博士の助手
とある研究所で、ある博士がぶつぶつ呟きながら、機械を作っていた。機械の周りは書類や機械の削りカスが散乱している。
「汚い!これだけ汚いと、機械の質が落ちるわい!」
博士は文句を言うが、言ったところで何も変わらない。それを聞く人がいないからだ。
どんなに優れた発明品を作り、分けてもらえたとしても、雑用含めてこき使おうと考えている博士の助手になりたい人などいないのだ。
1人で機械の周りの書類を集め、残りの掃除を掃除ロボに任せた博士は、また機械造りに取り掛かった。
「しかし、これが完成すれば、雑用を任せる助手が完成するわけだ。」
博士は作業に戻った。
数日後、博士は機械を完成させた。ヘルメットのように、頭に装着する機械のようであった。
博士は別の大きな機械を動かしながら、呟いた。
「しかし、昔だったらただ雑用ロボ1つ作れば良かったというのに…おかしな規約ができたもんだ。」
博士が発明をしてしばらく経ったころ、機械革命が起こり、機械の労働環境や、稼働時間に関する規約が誕生したのだ。そのため、長時間稼働させる機械を作る場合、国の許可が必要になった。
「クローンを作ったり自動で掃除したり洗脳したり…ここまで機械が発達したのにも関わらず、労働場所では人が求められるとは、なんとも可笑しい話だわい。」
博士は1時間が経過したアラームを聞きながら、大きな機械が止まったのを確認した。
「人に甘いのは、作るものでなく、生まれるものだからと考えるからかのう。」
博士が大きな機械を開く。中には博士と同じ姿をしたモノが複数並んでいた。
「人の規約は『当人の許可なくクローンを生むべからず』だけだからな。」
博士は自身のクローンに完成したばかりの洗脳装置を付けた。