100話 神具の力
ついに100話到達しました!
初めての小説でまさか自分がここまで書けるとは思ってもいませんでした。
読んでくれている皆さん、これからも応援宜しくお願いします!
「ふふふふ……、アベル絶対に勝たせてやるぞ」
リリーが悪い顔をしてニヤつく。
勝負は三分間。
一発でもレクシーに攻撃が入ったらアベルの勝ち、レクシーが三分間守り抜く、もしくはアベルが反撃不能になったらレクシーの勝ち。勝敗はいたってシンプルだ。
「………」
レクシーはこのルールを聞いた時点で守り切ることはさらさら考えてなかった。
エルフ国民が見ている以上、代表として、王族として圧倒的な力の差を見せつけて勝つつもりだった。
しかし、内心は揺れ動いていた。
一度は森に残ると決断した自分だったが、それが最善の決断かと問われたらレクシーは自信がなかった。
まさかアベルに残って欲しいと言われ、その決断が揺らいでしまった。消えた火を点火されてしまった。
「シャーロット、クレア、アベルに神具を貸してやるんだ」
リリーが指示を飛ばす。
「「わかりました! アベルさん、頑張って下さい!」」
「「神具召喚」」
シャーロットとクレアが神具の剣を召喚する。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!
二つの神具がけたたましい音と共に召喚された。周りのエルフたちが初めて見る神具に驚愕する。
「お……おい、あれはなんだ……っ?!」
ゴォォォォォォオオオ……
その神具はまるで生命が宿っているかの様に、あり得ないほどの神気を放出していた。
「レクシー様、大丈夫か……?」
「まさか……あえりえないよな……」
「ばっばか、あり得るかよ! たとえ装備が強くてもレクシー様が負けるハズがない!」
これを見るまでは、エルフたちは相手が勇者だろうと所詮は人間だ、エルフに勝てるハズがない、そう思っていた。
なにより、レクシーはエルフの中でも最強に強い。なぜなら王族だけが持つスキル『聖樹の召喚』が出来るからだ。
『聖樹の召喚』とは、あのドレカヴァクとの戦いの時のように、この世界樹の力を借りて無数の巨大な樹の枝を出現させ、その一本の硬度はオリハルコンに匹敵し束になるとどんな攻撃も通さない。
その枝はこの世界の天界と地上、さらに根や幹を通して冥界にまで通じており、世界を繋ぎ支えていると言われる。
エルフたちにとって世界樹とは信仰する神と同じように同列の存在なのだ。
その今まで一度も裏切った事のない絶対的存在の『聖樹』が今回も負けるハズがない。ましてや、レクシーは身体能力も恐ろしく高い。力、スピード、体力、どれをとってもエルフの戦士たちでレクシーに勝てる者はいなかった。
そのレクシーが本気になり『聖樹』のスキルを使用するともはや手がつけれない。油断して隙を見せるのならともかく、戦闘中は冷静沈着で頭もキレる。本来なら負ける要素は無かった。
しかし、あの神々しく光り輝く『神剣』と『神鎧』を見たエルフたちは、その絶対的『聖樹』の存在を軽く凌駕すると予感させた。それはつまりレクシーの敗北を意味していた。
「アベルなら神具を装備出来ると思うよ」
シンは言う。
これまでの道中に、何度もアベルに神気を流した。今なら誰にでも装備出来るだろう。
神具が浮き上がりアベルの前で止まる。
まるでアベルが自分に相応しいか見極めるよに。
カッ!!
すると神具は輝きを増した瞬間、分離しアベルの身体にフィットしていく。
「え……、なんだこれは……」
決して今まで着ていた『勇者の鎧』が弱い訳ではない。
魔王を倒すためだけに作られた『勇者の鎧』は人類の希望でありこの世界の究極の鎧と言ってもいい。
アダマンタイト鉱石を大量に使い、賢者たちの最上の聖法を鎧に組み込ませて作られており、これを超える装備はこの世に二つと存在しないと言われている。
そのため『勇者の剣』と『勇者の鎧』は使う者を選ぶ。
まず身体に流れる気が《聖気》でなければいけない。よって魔法を使う者は《魔のエネルギー》を持つ者は装備することが出来ない。
さらに、その威力と効力を保つために桁違いにの聖気が必要となる。
その聖気の量は数人の賢者に匹敵する量が必要となるため、普通の冒険者では剣を数秒も握ることすら出来ない。
『勇者の剣』と『勇者の鎧』を装備する、また勇者に選ばれるという事はそういう事なのだ。
しかし勇者の剣鎧は、あくまで人類によって勇者のために作られた装備の話だ。
このシャーロットとクレアが装備する神具は神によって作られている。そう、創造神ペルシアの手によって作られた。
それは何を意味するか。
この世の理を無視し軽く凌駕する。
神具は人、魔獣、悪魔、魔王を倒す目的に作られた物ではない。
この世界を神が見限ったとき、世界を破壊する目的のために作られている。
その威力は大陸丸ごと消滅させる威力があり、人や魔獣たちなど関係なく跡形も無く木っ端微塵に出来る威力だ。
神たちがその気になれば半日でこの世界が消えてしまう。それ程の威力を持っている。
それを人類最強のアベルが装備したらどうなるのか…。シンですら想像がつかなかった。
「ほう、上出来だ」
リリーはアベルを見て満足そうに言う。
「っ………!?」
逆にアベルは驚かされていた。
この神具によってアベルの能力は実力の数倍以上に膨れ上がっていた。神気が体の中を龍が駆け上がるように巡る。
指先に感じる剣の鼓動。鎧から感じる空気や音。全く今まで感じる事の出来なかった五感が開放されて自分の身体が自分で無い様に感じていた。
「凄い……力がみなぎってくる……」
今までにないあまりの奔流な力の流れに驚く。
「アベル、あのアホエルフの弱点を教えてやる。あいつは耳と目が異常に良いからそれに頼り過ぎてる。光のスキルと爆音を使って五感を麻痺させろ」
「わかりました」
「よし! 行って来い!」
リリーが自信をもってアベルを送り出した。