな日々~  作者: プラマイゼロ
ソーレシアのひっそり旅
2/11

入国のしおり

 「少々調べさせてもらう。この国や国民に対し敵意があったり、あんたの言葉に嘘があればこちらの魔玉具まぎょくぐが、あ……」


魔玉まぎょくは、魔法使いが貴石きせきに魔力をこめるか、妖魔ようまを倒した時に残される妖玉ようぎょくを、魔力や神の力で浄化して作られる。


濁りや傷が少なく大きいものほど力が強い。


力のある魔玉を使った魔玉具は、複雑な仕事をこなせる。


このようなこぶし大の魔玉のはまった魔玉具は滅多にない。


役人が言い終わらないうちに、ソーレシアは魔玉をぺたぺたと触りまくっていた。


「あーーー」


魔玉は青々と輝いていた。




 「これ、青だといけないんですか……?」


ソーレシアはおそるおそる役人を見上げた。


「普通、ためらわずにこいつに触れる人間はまずいないよ。自分の心の中を知られることでもあるからな。結果からいえば問題ない。良かったな、赤だったら牢屋行きだ」


役人の態度はいくらか和らいでいる。


「これだったら仮の入国証を発行できる。それを持って冒険者の店へ行けば、何なりと仕事ができる。神官だと言ったな。癒し手は歓迎される」


「冒険者の店!物語で読んだ通り!本当にあるんですね?憧れなんです!」


役人は何だか心配になった。


この娘はあまりにも世間を知らないように思える。




 「名前と生まれた国と、年齢に職業を教えてくれ。髪と瞳の色もな。今から入国証を作る」


「え?すぐに作ってもらえるんですか?」


「普通は時間をもらうが、ずっとここにいられても困る」


役人はペンと木札を構えた。


とても有能な人なのだろう。





 「ソーレシア・チェルムです。ツウェーリグ生まれ。えーと、年は19、無職です。神さまはみっちゃんと……」


「いや、神じゃなく髪の色な」


「いやん、私ったら。今は埃かぶってますけど、これ黒なんですよー!。瞳の色は、たぶん青なんだけど、緑っぽいっていう人もいるし、何色なんでしょう?」


「いや、聞かれても。話が進まなくて困るな」


役人は、入国証に青緑と書き込んだ。


「お役人さん、うまいこと間を取った!」


「無職って何だ。神官だろう」


役人はソーレシアの調子に巻き込まれまいと必死だ。


「働いたことはないんです。だから今は無職で」




 「これが入国証。そしてこっちが入国のしおり。あとで読んでおくがいい。簡単なこの街の地図も書いてある。ああ、冒険者の店は、最初はラドの店にしておけ。初心者にも親切だからな」


「お役人さんも親切です!良かった、いい人に当たって!」




 役人は、なまぬるい顔でソーレシアを見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ