俺の使命
『白の塔』はその名の通り、すべてが白い建物だ。材質はわからないが、内側から光るような柔らかい白が美しい。その白い螺旋階段を、俺とアーサーは登っていく。
「あの、アーサー」
「はい、なんでしょう」
それほど高い塔ではないからもうそろそろ着くと思うが、それでも結構な長さだ。
「魔法で直接上に行かないんですか?」
なぜわざわざ塔の前に移動するのだろう。
少し疲れた俺とは違い、アーサーはひょいひょいと階段を登っている。流石騎士団長様。
「『白の塔』では、塔の力によって魔力が制限されるんです」
「制限?」
「そうです。わたしのようなあまり魔力のないものは、ここで魔法を使うことができません」
へー…?
でもあの子、聖女の子はここで俺を召喚したんだろう?
魔力が制限された状態で召喚魔法が使えるってことは、あの子相当強いのか…?
そんなことを考えていると、塔の最上階が見えた。
「着きました。『祈りの間』です」
長い階段を登りきり、白い部屋に着く。
窓から入る青空とひかり。目の前には白い頑丈な檻と、美しい少女。
「リツ…」
少女が不安そうな顔で俺の名前を呼ぶ。
「聖女様。お約束通り、リツをお連れしました」
「ありがとう」
少女がほっとしたようにお礼を言う。
そしてその表情はすぐに真剣なものに変わり、アーサーに続けて言う。
「アーサー、リツに言いたいことがあるの。すこし外してもらえるかしら」
少女はなにかを決意したようなアイスブルーの瞳で、俺とアーサーを見る。
「わかりました。それでは部屋の外でお待ちしております」
「ありがとう」
そういうとアーサーは部屋から出ていき、少女と俺だけが残った。
「リツ、あの」
少女は最初こそ俺を見ていたが、その視線はだんだんと下に落ち、完全に俯いてしまった。
本当に綺麗な子だなあ。お人形さんみたいだ。
まつ毛がながい。ばしばししている。
動く球体関節人形って呼ぼうかな。
そこまで眼は大きくないか、なんて思っていると、その眼が俺を見た。
「リツ!」
「はい!」
いきなり名前を呼ばれて俺は反射的に返事をする。そして少女はその勢いのまま話し続ける。
「ごめんなさい!わたしあなたに謝らなきゃいけないの!!」
「謝る?」
この世界に呼んだことだろか。
でもそれは世界を救うためなら仕方のないことだ。
事情を聞かせてもらいたい。
俺がこれから一体なにをしなければいけないのか。俺の使命はいったい、
「わたし、お話し相手にあなたを召喚してしまったの!!」
「…ん?」