9話 リリーと買い物
朝日が窓がらから差しこみ小鳥がさえずる。空気もカラっとしており息を吸い込んだだけで良い天気だと分かる。
「ふぁぁあ……」
大きくあくびをして起き上がろうとしたとき『むにゅっ』とした手に感触。
「あんっ……」
「うぉぉぉぉぉぉおおぃっ!!」
リリーの『たわわ』だった。
隣で裸になって寝ている。こぼれ落ちそうなくらいな豊満な『たわわ』は全ての男の目を釘付けやする。そう、おっぱいは宇宙なのだ。
俺はベッドから飛び起きた!
まさかのお約束な展開。
「なんで同じベッドに……?」
「おはようございますシン様。もちろんシン様の警護をしていました……」
いやいや警護じゃないでしょ。
「とても熱い夜でした」
リリーはぽっと赤くなる。
えっ?!俺は何も覚えてない。大丈夫だよね?!初めてが記憶に無いとか嫌だよ。
「シン様、ご安心下さい。ただ一緒に添い寝をしていただけです」
…………。
まぎらわしいし記憶にないよ。
「こ、今後は止めてね…。止まる自信ないから」
一応、釘を刺しておく。
「シン様なら何をして頂いても結構なのですよ。お望みならもちろん最後まで……」
くっ、完全にからかわれている。恋愛偏差値底辺の俺は言葉を返せれない……。
「いや、ないでしょ……」
リリーは少し残念そうにしていたが、俺は見て見ぬフリをした。
くそっ!ほんとはやりたいよ!
宿の広場に移動して朝食を済ます。
「今日は予定通り買い物をして、それで時間が余ったらギルドへって感じに考えているんだけどどうかな?」
「承知しました、シン様」
あまりにも俺たちの格好は冒険者にしては異質すぎる。
装備品も何もない。剣すら持っていない。明らかに怪しすぎる。冒険者にまぎれるためにもそれなりの格好をしなければいけない。
「こ、これは人間のいわゆるデートというやつですか……?」
リリーが尋ねてくる。
デート?
「え? いや、ただの買い物だよ」
速答にリリーはなぜかイジけているみたいだ。
「今日は装備品も揃えようと思うんだ。冒険者パーティーが二人とも武道家ってあまりに変だろ?それに万が一もないと思うけど、リリーにも怪我してほしくないし」
「シン様っ!」
っ!!!??
リリーに後ろから抱きつかれた。頭に大きな瓜が2つ。俺はゆでダコのように赤くなる。な、なんて……破壊力だ……。
「ありがとうございます。シン様を命に代えても御護りします」
命に代えなくていいからね。
そしてそんな敵が現れないことを祈るよ。
しばらく頭からその感触が離れなかった。
少し歩き武器防具屋に着いた。
「よろしければ、シン様がお好きな格好をお決め下さい」
「俺が?」
困った。色々なってほしい格好は確かにある。だけど肌の露出が激しいと嫉妬の的になるし目のやり場も困るし、でも目の保養も欲しいしジレンマだな。
自分の格好はすぐに決まった。いたってシンプルな目立たない格好だ。いかにも駆け出しの冒険者スタイル。それに実際そうだから問題ない。
リリーの格好は悩んだ末に、全身黒を基調とした黒のジャケット。腰からスカーフがあり黒のパンツ姿に決まった。
前のスタイルも大好きなのだが視線が刺さるんだ。周りの男の視線がさぁ。
黒のジャケットとパンツにはワイヤーが埋め込んであり、簡単には剣、魔法、大型獣の物理攻撃も通さない。
まだまだ上を見ればキリがないが今はこれで事足りる。そのとき必要となったら変えればいい。
奥を見ると高級そうな凄そうな服がたくさんある。
「これなんて凄いな……」
高級なものにもなると強力な魔法が付与されており、物理耐性、魔法耐性、異常耐性、精神耐性などもついてくる。
そんな物は駆け出しの冒険者ではとても買える値段ではなく、付与が多ければそれだけ破格の値段となる。
超一流の冒険者、アダマンタイト級のみがそういった最強の装備をすることができる。
「これをいつか着てみたいな……」
次は武器を一通り見る。
どれもクソ高い……。
プラチナソードなんてのは白銀か1枚もする。
ということは日本円で約千万位するってことか。半端ねー。
でも一流冒険者となれば、全ての装備品が一級品になるわけだから、以外と手元に残るお金は少ないのかもしれないな。
頭を悩ませながら何にしようか考える。
横を見るとリリーが剣を手に取っている。
「それは?」
「はい、おそらく古代からの妖剣だと思います」
「そうなのか? その割には安いけど?」
「持ち主の力量によって形や能力が変化すると聞きます。力を込めてないこの状態ではガラクタ同然ですね」
「それにするかい?」
「はい」
武器防具屋の親父に渡す。
「これを選んだのかい?!え〜っと……これはグリムソードという妖刀だがいいか?」
「というのは?」
「…………。変わり種として置いていたんだが、こいつを手にした奴は全員が死んでいる。つまりは呪われている。売ってもここへ戻って来ちまうんだ」
…………。
このやり取りどっかで聞いたことあるな。
「そんなの気持ち悪いな……。リリー違うのにしよう?」
「これにします。いえ、これじゃなきゃ嫌です」
おいおい……。
リリーはその話を聞いて余計に欲しがってしまった。剣に期待が膨らみ玩具を与えられた子供みたいな顔をしている。
ポイっ
!!?
リリーが剣を上に投げて腕を横に突き出した。
おい!それだけはやっちゃいけねぇ!丸かぶりだ!
「お、おい!姉ちゃん危ないっ!」
店の親父は軌道からして当たると確信し諦めて目を瞑った。
ガキンっ!!ドス……
剣は腕に弾かれて床に突き刺さる。
「なっ……!!」
「よし、これにする!」
「なんでだよ!」
「マジかよ姉ちゃん!? すげぇ腕だな!」
褒めるところじゃないよ。
「シン様、もしこいつが私を避けて地面に刺さるようならへし折ってやりました。ですがこいつは私の腕を切りつけ刀としての資質を見せました。私はこいつの『器』を確認したかったのです」
リリーは剣を手に取って言う。
「カッコいいこと言ってるけど次からは止めてね。あと武器屋の武器は勝手に折ったら駄目だから」
金を払い武器防具屋を出た。
俺にはパッとするものが無く、見た目だけで選んだシルバーソードにした。今日の買い物、合計で金貨百三十枚だ。
日本円で約千三百万だ。高けーーっ!今ある財産の半分以上の使ってしまった。冒険者装備恐るべし。
「あと、もう一箇所行くところがあるんだ」
「どちらですか?」
「ここだ!」
「ここ……ですか……?」
そこは女性の下着店だった。
つまり男の子の夢の店だ。一度は女性と入って見たかったんだ。
「リリー、三枚だけ買おう。俺にえ、選ばせて……くれないか……??」
「もちろん良いですが、こんな布切れに一体どんな効果があるのでしょうか……?」
「効果は絶大だよ。こうして俺は今前かがみになって動けないのが証拠だ」
「な……なるほど、神様であるシン様を動けなくさせるほどの効果がこの布切れにあるとは!」
リリーは下着を手に取って驚く。
そうして俺たちには店内で下着を選ぶ。
「これはどうでしょう?」
「ぶっ!」
「これは?」
「ぶほっ!」
俺には刺激が強すぎた。
リリーのダイナマイトボディーの前に俺の息子は怒り狂っていた。ちなみに白と黒とピンクにした。
リリーは嬉しそうに剣を抱えるながら歩いている。
にしても、黒はリリーのスタイルにとてもよく似合う。黒色黒髪剣士。萌えだ。我ながらベストマッチだ。
俺はぼーっと見とれてしまった。
「シン様、どうでしょうか……?」
「とても似合う。可愛いよ」
っ!!?
「不意打ちはずるいです……シン様……」
安心して、言った俺も恥ずかしいよ。
ずっと剣を抱き抱えている。早く試し切りがしたいのかな?ウズウズしているように思える。
「ギルドに行こうか?」
「いいんですか!?」
目を輝かせて答える。
「もちろんだよ」
リリーがワクワクしているのでギルドに行くことにした。
次回、ギルド長ゴンサレス
ジャイアントウルフ討伐を疑われる。またリリーがブチキレる?!そしてAAA級冒険者になる?