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10話 ギルド長ゴンザレス

 ギルドに着いたそうそう受付嬢が俺たちを見つけて駆け寄ってきた。


「シン様!リリー様! お待ちしていました! いきなりで申し訳ありませんが、よろしければギルド長に会ってもらえませんか?」


 ん?なんだ?


「あ、はい。良いですよ」


「ありがとうございます! では早速こちらにお願いします!」


 すぐに奥にあるギルド長室に通された。

 デカイ椅子には筋骨隆々の真っ黒な男が座っていた。


 この目の前に座っている男はこのギルドの元締めになる。当然ギルド長になるには元冒険者での実力(A級以上)がいるだけでなく、国王陛下の絶大なる信頼がいることになる。


 ギルドに登録している冒険者たちのランクの審査が国の防衛に大きく関わるためだ。


 また冒険者には輩のような奴も多い。そういった輩に対して実力を行使することを国から許可されているため、ギルド長になるには人格的にも実力的にも厳しく審査される。


「おぉ、よく来てくれたな! 俺はゴンザレス、ここのギルド長をしている。立ち話もなんだ、そこに座ってくれ!」


 顔と名前がこれほど一致する人間もいない。俺たちは椅子に座り自己紹介をする。


「僕がシン、こちらがリリーです。ギルド長直々になんの用でしょう?」


「まぁ警戒するなって、昨日のウルフの件だ」


 まぁ、そうだろうな。


「あれにはホント参っててな。うちでもかなり若いやつらがやられた。実は近いうちに軍が動く予定だったんだ。軍でもかなりの精鋭部隊がな。だが今日朝来てみれば討伐されたって言うじゃねーか」


 確かにあのウルフには手を焼くだろう。一匹があのデカさだ。そしてあの数。しかもスキルだっていくつか持っている。


 一瞬で死んだから調べる間も無かったがあの数で同時に使用されたらひとたまりもない。


 それにしても軍が動くってことはかなりの国益にも結構ダメージがあったのか。


「しかも、受付のマリンの話じゃあ二人のメンバーだって言うじゃねーか。正直ビビったぜ。ありぇねぇ……。嘘だと思ってさっき急いで調査に行ってきたんだ。そしたら現場についてびっくりしたぜ。山が半分消し飛んじまってた……」


 …………。


 困った。完全にやりすぎたな。


 ただ困っている依頼を片付けただけのつもりだったんだが、国も抱えている問題だったとは……。どう答えよう……。


「それで、これはどんな奴がやったか見てみたくなってな」


「やったのは僕達で間違いありません。ですが……」


「ですが?」


「正確に言えばリリー1人です」


「はっ??!」


 なんか事実を言っているのに悪いことをしているみたいだ。まるで俺が何かの犯人じゃないかよ。


「はい、二人ではなくリリー 一人でやりました」


「っ!?」


 謎のリリーの一点押し。


 この選択が正しいのかも俺には分からない。


「まじかよ? マリンの勘違いだと思っていたが、嬢ちゃん一人でほんとに退治しちまったのかよ……。こりゃすげぇことだぞ……」


 受付嬢はマリンっていうんだ。覚えておこう。じゃなくて、完全にやっちまったな。


「これがホントなら、上に話がいってる以上近いうちに必ず軍から引き抜きが来る。もしかしたらアダマンタイト級……だってありえる……。俺としちゃあ、これだけの逸材だ。軍よりもこのギルドに身を置いてほしい。なんなら家くらい用意したっていいぞ?」


 こっちのが本題か。


 俺たちがこのギルドに残れば、ここも潤うし討伐依頼も増えてWinWinの関係ってことか。


 それにもとより軍に入るつもりは全くない。


「家の件ありがとうございます。ですが俺たちは流浪の身、まだ何処かに身を置くことを考えていません。ですが、しばらくはこの王都にいる予定ですのでその間はこのギルドでよろしくお願いします」


「そうかそうか! うちとしても助かる! その間よろしく頼むわ! それにしてもスゴい現場だったな。どんな魔法を使ったんだ?」


「魔法? いえ、彼女のスキルです」


「なんだとっ?! スキル持ちかっ! しかし驚きの連続だぜ。今スキル持ちなんてそうは聞かねぇからな。昔はいたようだが、ここ数十年はめっきり聞かねぇ。他の国じゃあどうか知らねぇが居なくなったと思ってたぜ」


 しまった。そうだった。もうスキル持ちは少ないんだった。昨日からボロが出まくってる。


「スキルの件は黙っておくぜ。この話が外に出ると大事になりそうだからな。お前たちもスキルの件は口外しない方がいいぜ。そうと渡すものがある。マリン、あれを持ってきてくれ!」


 マリンは奥の別部屋に行って小走りで戻ってきた。


「これだ!」


 ギルドカードと小袋だ。


「こちらは、白金貨六枚と新しいギルドカードになります。ご確認下さい」


「ん?ずいぶん多いんじゃ?」


「討伐依頼は二十匹だったが実際は三十匹だった。これはギルドの調査ミスだ。調査ミスは現場のハンターの死に直結する。今回はそういった意味でも本当に助かった」


「あとの残りは、このギルドに残ってくれるって言ってくれた俺の気持ちだ! これ以上は出せねぇが受け取ってくれ!」


 完全に出来る男だ。さらっとこんなことが出来る男に俺はなりたい。


「ありがとうございます。有りがたく頂きます」


 一気に手持ちの金が増えた。お金はいくらあっても困らないからな。


 こっちの世界は簡単にお金が増える楽しみがある。まぁ冒険者だから装備や何やらですぐに減るけど。


 もう一つの出されたギルドカードを手にすると。


  シン  ヒューマン

  青銅級(F級)



  リリー ヒューマン

  オリハルコン級(AAA)



 と記入されていた。


 それを目にしたリリーが怒りをあらわにする。


「おいっ!」


「シン様がF級だと? 貴様らふざけてるのか?」


 その瞬間、部屋の温度が一気に下がる。

 震え机や花瓶がカタカタと音を鳴らす。


「まてまてまてっ!! 待ってくれ!」


 ゴンザレスが慌てる。


「リリー、やめるんだ」


「……失礼しました、シン様」


 空気が元に戻る。

 完全に受付嬢はビビってしまった。ガクガク震えている。逆に腰を抜かさなかっただけスゴい。


「ふ~っ、話を聞いて半信半疑だったが確信に変わったぜ。俺も元A級のハンターだったがAAAオリハルコン級の奴でもこれほどの威圧を放つ奴ぁいなかった……」


 ゴンザレスは一回深い呼吸をして少し間をおいてから話し出す。


「さっきの話だとシンは今回の討伐に関わってないんだよな? リリーの仲間だ。それなりの実力があることは分かるんだが、こればかりはいきなりこれ以上は上げれねぇんだ。勘弁してくれ」


 こっちにとっては好都合だ。俺まで悪目立ちしたくない。


「僕はむしろその方が助かります」


「そうか……、それは良かったぜ。飲んでくれなかったらどうしようかと思ってたぜ。それよか今日は他に用があったのか?」


 事情を簡単に説明してギルド室へ戻る。

次回、シャーロット


 裏路地には殺されかけた奴隷が……

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